四、永遠の別れ【15】
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クレイシスと場所が入れ替わったことにより、初めて目にする黒い矢。
(――これは!)
クルドが目にした瞬間、矢は弦で弾かれたように空を裂き、クレイシスの背中に突き刺さった。
がくん、と膝を折って倒れ込むクレイシス。
クルドはその体を受け止める。
「クレイシス! おい、しっかりしろクレイシス!」
クレイシスの体を揺すってみたが、クレイシスは反応を返さなかった。呼吸もなく、目は見開いたままで、まるで人形のようにしている。クルドは「まさか」と思い、急いでクレイシスの胸に耳を当ててみた。やはり心臓も動いていない。
(何やっているんだ、俺は――)
魔女狩りができたことに満足して油断していた。
クルドの脳裏に蘇る大魔女の言葉。
『その痛みを二度も味わいたくなければアーチャの邪魔をしないことだね』
「何やってんだよ、俺は!」
簡単に終わらないことを想定すべきだった。
自分自身を殺してやりたい憎しみが狂おしいほど責め立ててくる。
デッド・コーズ――死を宣告する最大級の暗黒魔法。
タイムリミットは五分。五分以内にクレイシスが自分で意識を取り戻さなければ、待つ先は永遠の別れとなる。
(五分。それまでに意識を戻させないと)
やるせない気持ちを飲み込み、クルドはクレイシスの肩をぐっと掴んだ。
「お前まで死なれてたまるかよ!」




