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異端者共の両奇譚  作者: いなり凡サイダー
第一章 異変
2/2

1.手違い

今できてるところまでですよければ読んでいただけたら最高です





——ろ

——おき


ん…誰だ?


——い

——おい


「おーい!!起きろー!!!」

『うぅううっわぁああ!!!!』

カクンという宙を舞う感覚、そして響き渡る鈍い打撲音(と叫び声)。周りで何かが落ちたのか、ガシャンと耳を劈くような音がして思わず肩を竦める。

『ってーー…』

何人かの人の気配。体中が痛む僕を気にしているのかいないのか、口々に何かを言っている。もにょもにょとなんだか変な感じで、何を言ってるのかいまいち聞き取れない。

ここはどこ??誰がいる???必死に思い出そうとするが、心当たりが全くないのだ。

まず僕はなんでここに……

頭の底から覚えていることを絞り出す。

一番最後の記憶は…



…あー!!!

それ以前にとにかく眩しい!!!ほとんど真っ白!

一回思い出すのを諦め、急いで手探りでゴーグルを探す。

が、周囲にそれらしきものは見当たらない。

落ちたときに(落ちたとき?いや、今はそれどころではない)頭に何かが当たった感触はある。…ので、必ず近くにあるはずなのだが、どうにも見つからず。

(おかしいな…変なとこに飛んでったか?困ったぞ…)

振りまわす手は空を切るだけで、焦って余計手が動く。

と、冷たい棒のようなものに触れたが、大きさからして明らかにゴーグルではない。

棒の付け根の形状から、どうやら机と椅子と…


…なんだぁこれ?


やけにぷにぷに…いや、どろどろか?まるで泥粘土のような…

いや、スライムと言った方が正しいか…?


「おーい」

『はぇっへい!!』

女子の声が聞こえ、思わずそれから手を離す。

割とおっとりとした声…少なくとも、最初に起こしてきた声とは違う。

結局のところ、知っている人ではなさそうだ。

突然のことに驚いて変な返事をしてしまったが…変なやつと思われないといいけど…

というかまずまずその人がいい人かもわかんない…

ってかそんなことよりゴーグルゴーグル…


…なんて僕は悠長にぼんやり考えていた。だから変な方向でも向いていたのか、挙動が変に見えたのだろう。

「貴方、私が見える?」

訝しげな声がこっちに少し近づいてきた。カツ、カツと乾いた音がなる。見えない物がじりじりと迫ってくる恐怖に、僕は反射的に後ずさりをした。

すると、影の動きが止まる——と同時に、手に固いものが当たる。

まさか…思わず手に取り、確信した。手にフィットするその形状、軽やかだがどこかずっしりとした重み…正にそれは僕が探していたゴーグル…!慌てて少し手間取りながらも、急いで取り付ける。

頭に馴染むいつもの若干の重みが安心する。「何かが足りない」の「何か」が埋まった感じ。視界が一瞬反転し、ぼんやりと目が慣れてきた。

ぱちぱちと瞬きをする…そして、目の前の物がやっと見えてきて——

それと目が合った。

『うわぁああああ!!!!!』

自分、渾身の後ずさり。だが、努力も虚しくすぐに固いものにぶつかり、頭を押さえた。

ガンと大きな音も出て、少し涙目になる。

『ってぇ…!』

どうやら机にぶつかったようだ。割ともろにぶつけたらしく、頭がじんじんと痛む。

え?何があったかって??だって、なんてったって顔のすぐ近くに蛇がいたんだよ!!

蛇は大嫌いだってのに…それが顔の目の前にだなんて…


…って


『…え?なんで蛇がここに…』

思わず恐る恐る前の少年を見ると、なんと腹を抱えてうずくまっている。

「これおもちゃwww本物だとでも思った??wwww」

また別の声。さっきの声よりちょっと意地悪味がある。

そして手にはぺらっぺらの蛇が…

クネクネと動く姿に、おもちゃとわかっていても思わず身をのけぞらせる。

そしてそこで初めて自分の今の滑稽さに気づき、僕はもう呆れて声も出なくなった。肩の力が抜けるのを感じる。

「ったく…シロ、貴方いいかげんにしなさいよ…」

先ほど聞いた、穏やかな声。声がした方向を見ると、そこにはツインテールの眼鏡をかけた少女がいた。

背は周りと比べてあまり変わりはなく、いかにも「秀才」といった雰囲気。髪色は水色がかった白で、右…(彼女からしたら左か)の横髪が長めなのが特徴的だ。手には黒シャーペンを握っている。

