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“帰還”の決意

 巨大な指令室――艦隊の心臓部ともいえるその艦橋は、薄暗い照明に包まれ、張り詰めた緊張感が重苦しく漂っていた。壁面には青白く瞬くモニターが並び、遠く地球の姿を映し出している。その青き星は、漆黒の宇宙に浮かぶ一粒の宝石のように光を放っていた。


 その光景を凝視するように、銀色の制服を纏った一人の老人が立っていた。


 彼の名はアストル――かつて地球を支配した最高評議会の生き残りにして、脱出ロケットの指導者。約100年に及ぶ流浪の果てに、ようやく「故郷」を目の前にしたその眼差しは、狂気と郷愁と支配欲が入り混じった複雑な炎で燃えていた。


「……地球は、まだ生きている……」


 低く搾り出すような声が、艦橋全体に響いた。

 彼の濁った瞳がモニターの中の青き星を捕らえたまま、離さない。


「燃え尽き、滅び去ったはずの故郷が……なおも息づいている。私たちを裏切り、置き去りにしたあの地が……!」


「戻らなければ!故郷の地球に!」


「そうだ……我らは帰還するのだ。再び導き支配するために!」

 その言葉は、艦隊全体に指令として響き渡った。兵士たちは一斉に胸に手を当て、歓喜と狂信の混じった声で叫ぶ


「地球に帰還を!」「人類の未来を我らの手に!」

 そして――その瞬間、彼らは決断したのだ。


 長き流浪の終着点は「帰郷」ではなく「征服」。

 青き星を見つめる艦橋の視線は、郷愁ではなく、奪い返すべき「獲物」への渇望へと変わっていた。


 こうして、かつて自らが見捨てた故郷に、支配者たちの影が再び迫ろうとしていた。




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