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6話


脳裏にイメージが浮かび上がってきた。

エネルギーの動き…

それが霊気を連想させた。


カテゴライズ。昔見たマンガとかでもそういうものがあった。

動き、性質に違いがあるのなら類型出来るか。

霊気をそういう風に捉えてみてもいいかもしれない。

早く走る為に霊気の質を変質させたり、他には?

気配を消す、姿を溶け込ませる術は同じ系統に入るのだろうか?


あれ? 南に向かってここまでやって来たものの

何処までいっても人が見当たらないことに気づいた。

州都が全てもぬけの殻になっているわけない。

あのショッピングモール一帯だけならまだしも。

いくら世界に化け物が現れたと言っても一日で

数百万人が移動出来出来るわけがない。


歩く足を緩めて一度立ち止まる。

人類は何処へ消えた?

うっすらと肌が汗ばんでいた。

今自身が置かれている状況が己の理解の外にあることに

今更ながらに実感したのだ。


雨が激しく降り注いでいた。

ドラムのように地面を叩く。

雷が近くに落ちて空気の振動がビリビリと伝わって来た。

あまりいい予感がしなかった。ゆっくりとした速度で進んでいくと。


霧が濃い。

濃霧で周囲がまるで見えない…

10mほども視界が確保できない。

霊気の動きも酷く見ずらかった。


霧の中目を凝らしていると

一瞬何かが見えた。何かが前方を横切った。

一瞬人の影が目の前の霧の中を歩いていたのが見えた気がした。

これだけ視界が悪い中普通に歩いていた……

何かおかしい。違和感を感じる。


……人間ではない気がする。

餓鬼に、エイリアン犬、巨大蜘蛛ときて次は人型か?

モンスターなのかエイリアンなのかもわからない何か。


ふと疑問が湧いた。

今の奴はこの濃霧の中見えているのか?

だから普通に歩けていた?

見えてたのなら俺にも気づいているはず。

俺はヤツがもう見えていない、奴は?

下手に動けない…


もしかして目以外の器官で感知できるんじゃ…

……いったん戻ろう。

直観がヤバいと言っていた。

少しずつ少しずつ、ゆっくり。


ザアザアと土砂降りの豪雨の中、

ショッピングモールから10キロほど南の様々な店が立ち並ぶ通りだった。

そこの交差点から慎重に元来た道を戻ろうと動き出す。

体温が冷えていく感覚。大粒の雨が体を容赦なく打つ。


子供の頃、学校帰り豪雨の中雨宿りしながら

休み休み帰ったことを思い出していた。

学校から家まで少し距離があったっけ。そんなこと考えている場合か。


あの影が近づいてきてないか五感を研ぎ澄まし慎重にゆっくりと歩き続ける。

耳が拾う音はほとんど雨と風、雷。

その時、雨や雷に交じって何かの音が聞こえた。


声? 鳴き声か? あれの。

鳴いてるのか喋っているのか分からないような音。

よく聞こえないが。なぜか有名歌手を連想した。


声、音。

視界を気にしてない。

もしかして…

音か、あいつ耳がすごくいいのか?


