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【三章】モブ令嬢の、幸せ推し活な学園生活 ~モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!~  作者: 廻り
第一章 『女神の再来』だと精霊に告げられましたが、それより推しに認知されたい
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07 女神と精霊の授業1


 その翌日。


「おはようございますルカ様。今日もお隣に座ってもよろしいでしょうか」

「…………」


 やはり昨日の昼食後から、ルカはモニカに気づかない状態へと戻ってしまったようだ。


(せっかく教室でも、おしゃべりできると思ったのに……)


 自分のモブ体質を恨めしく思いながらも、やはり今日のモニカもちゃっかりルカの隣に腰を下ろす。

 そして問題児な推しの世話を、甲斐甲斐しく焼くのだ。これはこれで、モニカとしては楽しくもある。


 けれどやはり、ルカには気づいてほしい。

 彼はゲームの中の推しであったが、今のモニカにとっては大切な幼馴染でもある。

 仲良くしたいなどと、高望みはしない。せめて、認知されたい。





 今日は初めての『女神と精霊の授業』がおこなわれた。

 学園の奥にある森には、『女神が、天から舞い降りた場所』として伝えられている聖木がある。


 ――当時、この土地は魔獣がはびこる荒れ果てた大地。聖木の力によって辛うじて草木が生きながらえ、その恩恵によって人間も、絶滅の一歩手前で留まっていた。


 このままではいずれ聖木は力を失い、植物も人間も絶えてまう。

 この地を救うために天から舞い降りた女神は、四大精霊と契約を結び、彼らの助けを得て荒れ果てたこの地を安寧へと導いた。


 女神は天へと帰る際、聖女を生み出し、この地を守る役割を与えた。

 それ以来、聖女はこの地を守る役目を女神から引き継ぎ。彼女を助ける役割は精霊に代わり、それぞれの属性を持つ守護者となった。


 その歴史を学び、属性を持つ者はその身に精霊を宿すのが、この授業の目的。乙女ゲームの大切な要素でもある。


 今日は初めての授業として、属性の有無を調べ、眠っている属性能力を発現させる。そのために、聖木のもとへと集まった。


 聖木の前には、豪奢な台座が設置されており、そこに人間の頭ほどある大きなオーブが鎮座している。

 そのオーブの横に立ったカリストが、生徒たちを見回しながら説明を始めた。


「このオーブに触れると、属性の有無を調べることができる。属性を持っている者は同時に、能力を発現させることになる。火属性は赤、水属性は水色、風属性は黄緑、土属性は茶色に光るからな」


 試しに、とカリストがオーブに触れてみると、オーブは黄緑に変化する。生徒たちが「おお」と歓声をあげた。


「俺には色は見えないが、黄緑に変化しているだろう?」


 そうカリストが尋ねると、生徒たちは意味がわからず小声で囁き合う。カリストはしたり顔で、自身の瞳を指さした。


「俺は目が見えないのだが、今はこの目に精霊が宿っている。おかげで物の形や色は見えないが、精霊が伝えてくる雰囲気や感覚でほとんど不自由しなくなった」


 「ちなみに」とカリストは、生徒の一人を指さす。


「君は朝食を抜いたせいで、身体の細胞がご機嫌ななめらしいぞ」

「えっ、そんなことまでわかるんですか!」


 言い当てられた生徒が驚いたことで、カリストに向ける生徒の眼差しは一気に羨望へと変わった。


(ふふ。このくだりは、ゲームのストーリーにもあったわね)


 精霊と契約することで得られる能力は人それぞれだが、カリストの能力は非常に珍しいもの。

 精霊が特殊な存在であることを教えるには、とても良い例だとして、カリストは毎年この機会を楽しみにしているのだとか。


 カリストはちらりとモニカに視線を向けると、「どうだ」と言わんばかりに首を傾げながら微笑んだ。


(今日も先生は気づいてくれるのね)


 ルカもモニカを認識するには波があるようだし、この学園でモニカを認知してくれるのは先生だけ。モニカは嬉しくなりながら、微笑み返した。




 それから一人ずつオーブに触れて、属性を確認することに。

 まず初めにオーブに触れたのはブラウリオ。彼は水属性なので水色に変化する。

 次に宰相の息子ロベルト。彼は茶色、土属性だ。

 それから、ルカが触れた時には、オーブは真っ赤に変化した。


「俺は火属性か……」


 オーブに触れた手を見つめながら、ルカはしみじみとそう呟く。自分に属性があったことが嬉しいようだ。

 普段は無表情が多い彼だが、心なしか微笑んで見えるのがたまらなく可愛い。


(ルカ様、良かったですね)


 モニカは瞳を潤ませながら、推しの喜びを一方的に分かち合う。

 なんて幸せな学園生活だろうか。これからもルカ様の成長を見守り続けたい。


「皆、おめでとう。私はやっぱり属性なしだったわ」


 リアナは攻略対象たちに微笑みながらも、少し寂しそうだ。属性があれば精霊と交流することができる。皆が憧れることだ。


「聖女のために、属性を持つ者が生まれるんだ。俺が精霊を宿したら、リアナと仲良くするようにお願いするよ」


 ブラウリオはすでに、彼女の守護者になるつもりでいるようだ。後を追うようにロベルトも、二人の会話に割って入る。


「僕の精霊もきっと、リアナ嬢を気に入ると思います」

「ふふ。二人ともありがとう。期待してる」


 リアナは二人に微笑んでから、さりげなくルカに視線を向ける。けれどルカは、属性がある喜びでいっぱいなのか、リアナを気に留めていない様子。


(ルカ様って、意外と攻略が難しいのよね……)


 彼は女性と接するよりも、剣を振り回していたほうが楽しいタイプ。振り向いてもらうまでに少々、時間がかかるのだ。


 なんならリアナにコツを教えたいくらい。けれどモニカが話しかけたところでリアナは、気づいてくれそうにない。

 うーんと悩んでいると、ぽんっとモニカの肩を叩く者がいた。


「モニカはまだ、調べていないだろう?」

「あっ……、はい。先生」


 調べずとも結果はわかっているが、授業なので確実に調べなければならないようだ。

 カリストにうながされてオーブの前に立ったモニカは、そっとオーブに触れてみる。


 モニカとカリストしか注目していないオーブ。二人でしばしじっと見つめたが、やはり何の変化も得られなかった。


「モニカは、属性なしだな。聖女の素質がありそうだし、当然か」


 カリストは、名簿にチェックをつけながらそう呟く。未だに、モニカが聖女かもしれないと疑っているようだ。


「私、そんなに聖女様と雰囲気が似ていますか?」

「いや……。今日、聖女に実際に会って感じたが――、モニカのほうが崇高な雰囲気だな。あちらは偽者か?」

「せっ先生。なんてこと言うんですかっ……!」


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◆人物紹介◆

モニカ・レナセール
伯爵令嬢。乙女ゲームのモブ

カリスト・ビエント
教師・男爵家の養子。乙女ゲームの攻略対象(初心者用)

ルカ・フエゴ
公爵令息・騎士。乙女ゲームの攻略対象

リアナ
聖女・平民。乙女ゲームのヒロイン

ブラウリオ・ アグア・プロテヘル
王太子。乙女ゲームの攻略対象

ロベルト・スエロ
侯爵令息・宰相の息子。乙女ゲームの攻略対象

ミランダ・セーロス
公爵令嬢。乙女ゲームのルカの婚約者

ビアンカ・ソルダー
辺境伯令嬢。乙女ゲームのロベルトの婚約者

イサーク・リアマ
男爵・ルカの従兄。乙女ゲームの悪役

ルー
火属性の精霊

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◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


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