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ダブルサイココライド ーSaga of Puppeteer ー   作者: KJK
4章 Witchery  魔女と湖畔の街と革命の鐘
38/53

9話 ウェンディゴ


アップルヘッズ南 校舎屋上


上空から速度を落とし校舎屋上にとんと降り立つ。


魔眼で校内をスキャンするように見ていく。

動く死体は確認できず。何処へ移動したらしい。


空から見た限りでは街の南側には千5百以上の亡者が徘徊していた。

この南の区画だけで1500。これを多いと見るか少ないと見るか。


親指を嚙みながら思考の海に潜っていく。


他の動く死体の軍勢はどこ?

ネフィリムが居た寂れた教会の方には居なかった。

東、ペアグローブじゃない。

午前中に行ったキングスクリフもゾンビはそんなに居なかった。


あの大量のゾンビ達はあの日私たちが船で逃げた後何処へ消えたのか。

一万以上いたのだ。ネフィリムが何処かへと動かしているはず。


あの日亡者の軍勢は急遽編成されたのだろうか。

扇動個体ゾンビが喚きだしてから、ここへやって来るまで

余りにも早すぎる。


何処かに侵攻するために用意された

軍勢を急遽差し向けたのだろう。


その侵攻作戦のついでにネズミを始末するために

やって来たのだったとしたら…

船で私たちが逃げた後は

元々攻める予定だった土地へと向かったはず。


まだ正確にネフィリムの版図を把握できていないんだよね。

どの方面に侵攻したんだろう。


あれだけの軍勢を差し向けるのなら……

それに値するほどターゲットがいるエリアがあったってこと?

まさか、人間がまだ大勢生きてる都市がある!?

そうなら早く見つけないと!


学校はもういい。見てないところを回ろう。

空からの町の様子を見て回り、民家の開けっ放しのガレージで

雰囲気のある箒を見つけた。


モップからこっちに変えて持っていこう。

更に南に飛んでいくと霧が漂い始めた。


アップルヘッズにはやはり軍勢はいないし、

ここより南の霧が晴れていないということは

南には領土広げていないし軍も向けていないと思われる。


北は霧がもっと晴れてたはずだ。

箒に飛び乗り北を目指す。


民家と雲の間の中途半端な高度を飛びながら

死者の軍勢は何処にいるのか考えていた。


船だまりに置いて来ていたミネルヴァに思念を送り合流地点を告げる。

湖北「キングスクリフ」の手前、湖にある小さな中州で。


ミネルヴァの魔眼との連携は

私の戦闘能力や感知能力を大幅に底上げしてくれる。

未知の場所に行くときは出来れば連れて行きたい。


新しい使い魔のステイシーにもマナを吸わせ

サイコキネシスでゾンビに攻撃させたりしてみているけれど…

彼女はまだまだ戦闘面では頼れない。

ささやかな防御フィールドを貼れるのでイーヴィー達に付けておく。


中州に降り立って殆ど待つこともなくミネルヴァが到着。


街の湖から見て正面はゾンビが多すぎる。

何で!? 

今朝来たときはここまでじゃなかった。


キングスクリフ東の森の中に入り街に入る為のルートを探す。

梟を飛ばし視界を共有。


瞳に写った世界がだぶつく。

ミネルヴァの視界が私の見ている世界に重なり裏に回ったのを

引っ張るように前に持ってくる。


キングスクリフ東側上空からの映像。


(なにこれ……)


想定外の光景に気が遠くなる…

動く死体達は2千ほど。

数はたしかに多くなっている、しかし問題はそこに混じっている亡者。

ヒト型エイリアンゾンビが2百以上。イヌ型も百を超えている。


地球外生物ゾンビは人のゾンビとは

比べ物にならない戦闘力を持つ化け物だ。

ゾンビになった生物は弱体化していくが、

ヒト型エイリアンはそれでも強すぎる。


成長している今の私でも20体も相手どれるか怪しい……

精々10数体か。


人間のゾンビは力加減のリミッターは多少外れてはいるし、

噛みつかれるのがアウトなのは変わらない、それでも

それ以外は普通の人間と大差ない上複雑な行動をとれない。


しかしヒト型は普通の人間の戦闘力なんてものではない。

昔の地球であったなら

どんな生物にも勝利するだろう。


例え銃を持ってきても

マナが通っていない弾丸など撃ち込まれても重傷は負わせられない。

戦車なら相手に出来るかもしれないが…

バスをも横転させられそうなほどの膂力に

槍持ちに盾持ち、口筒から弾丸を撃てる個体もいる。


今まで見かけてた数は僅かだった。

ごく稀に紛れているくらいだったのに。


何故ヒト型エイリアンのゾンビが増えた?


あの万にも届くゾンビの軍は何処かを攻めるついでに来たのではなく

攻めた後にやってきた?

そしてその地域にはエイリアンたちが大量にいたのかも。


あの時ヒト型が少なかった理由は

エイリアンたちに十分に感染が拡大するのに時間がかかっていたって所か。

そしてあの不気味な巨人は新しく手駒に加わった

エイリアンの強力なゾンビ達を配置し始めている。


ヒト型エイリアンの亡者たちが街中を徘徊している様は

まるで手負いの穴熊を守る獣達。

あの巨人がここキングスクリフにいることを告げているようだった。


一瞬奴の顔がちらつく。

寒気がして思わず身震いした。

あの気味の悪い目で見られた時のことを思い出す。

嫌だ、この街に入りたくない。嫌な予感がする。


一度アジトに帰ろう。


* * *



帰って来て体を拭く。

着替えて仮眠をとる。


起きたらウイッチクラフトでまたアイテムづくり。

何か作業をしていたかった。


ただの箒→魔女の箒

狂気の爆弾をそこそこ

狂気の首輪

狂気の香水

魔女のモロトフも少々


魔女の箒は飛行能力を全体的に底上げしてくれる。

速度15%UP 操作性UP 上昇気流に乗りやすく。


あとはステイシーとミネルヴァが成長。


===

ミネルヴァ

魔眼梟 レベル4→5

アビリティ「見通しの魔眼」 「感知する魔梟の耳」 「チャネル」 

skill   「回避の心得」 「暗殺鳥」 「透明化」 「邪眼」新!


