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ダブルサイココライド ーSaga of Puppeteer ー   作者: KJK
6章 異界衝突 傀儡師と魔女と巨人の軍団
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1話


Evangelica Scarlet  エヴァンジェリカ・スカーレット



「ククク、風が気持ちいいねぇ…」


不敵な笑みを浮かべ、風の入ってこない魔導装甲車のなかで思わずそんなセリフを呟くてしまう。運転席は普通の車のように背を預けて足を伸ばしてペダルを踏んでいるけれどバイクを乗るときのように前傾姿勢で運転している。


一体今どこへ向かっているかというと。プリティフェイスこと私イーヴィーちゃんが相棒の魔導6輪装甲車で州都へと向かっているのだ。魔導バイクの装甲は霧の中の奴らも簡単には壊せないですからね! イヒヒ。


Witcheryで霧を抜けられるのは私の魔導バイクの他にはルネーとミネルヴァだけ。ウチのリーダーは気合と勘でどうにかしているから凄い。不安なので出来ればやめて欲しいけど。


霧の向こうに逃げるとゾンビ軍は追ってこない。最近は霧抜けの有利をいかすために飛び地みたいに領土を取ったりもしているけど。結局リスキー。


ネフィリム軍の数の暴力と新エイリアンなどでこちらもやりにくくなって来ていた。正直膠着状態。魔女様(ルネー)は時間を稼ぐだけでも十分とか言っていたけど……


「ホントに大丈夫かぁ~?」

って言ったら睨まれた……


というわけで、最近はルネーが全然! まったく! 1ミリも! 魔導機械開発に専念させてくれない!今日だって州都方面の偵察仕事をやらされてるし!私はいろんな所を走り回らせられるために、このバイクを作ったんじゃないぞ! まったく!


一日3時間までしか絶対働きたくないんだからね! 世界が平和なままだったら絶対物理学者か哲学者になってたのに!


世界がどうなってるかは私も気になっていたから文句はあまりないけど。高速を走っていると道に大きい石礫が多くなってきていた。走りづらい。何か嫌な予感がするなぁ。これ以上州都の中心まで行きたくないな。そろそろ州都東側エリアに入るし、ここの出口から出てみよう。


州都東地区の町は無茶苦茶な有様。倒壊しているビル、瓦礫の山。破壊の限りが尽くされたような跡。


もう少し南西側、都心方面の区画へバイクを走らせると石化したエイリアンの像などがある。髪が蛇みたいな化け物いないよね? 恐怖に震えながら辺りを見回す…


思いのほか都市部は静か。人の気配は全く無し。生き残りの人間のグループを見つけたかったんだけど…… これ以上滞在しないほうが良い気がしたので、ここはイーヴィーちゃんの賢さを発揮してさっさと帰る!


東地区から引き返している最中。

北東方面で縄張りのようなものを発見。


住宅地や交差点、商業区域等が蜘蛛の巣だらけになっている…… 高速道路も。大丈夫かな、恐れでだんだんと身がすくみ始める。加えてエイリアンや魔物の死体が綺麗な状態で保全されて、まるで人形のように無造作に置かれていた。最初は死んでるってことさえ気付かなかった。時が停止したように動かない魔物たち。こ、怖い。生き物を操り人形にしちゃう糸を持つ蜘蛛の化け物とかいないよね?


ドサッ

上から何か落ちて来た! ドロドロの何か。見上げると木で出来た人間の死体が首を吊っているように電柱にぶら下がっていた。あれも化け物蜘蛛の人形? こ、怖い!


ガードレールにしな垂れかかっているエイリアンの死体を観察。動かないこと以外の違いは不明。それに死因が見当たらない。体が一部溶けてるやつは何だろう。はく製とは全然違う、時を止められた生き物たちは人形のような雰囲気。恐る恐る触れてみると体温に違和感。冷たいわけでもないけれど… いや、よくわからない。とりあえず謎の処理を施されているみたいだった。


それよりもこれだけ広大な範囲で霧が晴れているってことは…… 何者かの領土の可能性が高いよね。こんな狂った領土を持つ化け物は絶対ロクなもんじゃないに決まってる! ということで二度とここには近づかないようにしなきゃ!