特に何も考えず彼女を見上げていると、ふと彼女と目が合った。

「どうやら見えるようになったようね。」

『あり…がとう、ございます?』

思わず反射的に言葉が出る。

「あり…」の時点で違和感を覚えたもののまぁいっかと続けたが…今考えたらかなり変な文脈である。思わず顔が火照った。

そんな僕を、彼女はどこか鋭い視線で見つめ…ていたが、ふとおもむろに口を開く。

「あなた、名前は?」

どこか言い聞かせるような、居心地の悪さを感じるような声音だ。威圧感も感じる。

それにただ事ならぬものを感じ、僕は思わず背筋を伸ばした。

『ヒナゲシ、です。』

すると、彼女は少し目を見開いて、気に食わなそうな顔(いや、信じられないと言った方が合っているだろう)になる。

がしかしそれは一瞬で、すぐに表情が消えた。

「…そう。私はオリ。さっきはごめんなさいね。」

僕は首を左右に振る。それを了承と取ったらしく、彼女は話を続けた。

「あなたにちょっかいを出した、後先考えない阿呆はシロよ。」

突然名前を呼ばれて驚いたのか、少し背筋が伸びてオリの方を向いている少年を見る。

少し長めの半袖の白衣を着ていて、黒手袋とネクタイ、そして頭の右側に不自然に黒い毛束があるのが特徴的だ。

「どうも、シロです。」

驚いたことを察せられたのが気に食わないのか、少し不機嫌な口調だ。

オリはそんなこと気にも留めず、シロの隣の灰色髪の少年に続きを促す。

シロの隣の少年はコクリと頷き、僕の方を見た。

「僕はペトラ。隣のはシュリだよ。」

ペトラと名乗った少年は、背がオリと同じくらいで学ランを着ており、長い髪を後ろで結んでいる。しっかりとしている頼れそうな人だな、とヒナゲシは思った。

それとは反対に、シュリという少年は背が皆よりも比較的低く、シロと同じぐらいの長さの水色の髪(珍しい!)をしている。「おっちょこちょい」を体現したような、ペトラと並ぶとどうしても「頼りない」と言わざるを得ない、そういった印象だ。

シュリは僕と目が合うとぺこりとお辞儀をした。まぁ、かわいいし悪い人ではなさそうだ。

「私はライラだよ!」

「えっと、私はサクラです!」

今度は右側から声がする。振り向くと、ピンク髪の少女が二人いた。

ライラという少女はまさにギャルといった格好で、ツインテールにバチバチピアスとかヘアピンとかいろんなものがついていて、更には耳がちょうちょの羽になっている。流石に飾りだと思ったのだが、なんと本当に耳が羽になっているらしい。ネイルもカラフルで、ちょっと不安になるくらい はつらつとしている。

どこかで聞いたことがある声だな…と思ったら、どうやら僕を起こしたのは彼女だったらしい。申し訳ないが、次からはもうちょっと優しく起こしてほしい。

それはさておきサクラと名乗った方の少女はというと、名は体を表すと言うがまさかここまで…というほど桜にそっくり。髪色はもちろん、髪型(同じ二つ結びでも、サクラは下の方で短めに結んでいる)や服装(薄桃色のセーラー服なのだが、何故か桜を思い出させる。どうして?)、雰囲気(どこか儚げな雰囲気)までもが桜である。

僕がお辞儀をすると、彼女たちはにっこりと笑い返してくれた。優しい…


と、不意に背筋が冷たくなる。ぞわっと全身が震え、どっと冷や汗をかくのを感じた。

明らかに後ろに何かがいる。刺すような視線を感じるが、振り向きたくはない。

さっきまでいたのだろうか…いや、誰かが入ってきたというわけではないだろう。

となれば今まで気が付かなかったのだろうか、とにかくものすごい圧だ。

「おい」

『ひゃいっ!!!』

突然のことに心臓がビクンと跳ねる。

冷や汗が頬を伝う。

「こっち向けよ」

どうしようもないほど怖いが、逆らうわけにはいかない。

僕はぎこちない動きで後ろを振り向いた。

途端、頬を掴まれてぐいっと引き寄せられる。

「お前まじで喧嘩売ってんのか??」

『ひょえぇっ?』

ギロリと睨まれる。凄みのきいた声も相まってとても怖い…

というか顔近い顔近い顔近い!!!!吸い込まれそうな限りない黒と白い渦の二つの瞳が僕を確実に捉えている。豊かな黒髪に、耳に空いた二つの銀色のアクセントが目に映える。

視界の端で、長い白色の髪の毛が写った。こちらに手を伸ばしている様に見え

「喧 嘩 売 っ て ん の か って聞いてんだよ!!!」

るッ…が…

頬を掴む手にギリギリと力が入る。

息が苦しい、痛い…僕が口を開こうとした瞬間、視界がガクンと揺れた。

否、落下したと言う方が正しいだろう。軽くなった頬に手を当て、状況を理解していないまま顔を上げる。


どうやら、黒髪の彼はもう一人の男の人に腕を掴まれて僕の頬から手を離した…

いや、離さないといけなくなったらしい。

黒髪の彼はかなり強い握力だったのに、そんな彼を思わず離さないといけない状態にさせた…つまり腕をつかんだ二人目の彼は黒髪の彼を超える握力を持っている、ということだ。

(いや恐ろしい!!!)

