33 試験と結果1
それからさらに勉強に専念したモニカたちは、ついに定期試験の当日を迎えた。
教室では試験が始まるまで、教科書を読みながら最終確認をしているモニカの横で、ルカが余裕がある様子で話しかけてくる。
「モニカ。俺に遠慮したりすんなよ?」
「えっ……?」
「モニカは俺を持ち上げるために、自分を犠牲にしがちだからな」
「そっ……そうですか?」
じつのところモニカは、そのつもりでいた。なにせ推しがこれほど頑張っているのだから、それなりの成果を得てほしい。高得点はキープしつつも満点は目指さないつもりでいた。
「モニカの学力をすぐに追い抜けるなんて思ってねーし。でも、いつかは追い抜くつもりだからよ。モニカも本気で、俺に追い抜かれないよう頑張ってくれ。目標が低かったらつまんねーだろ?」
モニカに教えてもらうのは恥だと思っていたルカが、モニカを目標に据えるほど、勉強に対して真剣に向き合うようになるとは。
推しの成長に、心がジーンとする。
「ルカ様のやる気に繋がるのでしたら、私も気を抜けませんね」
「おう。今日はお互いに、全力を尽くそーぜ」
ルカは、モニカに向けて拳を差し出しながら、笑みを浮かべる。本番前の気合入れのようだ。男性同士の友情のようなやり取り。これも幼馴染の特権か。
「はいっ。頑張りましょうね!」
モニカも拳を作ると、ルカの拳にこつんと合わせた。
その数日後。廊下には、学年ごとに定期試験の結果が張り出されていた。
登校して早速、モニカはリアナに連れ出されてそれを見に行った。
すでに掲示板の前には、ほかの三人もそろっており、モニカとリアナの登場で一斉に振り返った。
「やったぜモニカ!」
ルカは嬉しそうに、モニカへと肩を組んでくる。かなり高揚している様子なので、どうやら成績が良かったようだ。
(もしかして、ルカ様が一位なのかしら!)
モニカも本気でがんばったが、公爵になると決めてからのルカの熱意は、凄まじいものがあった。
それにモニカは、勉強ができるといっても基礎は独学の部分が多い。ルカが本気になれば、あっという間に追い抜かれる自信はあった。
「ルカ様、もしかして……!」
モニカも嬉しくなりながら、掲示板を確認しようとした。けれど目の前にブラウリオが立ちはだかる。
彼はどうやら一位を取れなかった様子。笑顔に不釣り合いな冷たい視線がモニカに突き刺さった。
リアナを独占する権利を得られず、ブラウリオはご機嫌ななめのようだ。
けれどその不満をモニカへ向けるのは、筋違いではなかろうか。モニカはそう思ったが――
「今回は、完敗だよ。おめでとう、モニカ嬢」
「おめでとうございます、モニカ嬢。今度、勉強法を教えていただけませんか?」
続いてロベルトも、淡々と賛辞を送ってくる。モニカはぽかんと、二人を見上げる。
「あの……。ルカ様が一位なのでは?」
「んなわけねーだろ。見てみろよ!」
ルカは人をかき分けるようにして、モニカを掲示板の前へと誘導した。
やっと見えるようになった順位を確認したモニカは、目を丸くして驚く。
一位 モニカ・レナセール
二位 ロベルト・スエロ
三位 ブラウリオ・ アグア・プロテヘル
四位 ルカ・フエゴ
五位 リアナ
(うそっ。私が一位……?)
これは一体、どういうことだ。モニカはこの貴族学園に入学するまでは、ひたすら教科書を読んだり、自分で調べただけの独学。
一流の家庭教師がついているであろう、ロベルトとブラウリオよりも成績が良いとは信じられない。
「モニカ嬢には優秀な家庭教師がついているようだね」
「そうですね……。先生は優秀な方ですわ……」
(教わったことは、あまりないけれど……。それより、もしかしてあれのせいかしら……)
実のところ、モニカは前世の記憶を思い出してから、勉強への理解力が上がったように思っていた。なにせ、前世では高校生だったので勉強に真っ盛りな年代。その感覚が戻ってきたおかげかもしれない。
(まさかこんなところで、チートみたいな技を使ってしまっていたなんて……)
けれど、世界が違えば学ぶ内容もだいぶ変わってくる。手探りの独学から、効率的な勉強法を得ただけのこと。モニカが頑張って勝ち取った一位には変わりない。
「モニカちゃん、おめでとう! モニカちゃんが一位で嬉しい!」
「ありがとうございますリアナちゃん。私も嬉しいですっ」
勉強とは孤独におこなうものだと今までのモニカは思っていたが、今回は皆で得意な部分を教え合ったりして、協力する楽しさを知れた。
そして大勢と競争するのも、モニカにとっては初めてのこと。頑張った結果がこうして順位に出るのは、なんとも達成感を得られる良い気分だ。
ルカの公爵家でのイメージを良くするために始めたことだが、ルカのおかげで貴重な体験をさせてもらった。
モニカは胸がいっぱいになりながら、祝福してくれた仲間たちを見回した。
しかし皆は、なぜか何か言いたげにモニカに注目している。
(どうしたのかしら……)
おろおろとリアナに助けを求める視線を送る。するとリアナは、食い気味にモニカの手を握りしめた。
「それで、モニカちゃん! 誰を一日、独占したいの?」





