40 ハイキング2
ルカが背負ってきたリュックから、お弁当を取り出したモニカとリアナは早速、テーブルに並べて昼食会が始まった。
(どうか、リアナちゃんへの好感度と信頼度が少しでも上がりますように)
モニカは祈る気持ちで、攻略対象たちを見つめながら反応をうかがう。
初めてバケットサンドを食べるブラウリオとロベルトは、その味に驚いたのか同時に目を見開いた。
「……驚いたな。王宮の料理長が作ったのより美味しいよ」
「世界中を探しても、このような美味しいバケットサンドを作れるのはお二人だけだと思います」
べた褒めな言葉に、モニカとリアナは顔を見合わせてくすりと笑った。
リアナはブラウリオに褒めてもらえて、本当にうれしそうだ。それだけでもリアナをバケットサンド作りに誘って良かった。
それにしてもこの二人は元々、リアナへの気持ちが高い。効果があったのかは、いまいちよくわからない。肝心のルカとカリストはどうか。
「だろ? モニカのバケットサンドは美味いんだよ」
ルカは、自分こそがこのバケットサンドの理解者だとばかりに、自慢を始める。この反応は割といつもどおりだ。
「確かに、このバケットサンドは何度、食べても美味い」
「先生も食ったことあんのかよ」
「まあな」
ルカが不満げに、じとっとモニカを見つめた。
彼は、自分の分が減っていたのかもしれないと思っているのだろうか。相変わらずの食いしん坊ぶりが可愛すぎる。
「ルカ様の分は、ちゃんと死守していましたから大丈夫ですよ」
モニカはにこりと微笑んで見せたが、なぜか周りが妙な雰囲気になる。
「モニカ嬢って意外と……ね」
「ご愁傷様です。ルカ卿」
(あら……? モブっぽい勘違いでもしてしまったかしら……)
「モニカちゃんはずっとこのままでいて~!」
しかしリアナがぎゅっと抱きついてくるので、どうやらこのままで良いらしい。
モニカはほっとしながら、改めてテーブルを見渡した。
皆、楽しみながらバケットサンドを食べているが、特にいつもと変化があるようには思えない。
もともとバケットサンドの効果は低いが、それでもまったく接点がなかったカリストならば、リアナに話しかけるくらいあってもよさそうだが。
(結局、私と同じで、リアナちゃんが作ってもアイテムとしての効果はないのかしら)
ルカへ渡したハンカチは効果がありすぎなくらいだったので、モニカは少し期待をしていたが……。
残念に思っているモニカの隣で、ルカが「食った、食った」と満足そうにお腹をなでている。
「あら……? ルカ様、まだ残っていますよ?」
「んー。残りは後で食う」
お弁当を二つもリクエストしたのは本人だが、珍しく小食のようだ。
ハイキングで体力を消耗したはずなのにと疑問に思いつつ、残したお弁当に目を向けたモニカは、ある事実に気がつく。
箱には、モニカが作ったものとリアナが作ったものを半分ずつ詰めたが、ルカは二箱とも半分ずつ残していた。作った本人であるモニカには、どちらを残したのか一目瞭然だった。
(ルカ様……!)
なんとルカは、モニカが作ったバケットサンドだけを選り好みして食べていたのだ。
(作り手の差なんてわからないと思ったのに。さすがは私のバケットサンドマスター……)
料理長が作ったバケットサンドを拒否したこともあったが、わからないように混ぜても駄目だったようだ。ルカのバケットサンドへのこだわりを甘く見ていた。
「モニカちゃんどうしたの?」
リアナがこちらを覗き込もうとしたので、モニカは光の速さでリアナが作ったバケットサンドを、一箱にまとめて蓋をした。
人間、その気になれば、手のひらよりも長く並んだバケットサンドも、ひと掴みで綺麗に収納できるものだ。
リアナが気がつくかは不明だが、友達として彼女の悲しむ姿はみたくない。
「ルカ様が、残りは後で召し上がるそうですわ」
「そっか。一気に食べたら、後でお腹すいちゃうかもしれないもんね」
それで納得したリアナに向けて、モニカはバクバクした心臓を押さえながら笑みを浮かべた。
(まさか、食べてもらえないなんて。ルカ様の攻略、ゲームよりも難易度が上がっているわ……)