思わず身震いをする。

しかし改めて二人を見るが、背は高いわスタイルはいいわ…怖くて仕方がないのは変わらないが…かっこいい。

二人目の彼は黒髪の彼よりも背が高く、短い白髪にジトっとした目つき、黒マスクに灰色パーカーといった風体。目の色は黒かと思ったが、よく見てみると若干赤みがかっている。

黒髪の彼も、ちょっとスーツみたいな見た目の服にでかい厚底の黒ブーツ、背中に生えた悪魔の翼と二人目の彼より圧は凄いがやはりかっこいい。

できれば名前を知りたいが…二人とも何も喋らないのだ。

黒髪の彼は明らかに何か言いたげにこちらを睨んでいるが、口を開かない。

二人目の彼に至っては喋る気配すら感じない。

さすがに沈黙が長く、居た堪れない気持ちになった僕は思わず周りを見渡した。

おろおろとしているサクラさん、謎に真顔なライラさん、めちゃくちゃ涙目なシュリさん、ため息をついているペトラさん…と、流れでシロの方を向こうとすると…

「え~~っと…」

初めて聞く声に遮られる。

振り向くと、ずっと腕を掴んでいる二人目の彼と掴まれている黒髪の彼の左隣に、ウサギ耳の生えた少年がいた。

頭に天使の輪のような物が付いていて、割とくせっ毛が凄い(隣の二人目の彼はそれこそ比べるまでもない凄いくせっ毛だが)。ジト目の優しい目つきで、歯がギザギザしている。

背は低めで、黒髪の彼や二人目の彼より頭2つ分ぐらい背が低い印象だ。

「あ、僕の名前はみぞれです。よろしくお願いします。」

みぞれと名乗った彼は、僕と目が合うとぺこりとお辞儀をした。

礼儀正しい賢そうな人だ…きっとこの人なら教えてくれる!

『えっと…教えてほしいんですけど…隣の喧嘩?してる人達ってなんて名前なんですか?』

「ア”ァ”??」

すかさず黒髪の彼が反応してきたが、今回に至っては無視することにする。それに、暴れてもきっと二人目の彼が抑えてくれるはずだ。

「ああ、そう言えば名前すら言ってなかったですね。腕を掴まれてる悪魔っぽいうるさい人はメルト、」

そこまで言って、黒髪の彼…メルトは今にも飛び出さんとする体制になった…が、すんでのところでライさんががっしりともう片方の腕も掴んで抑える。

みぞれさんはそれをちらっと横目にする程度で、

「腕を掴んでる黒マスクの人はライと言います。」と話をつづけた。

「ライの方は、喋りません。理由はわからないのですが、とにかく喋ることはしません。ああ、大丈夫です。意志疎通はとれます。」

それまで普通に説明を聞いていた僕が急にあまりに怪訝な顔をしたからだろう、みぞれさんは何度も大丈夫と繰り返す。このままだとずっと繰り返していそうな勢いだったので、半端に頷いておく。

だがしかし…見れば見るほど無表情なライさん。本当に意思疎通ができるのだろうか…疑心暗鬼でライさんを眺めていると、みぞれさんが「思いついた」というように手を叩いた。

「本当に簡単ですよ… ライ!ホットケーキ食べたい?」

「!」

”ホットケーキ”という単語を聞いた瞬間、明らかに変わった目の色(どこに生えていたのかアホ毛まで立っている)。ぴょこぴょこしている犬の耳まで見えてくるようで、その姿は尻尾を振っている犬そのもの…と思ったところで、フリスビーを一生懸命追いかけているライ犬(空想)が浮かび、思わず頭を振った。

『…なるほど。』

確かに、意思疎通はとれそうだ。


さて。

色々あったものの、あと紹介されていないのは…

みぞれさんの更に左隣、猫耳の少女とパーカーの少女だ。

猫耳の方の少女は、僕の視線を感じるとすぐにピクリと反応した…が、すぐに気を取り直したのか咳払いをする。

「アタシはシャム。なめてたらアタシの鋭い爪が黙っていないからな!!」

物凄い脅しを受けたが、まずまず僕はなめていない。あと尻尾がめちゃくちゃぴんと立っていて、緊張しているのがバレバレだ。見栄を張ってるな…と思っていると、それが顔にまで出ていたらしく、

