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モブ令嬢の、幸せ推し活な学園生活 ~モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!~  作者: 廻り
第二章 女神の力をこっそり使いつつ乙女ゲームを支えるつもりが、ヒロインがバッドエンドまっしぐらなのですが

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70 友人関係4


 その日の夜。カリストは上空からブラウリオの部屋のバルコニーへと降り立った。

 そのまま扉を開けようとしたが、今日は鍵がかかっている。カリストは眉をひそめた。


『鍵は必ず開けておきますので、いつでもお入りください!』


 そう言ったのはブラウリオだ。しかも彼はカリストを待ちわび過ぎているがために、いつ来てもカーテンが開けっ放しで、すぐにでもカリストを見つけられるようにしていた。


 それなのに今はカーテンも閉め切っている。まるで何かを隠したいようだ。カリストならばカーテンの有無は関係ないと、ブラウリオも分かっているだろうに。


(おまえも、そういう歳になったんだな)


 初めて、このバルコニーへ降り立ったのは、カリストが十六歳になったころ。風属性の精霊と契約し、空を飛べるようになったら、真っ先にしたいことだった。


 一人で寂しくしていないか心配で、こっそりと中の様子をうかがうつもりで訪問した。けれど、ちょうど窓の外を眺めていたブラウリオと、うっかり鉢合わせしてしまった。

 当時まだ六歳だったブラウリオは、子犬のように喜んで。また来てほしい、とせがまれ秘密の交流が始まった。


 王太子と呪われた者が、このような交流をしてはいけない。

 頭では理解していたが、当時はカリストも親から捨てられて日が浅かったので、孤独を埋めるために通い続けた。

 次第にカリストの気持ちも落ち着き、ブラウリオも成長したことで、交流は徐々に減らしていったが。ブラウリオが学園へ入学したことで、交流が復活してしまった。


 改めて年月の流れの速さを感じながら、カリストはガラス扉を軽く叩いた。


「ブラウリオいるんだろう? 話があるんだ。開けてくれないか」


 室内へ向けてそう声をかけると、かちゃりと静かに鍵が開き、ブラウリオがバルコニーへと出てきた。即座に扉を閉めた彼は、居心地が悪そうに呟く。


「カリスト先生にお会いできて嬉しいです。お話とはなんですか?」

「聖女の体調はもう戻ったのだろう? いつまでも学園を欠席するのは良くない。明日からでも登校を再開したらどうだ」

「……リアナはまだ、神殿でお祈りするだけで精一杯なんです」

「そうか? 俺には健康そのものにみえるが」


 直接会わずとも、この距離ならばこの部屋にいる聖女の体調くらいすぐにわかる。

 ブラウリオは必死に隠していたものを見られたかのように、顔色が青ざめていく。


「リアナは俺が守らないと……。リアナが頼れるのは俺だけなんです……」


 まるで何かに憑りつかれているかのように、ブラウリオはぶつぶつと呟きはじめた。

 普段のブラウリオなら、国にとって悪影響があるようなことは決してしない。今の状況を正当化するために言い訳を繰り返すことで、心がかなり病んでいるようだ。


「一人で抱え込むな。お前たちには友達がいることを忘れたのか。モニカが心配している」


 その言葉に対してブラウリオは、急に恨むような視線をカリストへと向けた。


「先生は……そんなにモニカ嬢が大切なんですか? 王室主催の舞踏会でモニカ嬢のパートナーを引き受けたことだけでも驚いたのに、この前は父上から禁止されている俺への謁見まで申し込むし……。俺は毎晩、先生を待っていたのに……やっと来てくれたかと思えば、モニカ嬢からの頼み事ですか? 俺のことなんか、もうどうでもいいんですよね! 俺にはもう、リアナしかいないんです……」


 今までの不満をぶちまけるように言葉を並べ立てたブラウリオは、泣きそうな顔をうつむかせた。


(それなりに俺離れ(・・・)できていると思っていたんだけどな……)


