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ダブルサイココライド ーSaga of Puppeteer ー   作者: KJK
5章 放浪の弟子と誰もいない世界
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1話 誰もいない世界     


XX国 都心 晴天


平均より少しだけ背が低いのを気にしている

ショートカットの金髪の女の子が歩いている。年の頃は二十歳くらいで

キョロキョロと周りの建物と手に持った紙を交互に確認するように。

* * *



ーーーシンディ


バーで働きながら、あの世界の手掛かりがないか探し続けていたけれど…


「全然見つかんないじゃん! クソー。」


今日はお客さんから聞いた凄腕の占い師だという人に会いに行く。

超能力だとかに興味あるといったら紹介された。

もしかしたらアタシみたいに何か能力を持ってる可能性もあるかもって

予約を取ったんだけれど。


30分2百ドルだって… 高い!

占い師とか会ったことないから相場もわからないけど。

評判がいい占い師なら、そんなものなのかも。


都市の中心から少し外れの住宅街にあるビルの前で

紙に書いてある住所と一致。ここで間違いない。

狭い駐車場がビル横にあって白いミニバンが停まっていた。


「うん、ここだよね。」


入っていくとスーツの女性が立っていた。

話しかけると占い師のアシスタントの人らしい。

秘書みたいな恰好しているけど、何か娘とかの気がするなぁ。


殆ど廃墟と言っていいようなビルの一室に通される。

家具も無く、今日運び入れたんじゃないかとしか思えない

軽くて安っぽい折り畳み椅子と机が部屋の真ん中にあった。


丁度占い師とそのアシスタントのみで車にいれて一度で運び入れられるような

ものだった。普段はここを借りてなくて

さっきあったミニバンで運び入れたのか。


部屋の真ん中は黒い遮光カーテンらしき布で

占い師と客だけの空間になるように

仕切られている。


カーテンの奥から声が聞こえてきた。


―来なさい… こちらへ…


アシスタントの女の人を見ると

笑顔で行ってらっしゃいと送り出してくる。


「はい。」

恐る恐るその仕切りの中に入る。


「今日はどんな悩みを、わたぁしにぃ、持ってきたの?」

「ええと……」

「あ! 言わなくていい! わかるから。」

言おうとした瞬間止められる。


「男ね?」

鋭い目でこちらを見てくる妙齢の女性。


「うん…」

「一人の男のことね?」

「ううん、二人…」


一瞬間が開く。

「いや…、特に一人ね?」

「いや、違います。」

「あなた純粋そうな見た目して随分多くの恋愛してきたんでしょう?」

「ううん、あんまりしてない。」


しばし沈黙が場を支配する。

「あの、恋愛じゃないんだけど…」


占い師が考え込むように手を唇に当てて、下を向き

またこちらを向きなおす。


「もちろん、そういうでしょうね。 今のあなたならね?」

ドヤ顔で意味深な空気をかもし出す。


―さぁ、言っていいのよぉ。

ここに来た理由があるんでしょぉ?

ふふっ… と言って笑う占い師。


「うん! アタシの悩みは… アタシは、違う世界にいたの。」

「え?」

顔を突き出して耳をこちらに向けていた占い師が固まる。


「元々はこの世界にいたんだけど、いや当たり前だけど!

でも違う世界に行って… そこでみんなが死んだの。」


「ん? 皆死んだ?」

え? 聞き間違い? と呟いて誰かに確認するように何故か後ろを向いた。


「うん、この都市の人々ほとんど全員。皆死んじゃった。いや人類の多くがかも。

モンスターとかエイリアンがいっぱい現れて…」

「は? エイリアン? 一杯?」

「そう、それで。2人だけ仲間が見つかって。」


「えぇ? うん、うん…」


だんだんと占い師は話にのめりこみだす。

ものすごい前のめりで聞いてくれる。

唇に手を当てながらアワワ、そりゃ大変だわ… 


え? うそぉ… 人類終わりじゃない…

と不安そうな表情で震えている。


「その二人はあたしの師匠になってくれてアムス師匠とカトー師匠。

で、なんだっけ。そうだ、皆と離れ離れになっちゃって。

それで気づいたらなぜかこの世界に戻ってきたの、それとも世界が戻ったのかな?」


「ちょっとよくわからないけど。あなたもスピリットを感じるのね?」

「……まぁ、うん。」


占い師はまぁ! 大変これはただ事ではないことが起きてるよー!