「なっなんだよ!!」

と赤面しながら言われてしまった。

おっといけない、下手に彼女の機嫌を損ねてしまっては彼女の鋭い爪が黙っちゃいないんでした…怖い怖い…

それはさておき、隣の少女は誰だろう。

薄黄色のパーカーを着ており、ちょこんとした印象。髪の毛はショートの黄色だが、頂点辺りに液体が垂れてるみたいに白い部分がある。

名前を聞こうと口を開くと――


バーーーン!!!

耳を劈く爆弾の音…ではなく扉の音。

引き戸を思いっきり開けたらしい。咄嗟にドアの方向を振り向くと、

「こんにちはーーー!!!!1年ーA組!!キングでーす!!!1年A組のヒナゲシさんはいらっしゃいますかぁーーー!!!!」

突然の大声。それを始めに、滝のように沢山の人が流れ込んできた。

「おぉ、ヒナゲシが来たんだって?」

そう言ってほっぺをつまむ。

「…どうやって戻ってきたんだ」

そう言って髪の毛を引っ張る。

「おお、珍しいネ!!」

そう言ってゴーグルをいじる。

「ハハハ!まぁいいんじゃないか?」

そう言ってパーカーを引っ張る。

「おぉ~!!ほんとにヒナゲシじゃぁん!!」

そう言ってデコピンをしてくる。痛い。

「まずまず本物ナの?」「眠い…」

そう言って両耳を引っ張る。

「う~ん…精霊は一緒に見えるけど…」

そう言ってじろじろ眺める。

「わーーー!!!!ヒナゲシだぁー!!」

そう言って肩を全力でゆする。

「あんだってぇ?!!あんのピーーーが帰ってきただとォ?!!」

そう言ってパーカーの紐を引っ張る。

「一回お前は黙っとけ!!」

そう言ってほっぺをつね…らない。

「おかえりなさい、でいいのかな?」

そう言って手を振る。いや助けてくれ。

「ヒナゲシだ~~!!!久しぶりだけど確かにちゃんとヒナゲシ…」

そう言って頭をなでる。まだ許せる。

「凄い凄いヒナゲシだ~!!!」

そう言って唇を引っ張る。まだ…許せない。

最初は意味がわからずされるままになっていたが、ほっぺはつままれるわ髪の毛は引っ張られるわゴーグルはいじられるわパーカーは引っ張られるわデコピンをしてく(以下略)

ともかく…もう、限界だ!!

