表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【三章】モブ令嬢の、幸せ推し活な学園生活 ~モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!~  作者: 廻り
第三章 モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!
120/136

120 モニカの守護者13


「エピソード……。俺には無いと話していなかったか?」


 その辺りの説明はカリストにしてある。攻略対象にはそれぞれエピソードが存在し、それを攻略しなければいけないが、初心者用キャラである彼にはそれが存在しない。


 ルカのエピソード内容が変更されたように、必ずしもゲームに忠実ではないが、エピソードらしきものをクリアすれば、モブと女神を調節するバーが動くので、エピソードとして存在していることは確かだろう。


 そして、この苦難もエピソードと考えるならば――。


「今回のエピソードは、ブラウリオ殿下のものだと思います」

「ブラウリオの……?」

「殿下のエピソードは、とても曖昧な内容でした。殿下は、自分が王位を継ぐのは相応しくないと悩む時期がありまして、ヒロインが先生に相談することで、解決の糸口を見つけるんです」


 カリストが王族であることは巧妙に隠されていたのでモニカは今まで、ブラウリオが悩んでいた理由に関しては気にもしていなかった。


 けれど今なら理解できる。

 ブラウリオは、大好きな兄を差し置いて自分が王位を継がなければいけないことに悩んでいたのだ。

 そして、兄の助言によってその悩みから脱却する。


 きっと今が、そのエピソードの最中だ。

 リアナよりもモニカのほうが神聖力が強いことが発覚したので、国王はブラウリオとリアナの地位を守るために、カリストとモニカを拘束までした。


 もとからカリストが王太子ならば、このような事件は起きなかった。

 自分の地位を守るために兄が犠牲になっている状況を、ブラウリオは悩んでいるはずだから。


「おそらく、ゲームには存在しない私がヒロインよりも目立ったせいで、国王陛下を余計に刺激して、ブラウリオ殿下を悩ませてしまったんです。そのせいで、被害を受ける予定ではなかった先生にまで……」


 女神であることを公表すれば、ゲームにはない困難が立ちはだかるであろうことは覚悟していた。

 それでも皆の理解を得てここまでこられたが、まさかカリストの心を傷つける事態になるとは思いもしていなかった。

 彼が王族であると気づいた時から、もっと慎重に動くべきだった。


 モニカが思いつめた表情でうつむいていると突然、カリストに抱き寄せされる。


「モニカのせいではない。国王と王妃はずっと俺の呪いを恐れていて、いつか俺が復讐して王位を簒奪すると思っているんだ。たまたまブラウリオのエピソードにあいつらの恐怖心が乗っただけさ。――モニカが言うとおり、エピソードの影響だと思えば、悲しむ必要などないな」


 慰めていたつもりが、いつの間にか慰めらる側になってしまった。

 今、辛いのはカリストのほうなのに、もっとしっかりとしなければ。


「ブラウリオ殿下のエピソードをクリアするつもりで、今回も乗り切りましょう」


 笑みを浮かべながらカリストを見ると、彼は真剣な表情を浮かべながらモニカから離れる。


「いいや。今回のエピソードは俺のだと思うことにする」

「え?」

「ゲームの俺にエピソードがない理由は、初心者用であることのほかに、ブラウリオのエピソードがクリアされることで俺の悩みも消えるからだ。今までの俺は、ブラウリオが王位を継ぐことが望みだったから」


 なるほどと感心しながらモニカは彼を見つめる。二人の悩みは同じだからわざわざ二度もエピソードを繰り返す必要はなかったと。

 けれど、自分のエピソードにするということは、二人の悩みが異なることになる。モニカの疑問の答えをカリストが続けた。


「けれど俺はもう、影を潜めて弟の幸せを願うだけの人生ではいられない。モニカと一緒に人生を歩むには、女神様を守るに相応しい権力が必要だ。簡単に切り捨てられるような男爵家の養子でなはく、王族としてモニカを守りたい」


