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【三章】モブ令嬢の、幸せ推し活な学園生活 ~モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!~  作者: 廻り
第一章 『女神の再来』だと精霊に告げられましたが、それより推しに認知されたい
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23 火属性のオーブ2


 ブラウリオにしてやられた気がする。彼は日頃から、ルカとリアナが仲良くならないよう間に入っていた。それをモニカは見てきたし、それがゲームでの彼の性格でもある。


 今朝の彼の態度を見たのだから、もっと慎重に作戦を練るべきだったのだ。

 ゲームのミッションだから、確実に進められる。そんな考えは甘すぎたようだ。


「ルカ様っ。やっぱりリアナちゃんと一緒に探しませんか? 二人だけでは……」


 今からでも軌道修正したい。そんな思いで提案すると、ルカは不機嫌な表情でモニカに振り返った。


「俺と二人は嫌なのかよ」

「あの……。そういうわけでは……」


 推しと二人きりで、手まで繋いでもらえている。自分の気持ちだけを考えれば、非常に嬉しい状況だ。

 ただ、せっかくのリアナのミッションが、失敗に終わるのが残念なだけ。

 そんなモニカの気持ちなど知らないルカは、やんちゃな笑みを浮かべる。


「ならいいじゃねーか。あいつらより先に見つけて、驚かそうぜ」


(うーん……。もしかしてそれでも良いのかしら?)


 モニカはゲームの設定を思い出す。

 ゲーム上のこのミッションは、迷路のようになっている森から時間内に目的のオーブを探すというもの。

 探す過程は、ただの迷路ゲームだ。


 大切なのは、オーブを見つけてから。その場面さえ、二人が居合わせればミッション自体はクリアできそうな気がする。


 ルカは幼馴染と探検がしたいようだし、ブラウリオも今は警戒心が強い。下手にルカとリアナをくっつけようとするより、別々のほうが人間関係のバランスを崩さずに済みそうだ。


 ルカを守護者にすることも大切だけれど、リアナはブラウリオが好きだ。友達の恋を応援したいモニカとしては、下手にブラウリオの好感度が下がるようなこともしたくない。


 結局、ルカの提案に乗ったモニカは、二人で森の中を散策し始めた。


「ルカ様、あちらにオーブがありますわ!」

「すげー。これで三つ目だぜ。モニカ見つけんのうまいな」


 モニカがオーブの場所を指さすと、ルカは感心したようにモニカを見つめる。


「えへへ……。それほどでも」


 なにせ、モニカはオーブの位置を把握している。他のオーブはどの属性だったか曖昧だが、火属性だけはしっかりと覚えている。

 この森はゲームほど迷路っぽくはないが、大体の雰囲気と方角さえ合っていれば意外と簡単に見つけられた。

 ただ、最短距離で火属性のオーブへ向かうと怪しすぎるので、先ほどからフェイクでハズレのオーブも見つけている。 


「今度こそ、火属性を当ててやるぜ」


(はい。それ、火属性です)


 ルカは気合を入れてオーブに触れる。するとオーブは、真っ赤に色が変化した。


「わ~! 火属性ですよ、やっと見つけましたね」

「よっしゃ!」


 握りこぶしを作って喜んでいる推しが、可愛すぎる。

 彼が火属性を発現させた時は、モニカが一方的に喜びを分かちあっていたが、今日は一緒に喜びを共有できる。幼馴染役は本当に最高だ。


「それでは、リアナちゃんたちを呼びに――」


 モニカが歩き出そうとすると、ルカは今からイタズラでもするかのような笑みを浮かべる。


「待てモニカ。いいもの見せてやるよ」

「えっ?」


 ルカがもう一度オーブに触れると今度は、オーブの周りにつむじ風が起こり始める。


(これは…………!)


