失われた支配層の帰還
宇宙からの帰還の続き
闇の宇宙を切り裂き、静かに、しかし確実に迫る影があった。
それはかつて「地球高熱化時代」、燃え上がる大地を見下ろしながら、自らの生存だけを優先し、数基の巨大脱出ロケットを夜空に打ち上げ崩壊しかかっている地球を見捨て逃げ出した支配層の末裔たち。
彼らは自国の国民を見捨てた。泣き叫ぶ声を背に、炎に包まれる都市をただ冷酷に振り返り、己の命と権力だけを未来へと運ぼうとした。
あの夜、誰もが信じていた。
彼らは宇宙に散り、滅んだのだと。
ほとんどのロケットは大気圏の壁を越えることすらできず、あるいは無数の隕石群に衝突し、光の尾を引きながら虚空に消え去った。記録に残ったのは、悲鳴と轟音、そして宇宙に吸い込まれる幾筋もの赤い閃光だけ。
「彼らは自滅した」――そう伝えられ、そう信じられてきた。
だが、真実は違った。
わずかな生き残りの船団が、宇宙の冷たい荒野を越え、運命に導かれるように天の川銀河の片隅で、生命の息吹を宿す星を発見していたのだ。
その星で彼らは飢えと孤独に苛まれながらも、再び文明を築き直した。
荒れ果てた土地に仮設の拠点を建て、かろうじて繋いだ命を糧に科学を蘇らせ、やがて武器を磨き上げた。
彼らの夜は暗く、未来は寒々しかった。だが、その心の奥底に灯され続けていたのは――「支配者として帰還する」という歪んだ炎。
彼らは夢見続けた。
いつの日か再び地球に戻り、その地を統べると。
かつての民を「救済」という名目で再び支配下に置き、己の権威を復活させると。
そして今、その悪夢は現実となりつつあった。
沈黙の虚空を突き進む艦影は、亡霊のごとく地球へと帰還を果たそうとしていた。