 モニカは驚きながらカリストを見つめた。

 彼がこれまで頑なに拒んでいた、呪いの解除。それを今、彼は自ら望んでいる。


「良いのですか……? それだとお二人が……」

「今の時点で俺が王族として復帰することになれば、ブラウリオを余計に悩ませてしまうな。だが俺が求めているのはモニカを守れる地位であって、王位ではない。ブラウリオのエピソードもちゃんとクリアできる」


 カリストにはもう迷いはないようだ。

 切実に望んでいるその表情にモニカも真剣にうなずき返す。


「先生の呪いを解くためには、さきに皆を守護者にしなければなりませんわ。それに、陛下が先生を息子だと認めざるを得ないだけの状況も。皆と話し合う必要がありますね」

「だが裁判が終わるまでは会えそうにないな。看守に賄賂を渡してブラウリオを呼ぶしか……」


 カリストの案も悪くないが、モニカはにこりと笑みを浮かべながら片耳に垂れ下がっているピアスを指で揺らしてみせる。


「ふふ。そんな危険を冒さなくても大丈夫ですよ。先生はこちらをお忘れですか?」


 ルカとお揃いのピアス。これを使えばルーにお願いしてルカと連絡を取り合える。

 名案だとモニカは思ったが、なぜかカリストはため息をつく。


「嫉妬の対象に助けられる日が来るとはな」

「ピアスに嫉妬していたんですか?」

「モニカの最愛の推し(・・・・・)からのプレゼントだからな」


 そしてカリストはなぜか、ピアスをしていないほうのモニカの耳たぶをふにふにと指で触り出す。


「こちら側は、俺のために残してあるんだろう?」


 そして耳元でそう囁いてから、今度は唇と舌で耳たぶを弄び始めた。

 今までこんなことされた経験がないモニカは、一瞬にして顔に熱を帯びる。


「せっ先生……!」

「答えてくれないのか?」

「そっそうです……。先生のために…………んっ」


 くすぐったすぎて思わず変な声が出たモニカは、慌てて口を両手で押さえる。


(同じことを願ったミランダ嬢も、こんな大胆なおねだりはしなかったのにっ)


 やりすぎだと思いながらカリストを睨むと、彼はくすくすと笑い出す。


「悪い、やりすぎた。モニカの反応が可愛くてつい」


 初心者用キャラなのに、「つい」でこんないちゃいちゃを繰り出さないでほしい。

 モニカは納得いかない表情を浮かべるが彼は、気にしていない様子。「モニカの許可も得られたし、早くここから出たいな」と、どのようなピアスがモニカに似合うだろうかと、楽しそうに考え始めた。

 何はともあれ、牢屋に入れられたばかり時よりだいぶ彼の心は回復したようで、モニカはほっとする。


 モニカとしても、早くここを出て通常の生活に戻りたい。

 そのためには裁判で優位に立たなければ。

 それを相談するためにルカのピアスに触れて、ルーを呼び出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◆人物紹介◆

モニカ・レナセール
伯爵令嬢。乙女ゲームのモブ

カリスト・ビエント
教師・男爵家の養子。乙女ゲームの攻略対象(初心者用)

ルカ・フエゴ
公爵令息・騎士。乙女ゲームの攻略対象

リアナ
聖女・平民。乙女ゲームのヒロイン

ブラウリオ・ アグア・プロテヘル
王太子。乙女ゲームの攻略対象

ロベルト・スエロ
侯爵令息・宰相の息子。乙女ゲームの攻略対象

ミランダ・セーロス
公爵令嬢。乙女ゲームのルカの婚約者

ビアンカ・ソルダー
辺境伯令嬢。乙女ゲームのロベルトの婚約者

イサーク・リアマ
男爵・ルカの従兄。乙女ゲームの悪役

ルー
火属性の精霊

gf76jcqof7u814ab9i3wsa06n_8ux_tv_166_st7a.jpg

◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