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【三章】モブ令嬢の、幸せ推し活な学園生活 ~モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!~  作者: 廻り
第一章 『女神の再来』だと精霊に告げられましたが、それより推しに認知されたい
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16 好感度アイテムの効果2




 ブラウリオが、身だしなみを整えるために洗面所へ向かうと、すでに先客のルカが鏡を覗き込んでいた。


「ルカも身だしなみを気にすることがあるんだな」

「うっせーな」


 話しかけるなという態度でルカは返事したが、いつもよりも声色が明るい。

 何かあったのだろうか。ブラウリオは不思議に思いながら彼を観察する。するとルカが熱心に、胸ポケットを気にしていることに気がつく。

 そこには、フエゴ公爵家の紋章が入ったハンカチが、胸ポケットの校章を隠すように垂れ下がっていた。


 何に反抗しているんだ?

 ルカのことを、反抗期真っ盛りだと思っているブラウリオはそう考えたが、よく見れば本職が挿したにしては雑な刺繍。


「もしかしてそれ……、女性からのプレゼント?」

「まぁな」

「驚いたな。ルカが女性からのプレゼントを受け取るとは思わなかったよ」


 粗雑で貴族の品位に欠ける彼でも、意外と女性には人気で、たびたびプレゼントを贈られている場面を目にする。けれどルカはいつも、無視するか「いらねー」で済ませていた。


 そんなルカがプレゼントを受け取ったなら、特別な女性に違いない。

 ブラウリオは真っ先にリアナを思い浮かべる。リアナはルカを守護者にしたがっていた。


「もしかして、リアナからのプレゼント?」

「ちげーよ。お前も相当、嫉妬深いな」


 王太子に対して、このような態度を取るのはルカくらいなものだ。


「……それなら誰からなんだい?」

「モニカだよ。他にいねーだろ」


 モニカという名の令嬢はいただろうか。

 学園の学生の名前と家門は全て覚えていたつもりだが、ブラウリオには心当たりが全くなかった。






 お昼休み終了間際。モニカはとぼとぼと教室へ向かって歩いていた。

 本当なら好感度が上がったルカと一緒に、手を繫ぎながら教室へと入る予定だったが。


「俺、先に行くな」


 ルカはそう言い残して、先に時計塔を出てしまったのだ。


 確かにあの時はスチルまで発生したのだから、アイテムは受け取ってもらえた判定になっている気がする。けれど、彼の素っ気ない態度を見る限り、好感度が上がったようには思えなかった。


 バケットサンドを毎日渡しても変化はないし、結局のところモブであるモニカがイメージアップアイテムを使用しても、攻略対象の気持ちに変化は現れないのかもしれない。本来それらのアイテムは、ヒロインのためのものだから。


(それでも、ルカ様の素敵なスチルも見られたし、渡せて良かったわ)


 ルカに勉強させるためには、別の方法を考えれば良い。そう思いながらモニカは教室へと戻った。




 席にはすでにルカが戻っていた。今日はサボるのかと思えば、そうではなかったようだ。

 両足を机の上に乗せ、両腕を頭の後ろで組んで昼寝しているようだ。


「午後の授業も、がんばりましょうね」


 そう声をかけながらモニカは隣に座ってみたが、やはりルカの反応はない。予想どおり好感度は上がらなかったようだ。


 しかし、ふとモニカはルカの胸ポケットに目を留める。そこには先ほどモニカが渡した、ハンカチが。

 わざわざ紋章が見えるように畳み直して、丁寧にポケットに納められている。


(ふふ。ルカ様、そんなに気に入ってくださったのかしら)


 推しの可愛い一面も見ることができた。本来の目的には至らなかったが、一生懸命作った甲斐は十分すぎるほどあった。


 幸せな気分でモニカは、授業の準備を始める。教科書とノートを机の下から取り出して、それからルカの準備もしなければ。


(ルカ様ったら、またこんなに制服を乱して)


 次の授業の先生は服装に厳しい。注意されないよう、ルカのシャツのボタンを留めようと手をかけた。


 その瞬間。


 がしっと、ルカに手首を掴まれて、モニカは心臓が飛び出そうなほど驚いた。


「ル……ルカ様…………?」

「やっと来たな。モニカ」


 にやっと笑みを浮かべたルカ。

 その金色の瞳は、確実にモニカを捉えていた。


(えっ、まって。好感度は上がらなかったんじゃなかったの?)


 一瞬前まで、モニカに気が付いていない様子だったのに、なにがどうなっているのだ。


 そんな疑問を、ゆっくりと考える暇はモニカには与えられなかった。

 なぜならルカの言葉に反応して、教室にいる全員が同時に、モニカとルカに注目したから。


「あの子、誰かしら?」

「ルカ様と親しくしていらっしゃいますわ」

「ルカ様のお隣は、先約があったはずでは……」


 ひそひそと、他のモブ令嬢たちの声が聞こえてくる。このような時だけ声が大きく聞こえるのは、ゲーム的な事情だろうか。


(どうしよう……めちゃくちゃ注目されているわ。っというか私、ルカ様の服を脱がせているように見えてない? ひんしゅくを買っていないかしら?)

 

 今世で生まれてこのかた、注目を浴びたことがないモニカは、こんな時はどうしたら良いのかわからない。カチコチに固まっていると、リアナがこちらへやってきた。


「ねえねえ! その子ってもしかして、ルカが席を確保していた子なの?」


 ヒロインらしく好奇心旺盛にキラキラした瞳でリアナが尋ねると、ルカは「ああ」と肯定する。


 そしてルカは、モニカの肩を抱き寄せながら、クラスメイトたちを見回した。


「俺の可愛い幼馴染だ。お前ら、虐めんなよ」


 なぜか女子たちから悲鳴があがり、リアナは嬉しそうに「よろしくね!」とモニカに握手を求めてくる。


(ええ……? 私、モブなんですけど?)


 注目を浴びただけでも困っていたのに、雲の上の存在であるヒロインはフレンドリーで。そしてなぜかモニカは、推しの腕の中。


 この状況を、冷静に受け止められる者などいるだろうか。少なくともモブ人生のモニカには難易度が高すぎる。


 思えばルカは、モニカをクラスメイトに紹介したがっていた。それを頭の中では理解し、嬉しく思っていたが、まさかこのような騒ぎになるとは夢にも思っていなかった。


 けれどルカは攻略対象。何をするにも注目を浴びる。そんな彼が、女の子の幼馴染を紹介したら、周りが騒がないはずがないのだ。


 ルカに勉強をさせるために上げた好感度が、まさかこのような効果を得るとは。

 モニカはどうやら『モブ』から、『ルカの幼馴染』に昇格したようだ。





 翌朝。モニカはまたも、信じられない光景を目にした。


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◆人物紹介◆

モニカ・レナセール
伯爵令嬢。乙女ゲームのモブ

カリスト・ビエント
教師・男爵家の養子。乙女ゲームの攻略対象(初心者用)

ルカ・フエゴ
公爵令息・騎士。乙女ゲームの攻略対象

リアナ
聖女・平民。乙女ゲームのヒロイン

ブラウリオ・ アグア・プロテヘル
王太子。乙女ゲームの攻略対象

ロベルト・スエロ
侯爵令息・宰相の息子。乙女ゲームの攻略対象

ミランダ・セーロス
公爵令嬢。乙女ゲームのルカの婚約者

ビアンカ・ソルダー
辺境伯令嬢。乙女ゲームのロベルトの婚約者

イサーク・リアマ
男爵・ルカの従兄。乙女ゲームの悪役

ルー
火属性の精霊

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◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


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