急いで魔導バイクに乗り込み帰路につく。何か嫌な予感がするから報告しないほうがいいかなぁ…… でも一応ボスには報告しとくか…



**



馬鹿正直に我らがリーダーに報告してしまう失態を犯すと、もうちょっと偵察を続けてみてだってさ! どれだけヤバそうか聞いてなかったの!? 「絶対嫌だ!」っていったのに! イーヴィーちゃんの心配してないのかな? こんなにプリティフェイスなのに。


そして…

2回目の偵察に訪れた時。

人間がここを歩いているのを目撃してしまう。魔導バイクの中から両手で顔を隠して指の隙間から様子を窺がっているときに見てしまった。あれは幽霊? それともマリオネットスパイダーの作った人形? あの男が罠になってて、生き残りの人間だぁって近づくと誘拐されて蜘蛛の糸で身動き取れなくされて人形にされちゃうんでしょ?


本当に一人でもう来るの嫌だからね!


急いで逃げ帰り泊地の休憩所でくつろいで昼寝していると早速ルネーから報告を催促された。本当に人間なのか怪しいとか、仮にそうだったとしても絶対ヤバい奴! とか色々話して説得中。


「イーヴィー。また偵察にいって人間かどうかと安全そうか確かめてきて欲しい」

「嫌だ! 危ないもん!」

「うーん、でも私は動けないし、今度は使い魔もつけるから」

「じゃあステイシーとグラムとオスカーと……」

「いや、そんなに無理だから。とりあえずステイシーをつけます」


―むきぃ! ステイシーなんてただのサイキックトカゲじゃん!


結局コンタクトを取ってみることとなってしまった。


最悪だよ、もう… 人間じゃなかったらどうするんだよ、それに人間だって信用できるとは全然限らないんだぞ!



**



そしてヤバいヤツのテリトリーに今日もいます。やだよぉ、胃が痛い…… どうにかしてサボりたい。仕事は果たしたように見せられないかなぁ…… ショッピングモール付近の交差点のほうに行ってみる。祈るような気持ちで蜘蛛の巣と人形だらけのエリア内に入っていってみると。


なな、なんか今までよりもずっとヤバそうな巨大な蜘蛛の巣が交差点を横断するようにかけられていた。マリオネットスパイダーがいるんだ……  逃げなきゃ……


電柱で鳥の魔物が蜘蛛の巣に絡まって溶かされている。ちょっと待って、落ちてる謎の物体って溶かされた生き物の部位じゃん!


住宅地とか交差点とかにめちゃくちゃ張られてるし! え、もしかしてこの蜘蛛の巣に触れると溶かされちゃうの?

触らなくて良かった! 溶かされてたら絶対ルネーのせいだから! 一生面倒見てもらわないと!


ショッピングモールの近くのビルも変な人形がいっぱい外壁に吊るされている。


恐怖した!

しかも道にも人形が転がっているのも恐怖ポイント高いです! 車ディーラーのショーウインドウにマネキンみたいに混じってて驚く。再び恐怖した! 呼吸が乱れるほど。

 

そろそろ帰ろう! ここは魔物の巣だし、ルネーと一緒じゃないと絶対こないって言わなきゃ! 魔導バイクの窓を開けて顔をだして立ち去ろうとした時。あの人間の男がどこからともなく現れて、あれよあれよという間にこちらに近づいてきて、固まってたら……


話しかけられた!


最初何を言ってたか聞いてなかったけど、男は正真正銘の人間なんだって。Witcheryみたいな勢力のリーダーらしい。そんなこと簡単に信じないよ! ほんとに人間かぁ? どうせ蜘蛛の化け物でしょ! 体温の感じが違うのはわかってるんだからね! そういうと困ったような顔をして腕まくりして前腕を差し出してきた。


触ってみると暖かい。両手で触ってみる。やはりあったかい。これだけじゃわかんないなぁ…… 自分の前腕の内側と男の腕の内側をくっつけて比較する。な、なんかあったかいなぁ。人間かも。でもでもこれだけじゃ信用できないですよ!


ジョン・スミスっていうんだって。どうせ偽名なんでしょ? 勢力名はANKHだって。へー、アンクね。なんかこの男強そうだなぁ、うーん優しそうだけど…… 簡単には信じてやらないぞ! 疑ってますよ! という目で見ていると困っているように見えた。


自称領主だという胡散臭い男に疑いの目を全力で向けながらもとりあえず、事情を伝えてみる。


こちらはWitcheryという勢力のもので。ここからずっと東のほうに領土があるんだけど、不気味な巨人とその配下のゾンビ軍相手と戦っているってこと。ここで人間を見かけたからコンタクトを取ってみたかったこと。


男は少し考え込ているように見えた。間を置いてからコンタクトを取り合ったり話す分には問題ないし歓迎するといった。お互い協力し合えるなら嫌がる理由はないってさ。本当かぁ? どうせカモになりそうか確認してるんでしょ?