あたしには、わかる!

とかいって元気になりはじめた。


それで二人の手掛かり、もしくはあの世界やエイリアンの手掛かりがほしい。

というと、それなら任せて! 胸を張って占いを始めた。

水晶玉を覗き込む。


「むむむ、むむむのむぅ… 来た! 来ました! 

見えた! ダイスとライブラリーや! この二つが大事! 」

「どういう意味?」

「もうあなたにはわかっているはず…」


全然わからないけど…

ビルを出る。

もう3時すぎか。この占い200ドルの価値はあったのかな…

ダイスとライブラリーね。


ふーん。

図書館か…図書館ね。

図書館は行ってみてもいいかもしれない。

エイリアンとかモンスター関係の本でも見てみようか。

何か分かるかも知れない。

ダイスは何だろう、買えばいいのかな?


ダイスってそういえばどういうお店で売ってるんだろう。

後で調べてみようかな。まだ今日は時間がある。

一度家に帰ってから図書館へ。

凄く雰囲気がある所を見つけた、折角だからそこへ向かおう!


図書館へ着くと館内に人はいなかった。


夕暮れの黄金色の光が図書館を満たしていていた。

人の気配自体はあったけれど、実際に見たのは

カウンターにいた司書の女性だけだった。


まだ若い、といってもあたしより少し歳上くらいの

眼鏡で背の高い女性。

茶髪で真面目そうで、すこし疲れてる感じ。髪をまとめていて、

白いワイシャツに黒いスカート。


それにしても人がいない。閉館時間って何時だっけ。

図書館には来ないから良く分かっていない。

6時くらいならもうすぐだから、閉館前はこんなものなのかも。


昔子供のころに夕方図書館で過ごしてた時、人がいなくなったと思って

わくわくもした瞬間が浮かび上がってきた。

誰もいない図書館の特別な雰囲気はよく覚えている。

でも怖くもあったんだよね。

まるで違う世界に来てしまったかのようで。


とりあえずオカルト関係の本を探し始めてみる。

異世界にエイリアン、神話のモンスターとか。

いくつか気になった本を適当に見繕って


黄金に染まる窓際の机で本をぱらぱらとめくった。


面白いけど、特別手掛かりになりそうな情報はない。

世界のシンボルとかいう本とかも見てみる。

へぇ、こんな感じなんだ。


気が付くと……

……誰もいない。


館内に誰かいないか見渡す。まだ閉館してないよね?

最初から殆ど人がいなかったけど、

さすがに誰もいないなんてことはないでしょ。

さっきだって足音は聞こえていたし。


近くにあるマーケティングの本が目に入る。

マーケティング、メイク イット ハプン 100の秘密だって。

いや、そんなこといいから。自分に突っ込む。


辺りをキョロキョロと見回して、本を戻すついでに

本棚のレーンに人がいないか確認していく。

不安感から鼓動が速まっているように感じた。


近くの本棚の陰のほうに何かいる。

首を出して覗く。


人が倒れていた。

司書の女の人だった。


白いシャツに黒いスカートの眼鏡の女性。

頭からペンキのようなねっとりとした血を流している。

マナの動きでまだかろうじて死んでいないことがわかった。


どうしよう。

突然のことに動揺する。

応急処置とかあまりアタシわかんないよ。


続いて頭を動かして周囲に何かいないか確認していく。

女性をどうしていいかがわかんない。

えーと。止血したほうがいいんだろうけど、

動かさないようにしたほうがいいの? 咄嗟にバッグからスマホを取り出す。

救急車を呼ぼうとすると電話がつながらない!


「何で!?」


ネットも! ネットも繋がってない!

なんでよ!


この人は何に襲われたの? 転んだだけで何でこんなに出血してるの?


館内に足音。すぐ隣の本棚の裏。

女の人に肩を貸そうとした時また人間の気配が再度漂った。


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