 学園での再会が悪かったのだろうか。カリストは小さくため息をつきながらブラウリオの肩を掴んだ。


「モニカは特殊な事情があるから、俺がついていてやらなければいけないんだ」

「それだけの理由ではありませんよね? めんどくさがりな先生が、進んで女性の世話を焼くとは思えません」

「ひどい言われようだな」

「俺は真剣に聞いているんです! 今の先生にとっては、モニカ嬢が一番大切なんですか?」


 今日のブラウリオはモニカへの不満が尽きないようだ。この問題を先に解決しなければ本題には入れそうにない。

 カリストは、わずかに顔が熱くなるのを感じつつ、ブラウリオから視線をそらしながらうなずいた。


「……そうだ。俺はモニカが大切だし、これからも傍にいたいと思っている」

「…………」

「だからといって、お前のことを大切に想う気持ちは変わらない。それともお前は、聖女さえいれば俺は必要ないのか?」


 ブラウリオは、ハッと気づかされたように真面目な顔になった。


「モニカ嬢に先生を取られた気がして……すみません。言い過ぎました……」


 彼は、国王夫妻が結婚してから十二年目にしてやっと生まれた王太子。今でこそ、立派に育ったブラウリオに甘い国王夫妻だが、当時は教育に失敗は許されないと躍起になり、幼いブラウリオを厳しく育て苦しめた。


 両親からの愛情を感じられなかった者同士、カリストとブラウリオがお互いを求め合ったのは当然のことで。家族が消えてしまうような、焦りを感じているブラウリオの気持ちも理解できる。

 けれどひな鳥はいつか巣立ち、新しい家庭を作るものだ。


「それに、不公平じゃないか。お前は聖女と結婚するのに、俺には一生独身のままでお前の傍にいろと?」

「えっあのっ、そういう意味ではなくて……。先生にそういった方ができるとは想像していなかったので……。あっ決して先生に魅力が無いと言っているのではなく――」


 自分がいかに、独占欲にまみれた発言をしていたか。やっと気がついた様子のブラウリオは、恥ずかしそうに慌てふためている。カリストは思わず笑みをこぼした。


「このことは誰にも言うなよ。お前だから話したのだからな」


 ぽんっと頭をなでると、ブラウリオはすっかりと正常な様子へと戻っていた。

 異常なほどリアナを傍において保護していたのは、一度はカリストとの縁が切れそうになって得た、彼の防衛手段だったのだろうか。


 モニカならきっと、ゲームの設定として納得するのだろうが、この世界でしか生きてことなかったカリストはそうは思わない。

 もしかしたらカリストが、もっとブラウリオの心のケアをしてから去れば。そもそも両親が、ブラウリオに愛情を表していれば。彼にこのような感情は生まれなかったかもしれないのだから。


「はい。ちなみにモニカ嬢とはもう、心が通じ合っておられるのですか?」

「いや……。哀れに思うなら、学園へ来て見守ってくれないか」




 カリストを見送ってからブラウリオが扉を開けると、部屋の中ではリアナが不安そうに待っていた。


「リアナ」

「……ごめんなさい。聞こえてしまったの」

「問題ないよ。先生は、リアナがいると知りつつ話したんだから」


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◆人物紹介◆

モニカ・レナセール
伯爵令嬢。乙女ゲームのモブ

カリスト・ビエント
教師・男爵家の養子。乙女ゲームの攻略対象(初心者用)

ルカ・フエゴ
公爵令息・騎士。乙女ゲームの攻略対象

リアナ
聖女・平民。乙女ゲームのヒロイン

ブラウリオ・ アグア・プロテヘル
王太子。乙女ゲームの攻略対象

ロベルト・スエロ
侯爵令息・宰相の息子。乙女ゲームの攻略対象

ミランダ・セーロス
公爵令嬢。乙女ゲームのルカの婚約者

ビアンカ・ソルダー
辺境伯令嬢。乙女ゲームのロベルトの婚約者

イサーク・リアマ
男爵・ルカの従兄。乙女ゲームの悪役

ルー
火属性の精霊

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◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


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