あたしはこれからこっち方面にたまに来ると伝える。問題はお互いに信用できるのかだよね。あたしだって信用していいのか分からないもん。


男はハンサムで落ち着いてるし、優しそうな雰囲気。ボーっとしている感じだけど。本当にリーダーかぁ? 男はそのゾンビ軍っていうのは? 巨人って? とネフィリムやゾンビたちに興味を示したみたいで色々聞いてきた。


あとなんか桃をくれた! あまり生産できないから貴重なんだって! お土産にどうぞとくれましたので頂きます! 有難いです。


あ! でも毒じゃないだろうなぁ? 帰る前にちょっと味見しとくか、イヒヒ。




***

 

「John・Smith」



日課になって来ているテリトリーの巡回をしていた時。イーヴィーという子が領土を訪ねてきた。Witcheryという勢力からの使者。


他の勢力の使者! 初めて会った。ファーストコンタクトだ。人間の勢力が他にもいて、そこからの使者がやって来るなんて全く期待していなかった。生き残りの人間の集団はちゃんといたんだ。少しホッとする。


使者の名はイーヴィー。

俺達のテリトリーに入ったものの敵対する気はもちろん無いこと。そちらはどうかと言われて場合にもよるが今は敵意はないし、友好的な勢力は歓迎すると伝えた。


たまにこちらに来て何か取引などしてみたいと言われた。問題ないと答える。どのくらい人数がいるのかは教えてくれなかった。


こちらも教えてないが。見た感じ信用できそうだけど、イーヴィーはかなり警戒心が強く必要最低限の話以外はする気がない様子だった。


彼女の乗り物、魔導機械は霧の中を生身より安全に抜けられるらしくゾンビ軍を撒いたり、霧の向こうへ逃げたり。遠方まで偵察に行ったりとしてるらしい。


感想はすごいの一言。そんなものあったら最高だ。そんな車両を所有していることは教えてしまって良いのだろうか。


俺も世界がどうなっているのか確かめたいが、霧を通り続けていくのは危険。世界の状況を確認するには地道に領土を拡大する以外無い。イーヴィーやWitcheryが協力してくれれば霧を気にせずにもっと広範囲に世界の状況がわかるかもしれない? ここから他の大都市まで俺的にはとても遠すぎていけない。


未だに都心すら行けてないんだ。あの数の魔物たちがまた一気に相手するのは難しい。特に守るべき領土を持った今は。そのうちアムスとシンディを探しに行きたいけど、ここに来やすいようにヒントでも書いておこうかな。人間がうろついていると鳥獣部隊から報告があった時はアムスやシンディかと期待したのだが。


もちろん領土をほっといて二人を探す旅には出れなかったが樹人との戦争も終わったところだし、そろそろ何か出来るかもしれなかった。他の勢力と協力するのもいいかもしれない。人間同士。


それにしてもゾンビ軍と戦争か…


あんな凄い乗り物で構成員が世界を動き回ってる勢力。Witchery… ウィッチャリー。 魔法とか、魔女の技。そんな感じの意味の名前。


構成員が何人いるのか分からないが生き残りの人間たちでそのゾンビ軍と戦争中。特に助けも求めていないようだった。巻き込まれたら俺達も不味いくらいの相手? それとも必要ないってことか? 余裕?


いやイーヴィーはゲリラのように戦ってるといってたな。あ、ということはそこまで領土が無い? 数が多いとも言ってた。ゾンビ軍は、敵は数が多い……


逆に領土があるとそいつらとの相性が悪くなるから領土拡張を放棄しながら戦っているのかもしれない。俺だって人員不足だったりで防衛にリソースを割き過ぎないようにしていたんだ。彼女らもそ愛している可能性はある。今は構成員が多いし蜘蛛の巣があるから楽になったが、あちらはどうかな。予想は予想でしかない。しかし有り得る話かもしれなかった。


他にもイーヴィーが気になることを言っていた。ゾンビ軍は西側に領土拡大していってる。まだ距離はあるみたいだが、いずれここにもゾンビ軍が来るかもしれない。つまり、いつまで他人事かはわからないぞってことだ。


ANKHも大きくなってきている。そのうちまた戦争しなきゃいけないか。近いうちに領土拡張はまた再開していく予定ではあった。


それにしてもゾンビね…

まぁゾンビは単体では別に強くないらしいから大丈夫だと思いたいけど。感染するならますます仙桃の生産に力をいれないと。仙桃は樹人の胞子にも有効だった、ゾンビウィルスにも有効であって欲しい。






ANKH 領土面積 58㎢


Witchery 領土面積 8㎢


ネフィリム軍 領土面積 122㎢


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