46 真実2
「女神であるモニカには、話すべきだろうな……。俺の目と、この国の葬られた歴史について」
――女神がこの地を救うために降臨した頃。地上側でも魔獣に奪われた土地を取り戻そうと立ち向かっていた者、『勇者』がいた。
彼は仲間と協力して聖木を守り、わずかに残った人間が住める場所を死守していた。
『これからは俺が守護者として、剣となり、盾となり、女神様をお守りいたします。ですからどうか、この地をお助けください』
『勇者と精霊の助けがあればきっと、この地はかつてのように緑あふれる平和な場所へと戻すことができるでしょう』
三者が協力することによって、魔獣からこの地を救うことができた。しかし、魔獣王が倒れる際に最後の力で放った呪いを、女神の代わりに勇者が全て受けることとなった。
『私の身代わりに……。ごめんなさい勇者』
『泣かないでください女神様。この地を救うという俺の目的は果たされました。どうか気に病まないでください』
『私が地上にいられる時間はもう、あまり残されていません。ですが私が生み出す聖女によって、いつか完全に呪いを解いてみせます』
『では、聖女がいつまでも国を守れるよう、俺が精霊と盟約を結び、子々孫々見守り続けさせます』
こうして女神は、この地を守り続けるため、そして勇者の呪いを解くために聖女を生み出した。
勇者もまた、この地と聖女を守るために、属性を持った者が精霊と契約を結べるよう、精霊と盟約を交わした。
「……だが、魔獣王の呪いは強力で、初代聖女は呪いを解こうとするたびに寿命を縮めていったんだ。それでは国を守れないと判断した勇者は、聖女一代に対して一度だけ、呪いを解いてもらうことにしたそうだ」
初代聖女が解けなかった分の呪いは、勇者の家系に代々受け継がれ。その呪いを歴代の聖女が少しずつ解いていくことで、呪いは徐々に減っていった。
「最後に残った呪いが、先生の目なんですね」
「そうだ。まあ、これが最後かどうかは不明だけどな」
(けれど、少なくとも聖女の浄化魔法によって、先生の目は見えるようになるのよね)
モニカは、守護者としてのカリストのストーリーしか知らない。詳しい事情は、恋愛対象としてストーリーを進めなければわからないが、カリストがこうして話してくれたことで、少しは事情を知ることができた。
(あれ……。でも、なぜ私にこんな重大な話をしちゃうの?)
いくらモニカが女神だと判明したからといって、国の歴史からも葬られた話を簡単に話しても良いのだろうか。
聖女の守護者になっただけの彼では、話さない秘密。それをモニカに話すと言うことは……。
(も……もしかして私、先生の恋愛ルートに入っちゃってるの……?)
モニカは全身に熱を感じながら、なぜこうなったのか必死にこれまでのことを思い返してみた。
モブだったモニカは、学園で必ずモニカを認識してくれるカリストの存在が嬉しくて、カリストにはそこそこ甘えていた部分がある。
けれどそれは、ルカに勉強させるためだったり、カリストの目が見えるようになるため、リアナの守護者になってほしかっただけ。
決して、カリストを攻略していたわけではない。
「モニカ、具合が悪いのか? 熱が上がってきたな……」
力は安定したはずだが。とカリストは呟きながら、熱を測るように額どうしをこつんと重ね合わせる。あまりの近さに、モニカの熱はさらに上昇した。
(せっ先生……。そんなことしなくても、精霊の目で体温がわかっちゃうのよね?)
攻略対象とはなぜこうも、無防備にスキンシップを図ってくるのか。
「そっそうではなくて…………」
消え入りそうな声で否定すると、カリストは見透かしたようににやりと笑みを浮かべる。
「今の俺の話を聞いて、運命でも感じたか? 女神様」
「女神って呼ばないでくださいっ。そして大丈夫ですから放れてくださいっ」
全てをシャットアウトするように、モニカは布団を頭まで被った。
モニカの気持ちは、精霊の目を通して一体どこまで彼に伝わっているのか。恐ろしくてとても聞けやしない。
「冗談だよ」
カリストは笑いながらモニカの頭をぽんぽんとなでた。
結局また、からかわれただけなのかもしれない。モニカは小さくため息をついて布団から顔を覗かせた。
「……それなら先生はいずれ、リアナちゃんに呪いを解いてもらえるのですね」
そういった取り決めがあったなら、わざわざカリストがリアナの守護者になる必要はない。ゲームのストーリーしか知らないモニカは、無駄に空回りしていたようだ。
「いや。俺の世代では、呪いはこのままにしておくつもりだ」
「なぜですか……?」
「聖女はいずれ、ブラウリオと結婚するかもしれないからな。少しだけだとしても、寿命を奪うのは忍びない」
(だから先生は、リアナちゃんに興味がなさそうだったのね)
慕ってくれている学生のためを想うとは、カリストらしい優しさだ。
「でも……、それだと先生が……」
「俺はさほど不便はしていないさ。精霊のおかげで呪いに苦しめられることもなくなったし、目の役目も果たしてくれている。こいつは暗い目の中が気に入っているようだから、次の子孫とも契約してくれるだろう」
カリストの中では、それで全ての問題が解決しているかのようだ。
(でも、それで本当に満足なのかしら。先生は本当に、世界を見ないままで良いの?)
彼の目が見えた時の感動的なシーンを知っているモニカとしては、やはりカリストには目が見えるようになる喜びを味わってもらいたい。
かといって、リアナの寿命が縮むと知ってしまうと、強くは言い出せない。モニカにとっては、リアナもカリストも大切な人だから。
「あの……先生。もしかして、その呪いを解く役目。私にもできるんじゃないですか?」





