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【三章】モブ令嬢の、幸せ推し活な学園生活 ~モブでしたが、女神として認められるよう皆と一緒にがんばります!~  作者: 廻り
第一章 『女神の再来』だと精霊に告げられましたが、それより推しに認知されたい
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12 ログインボーナス2


 翌日。今日は休日だというのに、モニカは貴族学園を訪れていた。というのも、昨夜にもう一度ログボについて考えたモニカは、ある結果にたどり着いていた。


 ルカから一日でも早くハンカチを受け取り、イメージアップアイテムを完成させるには、ログボを毎日しっかりといただく必要がある。

 そしてログボの特徴として、重大な事を思い出した。


 ログインボーナスとは毎日、地道にもらい続けるのがセオリー。

 ゲームによって仕様はさまざまだが、毎日ログインし続けると節目で良い物がもらえたりする。

 けれど逆に、一度でも貰う日を途切れさせてしまえば、振り出しに戻ってしまったり、節目で良い物がもらえなくなるのだ。

 ちなみにこの乙女ゲームは三十日間、休むことなくログインし続けるといつもより珍しい物がもらえる。


 ログボを切らしてはいけない。


 別に、ルカから高価なものを貰いたいわけではないが、これはオタクだった前世の(さが)のようなもの。


 ログボを切らしてはいけない。


 ログボでしか入手できないレアアイテムが手に入らなかったら、悔しいではないか。それが推しの限定アイテムだったりしたら、一生後悔する。


 ログボを切らしてはいけない。


 前世の思考回路がしきりに、そう諭すのだ。




 少しだけ本来の目的とズレてしまったモニカだが、毎日ログボをもらい続けることで、ハンカチを受け取れる確率は格段に上がる。

 そう思いつつ時計塔の扉を開けたモニカだが――


(でも考えてみたら、ルカ様が休日にいるはずないわよね……)


 勉強嫌いで隙あらばサボろうとする彼が、休日まで学園に来るとは思えない。


(ううん。ログインしたという事実が大切なのよ。きっと時計塔に登れば、記録として残るはずよ)


 都合の良い解釈でまとめたモニカは、せっせと時計塔に登り始めた。


 毎日登っているがこれが結構、足腰に負担がかかるのだ。三年間を終える頃にはきっと、ムキムキな太ももを得られるに違いない。

 今のモニカは、連日の筋肉痛と戦っている最中だが。


 それでもいつもなら貴族令嬢としての心持を忘れずに、それなりの姿勢を保っているが、今日は誰も見ている者はいない。

 最上階まで登ったモニカは疲れのあまり、ぱたりと床に寝ころんだ。


「はぁ~疲れたぁ~」

「モニカ、会いたかった」

「へえっ!?」


 いるはずがないと思っていたルカが、いつもどおりにモニカの顔を覗き込むではないか。

 モニカは、だらけた態度と、変な声を出してしまった二重の恥ずかしさで、顔が真っ赤に茹で上がる。


「モニカ……熱でもあるのか?」


 そう勘違いしたルカは、心配そうな顔でモニカの額に触れてきた。


(ひゃっ。ルカ様の手が……!)


 息を切らしながら上ってきたので、額が汗でべたべたしているに違いない。

 恥ずかしさの限界値に達したモニカは、逃げるようにして飛びあがり、彼との距離を開けて正座した。


「ル……ルカ様も、いらしていたのですね。自主学習ですか?」

「俺がそんな面倒なこと、すると思うか?」

「いえ。まったく。……では、どうして?」


 モニカが小首を傾げると、ルカは少し照れたように彼女から視線を逸らした。


「モニカに会えるのは、ここだけだから。バケットサンドも食いたいし……」


(えっ……。そのために、わざわざここへ来たの?)


 食いしん坊な推しが、可愛いすぎる。お弁当係万歳!

 モニカは、可愛い推しを摂取し頬がとろけ落ちそうな思いで、バスケットを彼に差し出した。


「どうぞ。たくさん作って来たのでお召し上がりください」

「ありがとう。これ、お礼にやるよ」


 そう言って彼が渡してきたのは、白いハンカチだった。




 伯爵家へと戻ったモニカは自室にて、最速で揃った『刺繍したハンカチ(フエゴ公爵家)』の材料を見て、にまにましていた。


「ふふ。モブの私がこんなに強運で良いのかしら」


 ログボの性質上、本来ならこれほど簡単に集められるものではない。モニカの経験上では、一か月で揃えば良いほうだった。

 それが五日で揃ったのだから、強運にも程がある。


「あとは、こちらを合成するだけね」


 ゲーム内ではアイテム作成ウインドウに、これらの材料を放り込めば一瞬で完成した。

 しかし、モブの視界にはそのような便利画面など存在していない。モニカはぴくりと顔をこわばらせる。


「もしかして、自分で縫わなきゃいけない…………の?」






「……で。なぜ俺に頼む?」


 翌日の放課後。モニカはいそいそと、カリストの研究室を訪れていた。

 ルカに刺繍したハンカチをプレゼントしたいが、刺繍の仕方がわからない。基礎から教えてほしい、とカリストに頼んだところ、ものすごく面倒そうな視線を向けられた。


 なぜ彼に頼んでいるかというと、ゲームのプロフィールにカリストの趣味は『刺繍』だと書いてあるからだ。

 精霊と契約して目の不自由さがなくなったカリストは、今までは叶わなかった細かな作業をしてみたくて、乳母に刺繍を習ったというエピソードつき。刺繍は手で触れても凹凸で形がわかるので、彼は刺繍が気に入ったのだとか。


「先生しか教えてくれそうな方がいないんです。お願いします!」


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◆人物紹介◆

モニカ・レナセール
伯爵令嬢。乙女ゲームのモブ

カリスト・ビエント
教師・男爵家の養子。乙女ゲームの攻略対象(初心者用)

ルカ・フエゴ
公爵令息・騎士。乙女ゲームの攻略対象

リアナ
聖女・平民。乙女ゲームのヒロイン

ブラウリオ・ アグア・プロテヘル
王太子。乙女ゲームの攻略対象

ロベルト・スエロ
侯爵令息・宰相の息子。乙女ゲームの攻略対象

ミランダ・セーロス
公爵令嬢。乙女ゲームのルカの婚約者

ビアンカ・ソルダー
辺境伯令嬢。乙女ゲームのロベルトの婚約者

イサーク・リアマ
男爵・ルカの従兄。乙女ゲームの悪役

ルー
火属性の精霊

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◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


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