34 試験と結果2
「それで、モニカちゃん! 誰を一日、独占したいの?」
「えっ……?」
「一位になったご褒美よ! 忘れちゃったの?」
「あっ……」
『定期試験で一番成績が良かった者が、この中の誰かを、一日独占する権利を得る』ブラウリオが提案し、皆の賛同で始めた勉強会。
けれどモニカは、ルカの勉強を手伝う目的で始めたことなので、自分がご褒美をもらった時のことなど想像もしていなかった。
「モニカちゃんは、私とデートがしたいんじゃない?」
「リアナちゃんと?」
そう提案するリアナの言葉に、モニカは顔を明るくさせる。今まで母の付き添いでお茶会などへ参席する機会はあったが、同性の友達を得られなかったモニカは女の子同士で遊びに行ったりしたことがない。
ずっと憧れていたことを、リアナと一緒に経験できるならとても嬉しい。
モニカは返事をしようとしたが、なぜか突然、ルカがモニカをぐいっと抱き寄せる。
「ル…………!」
「モニカは俺がいねーと、教室にも入れないやつなんだよ。知らないやつと一日中、一緒にいたら疲れんだろ。俺にしとけよ」
「なっ?」とルカは、モニカを見下ろしながら微笑みかけてくる。
そんな提案よりも、公衆の面前で推しに抱きしめられたことが恥ずかしすぎるモニカは、顔を真っ赤にさせた。
「ルカ様……放っ……」
「知らないやつとは何よ! 私とモニカちゃんは超速で大親友になったんだから。ルカなんてもうお払い箱よっ」
「放……して……」
「はぁ? 幼馴染なめんなよ! モニカは今まで俺しか友達がいなかったんだ。いまさら俺以外にほいほい懐くはずねーだろ!」
どうやらルカは、モニカは自分にしか心を開かない繊細な子のように思っているようだ。モニカは単に、他人から気づかれにくい体質だっただけで、そのような繊細さは持ち合わせていないが。
「なんだ、なんだ。喧嘩か?」
「公爵令息と聖女様が、学年一位の子を奪い合おうとしているみたいだ」
「あのお二人をそこまで熱くさせるなんて、どのような方なのかしら?」
掲示板の前でこのような言い争いを始めてしまったものだから、外野がわらわらと集まってきた。
完全に見せ物状態で、モニカは恥ずかしさのあまりルカの胸の中で縮こまる。
そこへ、ため息をついたブラウリオが三人の前へ進み出てきた。彼はリアナとルカの肩へ手を乗せる。
「二人とも、冷静になろうよ。一位になったのはモニカ嬢だよ。モニカ嬢に選ばせてあげなきゃ」
「あっ……。そうよね。私ったらつい熱くなっちゃって。ごめんね、モニカちゃん」
「おう……悪かったなモニカ。俺がついててやるから、無理せず選べよ」
ブラウリオの言葉で、二人は正気に戻ったようだ。ルカもやっと、モニカから手を離す。
(まさか殿下が、私を助けてくださるなんて)
ルカから解放されてほっと息を吐いたモニカは、ブラウリオへ身体を向けた。ブラウリオは爽やかに微笑みながら、今度はモニカの肩を掴む。
「さあ、モニカ嬢。遠慮せずに、一緒にいたい人を選んで。もちろん俺やロベルトでも良いからね」
親切な言葉に感謝を述べようとしたモニカだが、ブラウリオの手の力が徐々に強まっていることに気がつく。
(あ……。これ、助けてくれたんじゃないのね……)
ブラウリオは単に、「リアナは選ぶなよ」とけん制しにきただけ。笑みに隠れた無言の圧力が怖すぎる。
「モニカちゃん……」
「モニカ……」
心配そうにブラウリオの両脇から顔を出す、ルカとリアナ。これは誰を選んでも、もうひと波乱ありそうだ。
(どっ……どうしよう……)
ご褒美のはずなのに、なぜこんなに追い詰められるのか。
頭が回転しすぎて何も考えられなくなっていると、ロベルトがぼそっと呟いた。
「一人を選べないのでしたら、皆で遊びに出かけたらどうですか」
その言葉に皆が、すっと納得したような顔つきになる。
「それ……良いわね」
「良いんじゃねーか」
「俺も良いと思うよ。モニカ嬢はどう?」
(ロベルト様って、実は救世主なのかしら……)
ロベルトとはあまり話したことはないが、彼の指摘のおかげでいつも事態は収束する。収束方法に難ありの場合もあるが、今回は本当に助けられた。
「はいっ。私も皆様とお出かけしたいです!」





