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二、狙われた彼女【15】



 そのまま自然な仕草で手短かにあった黄色い小箱を手にすると、企みある笑みを浮かべて黒猫の背後に静かに忍び寄る。

 そろり、そろりと。

 まるで獲物を狙う肉食獣のように近づいていき……。

 タイミングを計って、ラウルは小箱の蓋を開けた。

 小箱から飛び出す魔女の人形。

 黒猫の首にがしりと絡みつき、その耳元でヒヒヒと不気味に笑う。

「ぎゃぁぁぁぁッ!」

 黒猫は全身の毛を逆立てて、悲鳴をあげながら首に絡んだ人形に怯え、部屋中を逃げ回った。

「だはははは、ざまみろクソガキが! 今までの仕返しだ!」

 そんな黒猫を指差して、ラウルは腹を抱えて笑いながら床をべしべしと叩いた。

 頬を引きつらせてクルド。

「大人げないことを……」

 逃げ回っていた黒猫が、ふと小さな宝石箱につまずき倒れ込む。衝撃で宝石箱の蓋が開き、中から悲しいオルゴールの音が流れ出した。

 フッと消える円舞曲。曲に合わせて踊っていた人形が、急にネジが切れたように動かなくなった。

 笑いを止めるラウル。

 黒猫はそっとつまずいた宝石箱へと目をやった。

 宝石箱の中には微笑するクルドと一緒に楽しげに笑った活発そうな少年との写真が一枚、入っていた。

 気まずく耳を伏せて、黒猫はクルドへと目を移す。

「……ごめん、クルド」

 クルドは指先で虚空に円を描いた。唱える。

(ルーズ)

 言葉とともに、部屋の中にある全ての物が一瞬で消え去った。――宝石箱一つ、残して。




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