 風が起こるのは、魔力をオーブに込めている証拠。

 その結果、何か起こるか察したモニカは、慌ててルカのもとへ駆け戻った。


 これが成功すると、火属性の精霊が召喚される。

 つまり今回のミッションにおいて、迷路ゲームクリア後の大切な部分。精霊を召喚することができればミッションクリアだ。


「ルカ様っ、だ――」


 モニカが止めようとした直後。つむじ風は飛散するように消え、それと同時に、オーブの上へぴょこっと精霊が出現した。


(ああ……。遅かったわ……)


 まさか推しに、推し活を阻止されるとは……。モニカは泣きそうな気分で召喚された精霊を見つめる。


「精霊さん……、可愛いです……」

「だろ? 手、出してみ」


 ルカは精霊をすくい上げると、モニカの手のひらへと乗せる。

 召喚する際のルカの口ぶりだと、これを見せたくてわざわざ召喚してくれたようだ。


「精霊に触れられるなんて、思ってもみなかったです」

「さっき言ったじゃねーか。一番に見せてやるって」


 確かにモニカが属性無しだとわかった際に、ルカはそのようなことを言ってくれた。

 それがまさか、こんなに早く叶うとは。 


「もしかして、そのために連れてきてくださったのですか?」

「まあな。俺の精霊にするには、まだ時間がかかるからさ」


 先に、モニカとリアナを引き離そうと提案したのはブラウリオだった。その時は面倒なので受け入れるつもりはなかったルカだったが、モニカに精霊を見せる約束をしてから気が変わった。っというのは、モニカの知らない事情だ。


 彼はこれから、精霊と契約できるまで何度もここを訪れることになる。ゲームではだいたい、二年生になってから。

 一年以上も待たせることなく、ルカはこうして約束を果たしてくれた。優しい推しがやはりモニカは大好きだ。


「ありがとうございます、ルカ様」


 推しの好意に甘えてモニカは、精霊をぷにぷにと触れて楽しんでみた。人懐っこい精霊のようで、触れられるたびに嬉しそうに指にまとわりついてくるのが、この上なく可愛い。

 けれどモニカは、ふと指を止める。


(あれ……? この火属性の精霊さん、あの時の子じゃ……?)


 精霊にどの程度、個体差があるのかはよくわからないが、モニカが見た精霊もこのような見た目だった気がする。


 疑わしく思いながらじっと見つめると、精霊は慌てたようにモニカの手から、すーっと消え去った。


「あっ。消えちゃった」

「おかしいな。ブラウリオたちが召喚した時は、こんなんじゃなかったけど」


 ルカは不思議そうにモニカの手を見つめる。けれどモニカにはわかる。あの精霊は逃げたのだ。あれから姿を見せていなかった彼らなので、気まずさでも感じたのだろうか。


「モニカの存在感が薄いせいじゃねー?」

「もうっ、ルカ様!」

「冗談だよ。もっかい召喚するから、あいつらも連れてこよーぜ」

「ふふ。次は消えない精霊さんをお願いしますね」



 ――モニカとルカが去って行く後ろ姿を、水属性の精霊、土属性の精霊、風属性の精霊が木の陰から覗いていた。

 彼らは非常に怒っている。


「火属性だけずるい!」

「うらやましすぎる!」

「嫉妬で病みそう!」


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◆人物紹介◆

モニカ・レナセール
伯爵令嬢。乙女ゲームのモブ

カリスト・ビエント
教師・男爵家の養子。乙女ゲームの攻略対象(初心者用)

ルカ・フエゴ
公爵令息・騎士。乙女ゲームの攻略対象

リアナ
聖女・平民。乙女ゲームのヒロイン

ブラウリオ・ アグア・プロテヘル
王太子。乙女ゲームの攻略対象

ロベルト・スエロ
侯爵令息・宰相の息子。乙女ゲームの攻略対象

ミランダ・セーロス
公爵令嬢。乙女ゲームのルカの婚約者

ビアンカ・ソルダー
辺境伯令嬢。乙女ゲームのロベルトの婚約者

イサーク・リアマ
男爵・ルカの従兄。乙女ゲームの悪役

ルー
火属性の精霊

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◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


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