「あぁもう…」『だーーもう…』

『「うるさぁああああああああい!!!!!!」』


数秒の沈黙。

皆呆気にとられた顔をして、僕を見つめて…はいない。

僕は怒りに満ちて、全身をわなわな震わせて…はいない。


皆(僕を含めて)、呆然とした顔で扉のすぐそば、明らかにオーラが怒りで満ちているオリさんを見ている。

僕に関しては限界がきて怒ったらもっと恐ろしい怒り方をしている人がいて怒るに怒れない、というなんとも不思議な状態だ。

というかオリさん、メガネで表情はよく見えないせいで余計怖い。確実に皆怖気づいて震えている。

突如、ドンと音を立ててオリさんが黒板を叩いた(グーで!)。

ビクリと全員が反応する。

「…ぅるさぃ」

ゆっくりと顔を上げたオリさん。

「うるさい!!!!風紀を乱さないで!!!!!」

顔がはっきりと見えたとき、僕、(そして多分全員)は死を覚悟する。

怒りに満ちたオリさんの顔は、まるで般若のようで…

「「「「「「『すいませんでしたぁ!!!!!』」」」」」」


その後、30分間に及ぶ長時間の説教をオリさんからされた一同であった。



オリさんの指示で、それぞれの席に座った全員。

ショート朱色の髪の少女(さっき眺めてきた人だ)とオリさんが教卓に立った。

「…で。こいつどーすんだ?」

最初にキングと名乗った黒髪の少年が言う。

急に自分に話を振られてどぎまぎしている僕をよそに、皆は

「う~~~ん…」

と考え込む。

何かをするにもやることもなく、なんとなくそわそわしていると、

「ヒナゲシって住んでる家とかってねえのか?」

こちらを振り返って言ったのは、前の席の黒髪一つ結びに灰色のパーカーを着た女子。

残念ながら覚えていないため首を横に振ると、皆ががっくりと肩を落とした。自分が悪くないのはわかっているのだが、どうも申し訳ない気持ちになる。

家…家か。

ん?まてよ…家どころかそれ以前に…

『まずまずここがどこだかわからない…んですけども…。』

恐る恐る言うと、皆顔が固まった。

「まじ…??」

「やべえな…」

「どうしようか…」

辺りがざわめく。

僕は当の本人だというのに、ずっと皆に迷惑かけてばっか…

どうしようと焦っていると、

「静かに!」

ハリのある声。前の朱色の少女からのようだった。

「ここがどこだかわからない問題は置いておいて、ヒナゲシの住む場所を考えよう!」

引っ張られるようなそんな力を感じる。周りの人たちも、うんうんと頷き、納得しているようだ。声も相まって、説得力と導く力みたいなものがあるんだろう。

「はーい!寮に入れればいいと思いまース!」

すると勢いよくそう言ったのは、お面をかぶった赤髪の少年。

僕は寮がどういう所なのかは全くわからないがどうやら皆は納得しているようだし、言葉通りのイメージを持つとしたら、僕も反対はしないが…

すると、おずおずと不安げに手を挙げたのは…灰色髪の、確かペトラさん。

「えっと…そしたら、僕が一人だから僕のところに来る…てのはどう?」

(ペトラさんは確か凄く頼れそうなしっかりしている人だったはず、)

最終的に誰かと一緒になるのだとしたら、ペトラさんなら少なくともメルトさんよりはいい気がする。メルトさんよりは、メルトさんよりは…

するとそんな僕の気持ちを知ってか知らずか、オリさんが

「ヒナゲシがいいならいいと思うけど?」

と言った。ので、僕は即座にぶんぶんぶんぶんと首を勢い良く縦に振る。

『是非お願いしたいです!!ありがとうございます!!!』

ここで断る理由はない!僕は最大限の賛成の意を目をきらっきらにして身体いっぱいに表現した(メルトが物凄くうざったそうな顔をこちらに向けていたが、それは無視することとする)。


ともかく、これにて僕の住む場所問題は解決した。

あと残るはここはどこなのかわからないという問題だが…

皆も残すはそれと分かっているため必死に考えている。

…がしかし、どうにも良い案が思い浮かばない。

案外、知っている事を知らない人に教えるのは難しいものだ。

数人がヒナゲシに説明を試みてはみたものの、途中から皆も頭がこんがらがってきてしまいどれも失敗。無論誰かが都合よく写真を持っている訳もなく、一気に説明は難航した。

全員が燃え尽きるほど頭を使っても解決せず、いつしか阿鼻叫喚の嵐が巻き起こる。だがそれも体力が尽きてすぐに静まり、今度こそ皆が疲れ果て…。”もう無理”その一言が頭を過ぎろうとする、その瞬間!

一筋の光(いや違う、救世主(いや違う、勇者だ!))が舞い降りてきた!

「あの…いっそのこと学校をぐるっと周って施設を紹介するのはどうですかね?」

ゆっくり、しかしハッキリと言ったのは茶髪に三つ編みの少女。

ビビッと皆に電流が走る。それは正に天啓のようで…ヒナゲシは今確信した。

(これだ…!!!)

それはその場にいる全員が共通に感じたもので、視線はそのまま総監督のオリさんに行く。

長時間の格闘の末に髪の毛は乱れ眼鏡もずり落ちているが、確かに残っているオリさんのその厳格な判断力。採用か不採用か、彼女の判断で決まる。皆が固唾を飲んで見守る中、ついにオリさんが口を開いた…!

「それめっちゃいい、決定!!」

パッと皆の顔が明るくなり、同時に湧き上がる耳が痛いほどの大歓声。

しかし、すぐに息も絶え絶えになり、一同は崩れ落ちる。

「「「「『疲れた~!!!』」」」」

思わず声がそろい、咄嗟に吹き出した。

考えれば至極簡単な発想で、こんな簡単なことにこんなに時間をかけていたのかと考えるとどんどん笑いが込み上げてくる。気が付けば周りは笑いの渦になっていた。

(ふぅ…)

心の中で一息つく。よかった、なんとか決まった…どっと溢れ出てくる疲労と安堵感。

「おーいヒナゲシー!!」

ふと、向こうでキングが僕を呼んでいる声がする。どうやら安心したのもつかの間、もう計画に入っているらしい。その体力の無尽蔵さは呆れを通り越して尊敬に値する。僕はふっと微笑んで、

『はーい!!』

そう力強く返事をして立ち上がった。


今回第一話は三人のうちのサイダーが書きました。ほんとに書くの上手いんですよね!!

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