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これからもずっと

お館様からの許可は、なかなか下りなかった。


客人だから、使用人の真似事をする必要はない。そういう事らしかった。


フンバルト経由なので直接は会ってないけれど、食事をアンデッドが作る事がまずいのかもしれない。


せっかくの思いつきだけれど諦めよう。



今日はとうとう4Fのオープン日だ。


「何も設置してないと何もいないのかしら?」


【未設定の場合、ゴブリンが出現します】


「ダンさん久しぶりね。じゃあミノタウロスを設置するわ。牛肉が欲しかったの」


【設定しました】


「あとお魚が欲しいんだけど、どうしたらいいかしら?」


【5Fがオープンしたら湖が出来上がります。そこに魚はいっぱいいます】


「もう~~、楽しみだわ」



「フローシャ、ここにいたのか」


「フンバルト。今日から4Fがオープンするわ。牛肉をいっぱい取ってきてね」


「取って来るレシピはあるか?」


「はじめはステーキが食べたいからレシピはあとでね。それで良い?」


「ああ。まかせてくれ。それと、これはお願いなんだが、隣の領地から客人が来ている。ハーフエルフとして紹介するから、話を合わせて欲しい」


「お安い御用ね。もしかして噂話の婚約者の話は本当のことになるの?」


「僕と君は友人だが、君を見初める人間がいるとやっかいだからね。他の人間がいるときだけでいいから、婚約者のふりをしてほしい」


「いいけど……、フンバルトはアンデッドの婚約者なんて、仮初でも嫌じゃない?」


「嫌じゃないよ。それにアンデッドといっても君は人間に見えるからね。むしろ光栄さ」


「ありがとう。私も騎士団長様の婚約者がいるなんて、嬉しいわ」


「お世辞でも嬉しいよ。僕こそありがとう」


じゃあ、と客人の来ている応接間に案内される。


「はじめまして、フローシャです」


ワンピースをちょこんとつまんで、軽く礼をする。


「まぁ、可愛い婚約者ね。エドワーズ・シャロンよ。隣の領から食料の買い付けに来ているの」


「そうなんですか。食糧難って聞いているのに、売るほどあるなんて凄いですね」


「ええ、その通りなの。わたくしはフンバルト様と婚約をして、優先的に食料を売って頂けるように働きかけていたのだけれど、もう婚約者がいるって聞いてね。ぜひお目通りをと願った次第なの」


「フンバルト様は素敵な方です。いつもお世話になっています」


「きいーっ。悔しいわ。ハーフエルフとはいえその幼い姿で、本当に婚姻するおつもり?」


「それは僕がお答えしましょう。寿命の違う種族どうし、ゆっくり時間をかけて夫婦になろうと思っています」


「私も同じ気持ちです」


「私、気分が悪いわ。失礼しますっ」


オシャレなドレスをたなびかせ、エドワーズ嬢は去っていった。


「良かったの? これで」


「本当は売るほどはないんだ。炊き出しもやっているし、自領内の孤児院への寄付も必要だ。まだまだフローシャの力が必要なんだよ」


「孤児院……」


「うん? もう近隣の孤児院へは寄付を完了しているよ」


「そっか。ならいいの。えへへ」


フローシャは心でちょっぴり泣いた。生きていたなら、美味しいご飯が食べられただろうか。いや、フローシャがいなくなったのだから、そのぶんみんなで分け合って生きているはずである。いまはアンデッド生を生きている。フローシャは過去を振り切り、フンバルトに向き直った。


「ダンジョンのご飯はなくならないから安心して。だけど、どうしても戦闘が必要だから、たっぷり食べて、ふらふらな人は入らないでね」


「大丈夫、いまは君のおかげで皆おなかいっぱい食べれているんだ。死にかけたあの時の少女はやっぱり君だったんだね。君は僕にとっても皆にとっても救世主だよ」


「嬉しい。私はひとりぼっちだったから、フンバルト達に受け入れて貰えて幸せだよ」


「これからもよろしく」


「安全第一でよろしくねーっ」



フローシャのその後だが、許可が下りた野菜栽培を庭でやりつつ、まったりダンジョンマスターをしています。


フンバルトは毎日食料採取に出かけていて、どんどん騎士団長としての貫禄も身についているみたい。


フローシャの身体は成長しないが、フンバルトが20才になったら婚姻をしよう、という話になっている。


ちなみに、いちおうダンさんに聞いてみた。


【人間と結婚しても、子供は出来ません。ダンジョンマスターの仕事を忘れなければ、婚姻しても差し支えありません】


これが決め手だった。


フンバルトは毎日ご機嫌伺いにやってきてくれるし、一緒にご飯も食べてくれる。


きっとこういう毎日が夫婦になるってことなんだと思う。



さてさて、5Fがオープンした本日は、魚のメニューを追加しないといけない。

煮魚なんてどうかしら。いいわね。


ダンジョンの作り方を開いて、煮魚のレシピを作る。


それと、魚人モンスターを配置する。ギョギョでいいわね。


【5F配置モンスター】

【ギョギョ、野菜スライム、根菜スライム】


ギョギョかもーんっ!


ギョギョは魚に足が生えているからちょっと気持ち悪いわね。


ぽかっ


【ギョギョは9999のダメージを受けた】

【魚×1 煮魚のレシピ×1 魔石×1を手に入れた】



仕事を終えて、ダンジョンコアを埋めてある庭まで戻る。


「フローシャ、お帰り」


そこにはフンバルトが待っていた。もうすぐ20才になろうという美丈夫は、心配そうにこちらを見ている。


大陸を襲った食糧難はなりを潜め、今では必死になって食物採取をするほどではない。


けれどフローシャのダンジョンは畑扱いで、毎日騎士団の実習場所として一定の人間が食物採取に出かけている。


フンバルトと出会って約5年。フローシャは成長をしない体のまんまだけれど、プラトニックで愛してくれるフンバルトのことが、フローシャは大好きだ。

これからも末永く仲良くしていきたい。そして来年には結婚式を挙げる。


7才で死んだ時は酷い人生だったと思ったけれど、なかなかハッピーな人生じゃない?


フローシャは大好きなフンバルトの腕の中でにこやかにほほ笑んだ。

お読みいただき、ありがとうございました。


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