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【三章】モブ令嬢の、幸せ推し活な学園生活 ~モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!~  作者: 廻り
第一章 『女神の再来』だと精霊に告げられましたが、それより推しに認知されたい
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32 フエゴ公爵家の後継者2


「……モニカ。甘えられんの好き?」


(……へ?)


 ルカは、後継者のことで悩んでいるのかとばかり思っていたのに。この質問はなんだろう。


「好き?」


 モニカが戸惑っていると再度、尋ねられる。どうしても答えなければならないようだ。


「えっと……。相手によると……思います」

「なんだよ、条件付きかよ……。ブラウリオのやつ……」


 不満そうな顔でルカは呟いている。どうやらブラウリオに何か言われたようだ。


「んじゃ、俺は?」


(ルカ様、甘えたいのかしら……?)


 先ほどの勉強会で甘えてきたばかりなのになぜ、わざわざ確認を取ってくるのだろう。よくわからないが、ルカも勉強や後継者問題でかなり疲れているようだ。


「ふふ。嫌ではありませんよ。なんなら、抱きしめて差し上げましょうか?」


 慰めるための良い言葉は思い浮かばないが、冗談を言って暗い気分を和らげるくらいはモニカにもできそうだ。

 笑わせるつもりでモニカは、オーバーリアクションぎみに両手を広げて微笑んで見せた。


 ルカならば「そこまで望んでねーよ」と笑ってくれると思ったが。

 彼は「ん」と短く返事をしながら、モニカに抱きついてきた。


(…………っ!)


 モニカは今さら気がつく。彼は本気で甘えたかったからこそ、わざわざ確認をしてきたのだ。

 そして……、ここまでしたくなるほどルカの心は疲れていると。


「…………俺。イサークに嫌われてたんだな」

「ルカ様……」


(ゲームのルカ様もそうだったわ。事件の犯人がイサークだと知るまで、ずっと兄貴分として慕っていたのよね……)


 公爵家の後継者として争う仲ではあったが、人当たりの良いイサークはいつもルカを気遣い、時には勇気づけてきた。

 ルカは後継者として期待されないことへのいきどおりを感じつつも、イサークなら仕方ないと諦めの気持ちも持っていた。

 だからこそイサークがルカを(おとしい)れようとしていたと気がついた時には、大変なショックを受けていた。


「昔、イサークに言われたことがあるんだ。知力面はサポートするから、一緒に公爵家を守ろうって。だから俺は剣術を頑張ったのに……」


(そんな話をしていたのね。ゲームにはないエピソードだわ……)


 そうして信頼を得ながら、ルカが勉強しないように仕向けていたのだろうか。


 ゲームでは、襲撃事件で濡れ衣を着せられたルカを、ヒロインが救い出すことにスポットが当てられていた。そのため、イサークがどのようにルカを利用していたかまでは、モニカは詳しく知らない。

 ルカが話してくれたことで、悪役の手口を知ることができたが、これから起こる事件を知らないルカは、これからどうしたいと思っているのか。


「ルカ様は今も、そう願っているのですか……?」

「あいつはもう、一緒に守りたいなんて思っていないんだろうな……」


 本当は一緒に公爵家を守りたことがひしひしと伝わってきて、モニカも心が痛い。同時に、ルカは全てを諦めてしまいそうな気がして、心配になる。 


「それではルカ様は……?」

「どうせ俺が親父に選ばれるなんて思ってなかったし、イサークに任せるしかねーな。騎士団長になれないのは残念だけどさ」


 ルカがなりたいのは騎士団長のほう。けれどフエゴ公爵家では、公爵位を継いだ者が騎士団長も兼任する。


 ルカはモニカの肩に顔を埋めて、諦めたように空笑いする。今にも泣きそうな雰囲気で、我慢しているようにしか見えないのに。


「ルカ様……、本当は悔しいんですよね? 無理に諦めたりしないでください」

「……わかった風なこと言うなよ」

「わかってますよ。ルカ様は昔からそうでしたもの。お父様に認めてもらえず、悔しくて、寂しくて、いつも生垣の隅で泣いていたではないですか」


 今のルカは、まるであの時のようだ。いつもは粗暴で自己中心的なくせに、本当に辛い時はひっそりと悲しむのがルカだ。


「……恥ずかしいこと思い出すなよ。バケットサンド食いたくなるだろ」

「ふふ。後で作って差し上げますわ」


 恥ずかしくてモニカに甘えていられなくなった様子のルカは、モニカから離れて「いっぱい食うからな」と不貞腐れたような顔をする。

 たくさん食べて元気が出てくれるなら、いくらでも作ってあげたい。


「ルカ様。お腹いっぱい召し上がったらもう一度、考えてみてください。誰かに遠慮して、ルカ様が夢を諦める必要はないと思うんです」


 正々堂々と頑張る分には、ルカに与えられた正当な権利だ。ましてや相手はイサーク。推しを利用しようとしている者のために、ルカに夢を諦めてほしくない。


「私もお手伝いしますから、一緒に夢を叶えませんか?」


 モニカの提案に、ルカは不思議そうに見つめる。


「……モニカは、俺が公爵になったら嬉しいのか?」

「はいっ。公爵にもなっていただきたいですし、騎士団長にもなっていただきたいです。他にもルカ様にはいろいろと期待しておりますわ」


 そしてもちろん、守護者にもなってもらいたい。そのすべてを手に入れたルカは、多くの騎士の憧れの的となる。その姿をモニカは見たいのだ。


 ルカはしばしモニカを見つめていたが、決心したようにうなずく。


「そんなに見たいなら、全部見せてやるよ。その代わり――モニカは裏切んなよ」

「わあ! もちろんです!」


 この時の約束が、のちにおかしな方向へと進むきっかけとなるが、モニカがそれを知るのはまだ先の話だ。



次回の更新日ですが、年末年始はお休みをいただきまして、年明け1月5日金曜日の更新となります。

来年もよろしくお願いします!

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◆人物紹介◆

モニカ・レナセール
伯爵令嬢。乙女ゲームのモブ

カリスト・ビエント
教師・男爵家の養子。乙女ゲームの攻略対象(初心者用)

ルカ・フエゴ
公爵令息・騎士。乙女ゲームの攻略対象

リアナ
聖女・平民。乙女ゲームのヒロイン

ブラウリオ・ アグア・プロテヘル
王太子。乙女ゲームの攻略対象

ロベルト・スエロ
侯爵令息・宰相の息子。乙女ゲームの攻略対象

ミランダ・セーロス
公爵令嬢。乙女ゲームのルカの婚約者

ビアンカ・ソルダー
辺境伯令嬢。乙女ゲームのロベルトの婚約者

イサーク・リアマ
男爵・ルカの従兄。乙女ゲームの悪役

ルー
火属性の精霊

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◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

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【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


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