ステイシー

念動魔獣 レベル1→2

アビリティ 「サイコキネシス」

skill 「サイコバリア」新!

===






* * *


----ペアマウント湖 Witchery 拠点 停泊所




夜。


船内からデッキへ。風はひんやりと冷たく心地よい。

月光浴しているオスカーに背をあずけ夜空を見上げる。

宙に無数の星が煌めいていた。

人の時代であれば、都市部では

まず見ることは叶わないような情景。


ペアマウントシティは田舎の方だが

流石にここまでの星空ではなかったはず。

世界はおかしくなってしまったが、空は綺麗になった。


右手からWitcheryの十字短剣を取り出して眺める。

白銀色の剣で素材は私には分からなかったが、

改めて見るとやはり得も知れぬ美しさがあった。


イーヴィーが美味しいものが食いたい!

と主張した結果。今日はライスを炊いてそこに

タイグリーンカレーに焼き魚を入れて食した。

辛かったが美味しくて食べ過ぎてしまった。


仲間が出来てから食も気を使って作るようになった。

私は適当に済ませてしまうから、有難いことなのかもしれない。

皆も喜んで食べていたな。


こういう日々を奪わせないためにもネフィリムは倒す。



 


_____明朝




何時もの如く夜明け前に行動開始。

今日はネフィリム領土の偵察を軽くして、

その後安全な場所でイーヴィーとルーシーに実戦をしてもらう。

今のうちにゾンビ戦の経験を積ませておきたい。


午前の内に戦闘訓練が終わらせペアウエストに作った拠点に帰還。

イーヴィーは魔導機械作成用の素材になる機械や道具を加工。

ルーシーには魔導コーディングの練習とイーヴィーの手伝い。

オスカーとステイシーを護衛として二人に付けておく。


私はミネルヴァを連れてキングスクリフのさらに北へ。

上空、梟の眼から見えたキングスクリフは

相変わらず物々しい防衛体制のまま。


これまで確認できたゾンビ群れの配置は

ペアマウントシティ南と西、合わせて4千。

東に約千5百。

北はキングスクリフの街だけで2千以上。

大半のエイリアンゾンビもここに常駐。これで7500か。

 

ゾンビ軍の総数が知りたい。

あの時の軍勢は1万はいた。仮にあれが全軍なら残り2500

何処かにいるはず。全軍でないなら…

いや、全軍ではない可能性は全然ある。


考えている間にキングスクリフから更に北方の町。

「ウェンディゴ」に到着。


元々金鉱発見からゴールドラッシュにより人口が増加し

栄えた街のようだった。

ウェンディゴは明らかにそういう雰囲気の街で、

破壊されているが郷土資料館や、ちょっとした博物館の跡地も。

通りも土煙をあげる土系の道があえて残されている場所が見受けられる。

また一方で路面電車が転がっていたり、

多くはないがそれなりの人口を擁する都市でもあった。


街はゾンビだらけ。大量に徘徊しているし、転がっている。

転がっているのは大量の人間の死体。

かなり激しい戦闘がここであった事が伺えた。

ゾンビ軍はここで戦っていたんだ…


人間の死体……

服に統一性がある。薄緑のジャケットに皆同じワッペンを付けている。

胸か肩にあったのですぐに気づいた。

私達の他にも奴らに抵抗していた人たちがいた。数はそこまで多そうではない。

恐らく30人くらいの人間の集団が居た。

でも、このグループは多分もう…


ミネルヴァが何か感知したように頭を動かし、

すぐさま上空に一気に舞い上がっていく。

私の耳にも音が飛び込んできた。

戦闘音。生き残りの人間!?


ミネルヴァの視界がシェアされる。

距離は6百m。


あのワッペンの人間達、じゃない!

生き残っているヒト型エイリアンのグループがゾンビと戦っている。

ゲリラのように隠れながらゾンビを襲撃。

ただ数が少ない、確認出来るだけで14体くらいか。


ここウェンディゴにいるゾンビはざっと見て千五百以上。

しかもエイリアンゾンビも60体程。

キングスクリフの大量のエイリアン達は

このエイリアンたちの仲間だった?


大きなエイリアンの群れがあったのかもしれない。

今はもう、これしか残っていないのか。このゾンビ達は人間だけの敵じゃない。

皆の敵なんだ。


仲間が感染してから対処に時間がかかったのだろう。

というかゾンビウィルスなんてエイリアンからしたら

初見殺し過ぎるか…

あの化け物達が本当に地球外生命体かも不明であったが

人間のような文化は築いているようには見えなかった。


目の前で行われている戦闘を見る限り

正直ヒト型には分が悪すぎる。彼らもその内ゾンビ化するだろう。


その時エイリアンの中でももっとも

積極的に駆け回っていた個体が私の近くに

跳躍してきた。忍者みたいな動きをする個体で

見た目も少し他と違う。恐らくリーダー個体。


その個体は身を隠しながらゾンビの様子を探っているが、

ふと近くにいる私に気づいた!


エイリアンはびっくりした様子で固まって、その隙に

イヌ型に飛びかかられて負傷。


すