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【三章】モブ令嬢の、幸せ推し活な学園生活 ~モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!~  作者: 廻り
第一章 『女神の再来』だと精霊に告げられましたが、それより推しに認知されたい
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30 勉強会2


(ルカ様……、『男のプライド』どうしたんですか!)


 女の子に教えてもらうのは恥と考えているはずのルカが、なぜこのような行動に出ているのか。

 急な推しの心境の変化についていけず、モニカはペンを走らせる手を完全に止めて固まっていた。


(でも……、これは良い変化よね)


 もしかしたらルカは、このメンバーになら恥を晒しても良いと思えるほど、気を許せるようになったのかもしれない。

 それならばきっと、モニカの計画も実行できる。ちょうどルカが勉強しているのは、女神と精霊の授業の歴史部分。


「女神と精霊の授業でしたら、リアナちゃんが一番お詳しいですわ。一緒に教えていただきましょう」


 貴族の勉強についていけていないリアナだが、彼女が唯一得意としているのが女神と精霊の授業だ。これだけは、神殿で毎日のように教典を読まされているので、ここにいる誰よりも詳しい。

 名前を呼ばれたリアナは、向かいの席からモニカたちに顔を向けた。


「あっ、うん。それなら教えられるわよ?」


 リアナはこころよく引き受けてくれるようだ。


(やったわ。これで、ルカ様の信頼度が上がるはずよ)


 優しく教えるリアナを見れば、きっとルカはさらなる信頼を感じるはず。


 そう、モニカが喜んだのも束の間。

 モニカがペンを持っているほうの腕に、ルカがぺたんっと頬を乗せてきた。


「あっちの席に移動するのめんどい。モニカが教えて」


 そして上目遣いにモニカを見るその姿はまるで、飼い主に甘える犬のようではないか。


(ルカ様、それは反則的な可愛さですっ……!)


 頭をよしよしなでたい。勉強を頑張ってえらいと褒めてあげたい。

 そんな衝動に駆られていると、リアナが小さくクスッと笑った。


「ルカはモニカちゃんがいいみたい。よろしくねっ」


 そう述べたリアナは、意味ありげにモニカへウインクする。


(えっ……。そのウインク、どういう意味ですか……!)


 リアナは何かに配慮したようだが、彼女へ配慮したいのはモニカのほうだ。


(せっかくルカ様の信頼度を上げるチャンスなのに。気がついてくださいリアナちゃん……!)


 モニカは必死に目で訴えてみたが、それに反応したのはリアナではなくブラウリオだった。


「たまには俺も、リアナに教えてもらおうかな」

「うん、もちろんっ!」


 嬉しそうに頬を紅潮させるリアナと、勝ち誇ったようにモニカへ流し目を送るブラウリオ。またしてもモニカの推し活は、ブラウリオに邪魔されたようだ。

 モニカは悔しく思いながら、二人を見つめる。


「モニカ、教えてくんねーの?」


 ルカはしびれを切らしたのか、少し不満そうな顔でモニカの服をひっぱりながら注意を引く。幼い態度だがそんな姿すら可愛くて、モニカの悔しさはすぐに溶けていった。


「はい……教えて差し上げますぅ」


 推し活は失敗したけれど、ルカに勉強を教えられて嬉しい。矛盾した気持ちと戦いならモニカは勉強会を続けた。



 ――その帰り。

 馬車乗り場へ向かうために、モニカたちは王宮の回廊を歩いていた。


「今日も勉強、頑張ったよね。次の定期試験は私たちが上位を独占しちゃうかも!」


 リアナは毎日の勉強に手ごたえを感じているのか、試験に自信があるようだ。


「そうだね。もちろん一位は俺がいただくけど」

「殿下には負けませんよ。僕には日頃の地道な積み重ねがありますので」

「試験までにはお前らなんて、軽く追い抜いてやるよ」

「ふふ。私も頑張ります」


 自信があるのはリアナだけではない。この場にいる五人とも感じていることだ。

 実際ルカも、初めの頃よりは格段に教科書の内容を理解できるようになっている。

 攻略対象なだけあり、彼もそれなりにハイスペック。やる気さえあれば、他の攻略対象に負けない成績を納められるはずだ。


(もしルカ様の成績が良かったら、私からもお祝いを用意しようかしら)


 カリストからも、ご褒美を用意すると効果的だとアドバイスをもらっている。もしルカが一位になれなかったとしても、良い成績だったことをお祝いすれば、次のやる気に繋がるかもしれない。


 何が良いだろうと考えながら歩いていると、向かい側から誰かが近づいてきた。

 その人物は、フエゴ騎士団の制服を身にまとっている。


(あれは……!)


 相手の顔を確認したモニカに緊張が走る。

 彼は、『騎士団長襲撃事件』の犯人になる予定の人物。

 『ルカの従兄』イサーク・リアマ男爵だ。

 モニカにとっては目下、警戒しなければならない相手。


 イサークは五人の前まで来ると、ブラウリオに向けて挨拶した。


「王太子殿下にご挨拶申し上げます」


 彼は人当たりが良い性格。ブラウリオとも気軽に挨拶を交わせる間柄のようだ。


「久しぶりですね、リアマ男爵。王宮に用事ですか?」

「はい。フエゴ公爵の代理で、所用を済ませに参りました」


 イサークはただのお使いのような雰囲気でそう述べたが、その場を凍りつかせるには十分な言葉だった。

 公爵の代理とは、子どものお使いのように誰にでも頼めるものではない。本来は妻か、息子、娘にしか頼まないような大切な役割だ。

 そんな大役を甥に任せるとなると、後継者問題に関わってくる。それをルカの前で堂々と伝えるとは……。


(ルカ様……)


 心配になったモニカはちらりとルカに視線を向ける。彼はやはり悔しそうな顔をしていた。

 推しにこんな顔をさせるなんて、イサークが許せない。

 モニカは何か一言、言い返してやりたくなったが、その前に口を開いたのはブラウリオだった。


「公爵の代理? 騎士団長の代理ではなくてですか?」


 その言葉にイサークは、爽やかな顔をこわばらせた。


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◆人物紹介◆

モニカ・レナセール
伯爵令嬢。乙女ゲームのモブ

カリスト・ビエント
教師・男爵家の養子。乙女ゲームの攻略対象(初心者用)

ルカ・フエゴ
公爵令息・騎士。乙女ゲームの攻略対象

リアナ
聖女・平民。乙女ゲームのヒロイン

ブラウリオ・ アグア・プロテヘル
王太子。乙女ゲームの攻略対象

ロベルト・スエロ
侯爵令息・宰相の息子。乙女ゲームの攻略対象

ミランダ・セーロス
公爵令嬢。乙女ゲームのルカの婚約者

ビアンカ・ソルダー
辺境伯令嬢。乙女ゲームのロベルトの婚約者

イサーク・リアマ
男爵・ルカの従兄。乙女ゲームの悪役

ルー
火属性の精霊

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◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


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