また一瞬見えた人影は随分と猫背になっていた。

俺みたいにマナが見えてるとかじゃない、目も見えてないかも。

かなり悪いのではないだろうか。

霊気を感知しようと集中しているとネズミ型の霊気を感じた。

近くにいる。


見つけた。

車道の脇。


ネズミ型が鳴き声を出した時、影がまた見えた。近いぞ。

人型はネズミ型のほうを目ではなく耳をネズミに向けるように首だけ動かした。

つぎの瞬間恐ろしい速さでネズミ型がたった今いた場所に

跳躍し拳を地に叩きつける。


鼠は素早く動き出していて声を鳴らしながら反対方向へ。

人型が鼠に顔を向けて口から何かを吐き出した。


人差し指ほどの物体。弾丸のような速さで射出されたそれはネズミ型に命中。

鼠は絶命している…

ヒト型に殴打された横断歩道辺りのアスファルトは

人間の頭部がすっぽり入りそうなほど陥没していた。


この人型…速い。その上化け物は雨の中であっても素早く動くものを認識できるようだ。

こいつが近くにいたときに俺はすでに立ち止まっていた。偶然命拾いしていた。

今更ながら運が良かったことに気が付く。ゆっくりと動いていたことも幸いだった。

胸を撫でおろす。

下手に素早く動いてはいけない。音も出してはいけない。

身体能力も高そうだ。あの口から出す弾丸にも気を付けないと。

そうだ、強化しておこう。


隠密モードを維持しつつ

内面から霊気を練り上げ全身の細胞、神経、筋肉、骨に霊気を通して満たしていく。

多分攻撃を食らっても少しはマシになるんじゃないか。

気配は割れながら大分消失したと思う。

化け物が去るまでここに居よう。


問題は現実は予想通りにいかない事。

奴がなかなかここから離れてくれない。

もう3分以上ここにいるだろう、何かを探しているのか?

それなら俺から離れないとか?

こちらとしてもも来た道へ戻りたい。


何か出来ることは……

そうだ、変質させる。

自分の周りの霊気が音をあまり出さないようにイメージする。

少しづつ体の周りの霊気が変化していくのを感じる。

雨具を叩いていた雨粒が出す音がにわかに小さくなった。

結構疲れる。これをずっと維持するのはキツイ。

気持ち今より早く動いてみる、ヤツの反応は変わらない。


大丈夫そうだ。

先ほどよりはという程度に気持ち速めに歩く。

順調に距離が開きはじめた。


気を抜かないように。

ゆっくりでも確実に。

蝸牛のような速さで…


ヤツから2百m以上に離れた交差点で目の前の霧の中に巨大な影を見た。

最初トラックであって欲しいと願った。

その気持ちはその巨大な生き物がのそりと動いている姿に打ち砕かれる。


突然現れた。化け物。霧の中、頭部から順に姿を現したのは

シャチより1周りは巨大な恐竜。

姿かたちはコモドドラゴンに近い。勿論別物だが、

知っている生き物の中で似ているフォルムではだ。

陸竜とでも呼ぼうか。

全長10m以上ある化け物。目はある物の何処とくエイリアンと似ている。


巨大な体躯に硬そうな鱗。

ソレが足を踏み出しただけで、その質量で地面が揺れたのが伝わって来た。

体中に傷跡、負傷している。

目が合った瞬間陸竜の瞳孔が収縮した。

驚愕して隠密が解けてしまう。


直後。

こちらに突撃してきた! すぐさま後ずさり距離を取ろうとする。

巨大な悪夢がその巨体からは想像もつかないような

速度で前に飛び出して前腕をふるった。



雨が小降りになってきているが、

霧はまだまだ晴れる気配がない。


視界不良の中全力で攻撃を避けていく。

予想以上に動きが機敏。それに途方もないパワー。

横から懐に飛び込み短槍に霊気を思いっきり送り込みどてっ腹に

渾身の一撃を突き入れた。


陸竜の皮を突きやぶった蜘蛛の短槍に

トリガーを引くようなイメージで霊気を送り込み爆発させる。

それなりのダメージが入ると思ったが、まだ浅い。

陸竜の動きはまったく衰えず周りにあるものを

破壊しながら俺になんとか攻撃を喰らわせようと暴れまわる。

渾身の一撃だったが、あれでも全然足りない…


南に陸竜を常に置くように立ち回ってると鈍い音が聞こえた。

陸竜の霊気が乱れる。

あの弾丸の発射音だ。たまたま北に戻りながら戦おうとしていたのが幸いした。

あのヒト型がこちらに気づいて陸竜に攻撃を始めたのだった。


! 


もう一発!

陸竜はまだ俺を狙っている。

ヒト型が霧から現れ直接陸竜に襲い掛かった!

背に飛びかかり背骨に噛みつき、効かないと見るや激しく殴打する。

滅茶苦茶だ。

陸竜はヒト型にターゲットを変更。


この機会に気配を消してその場から離れる。


心臓がバクバク鳴りやまない…


良く生きてたな、我ながら…

乱れている呼吸を整え信号近くにある

3階建てのバーの屋上にマンガでしか見ないような動きでよじ登った。

屋上からさっきまでいた場所。

あの化け物たちは互いに吠えながら戦闘状態に。


ヒト型のエイリアン。

あれに本当に勝てるのか?



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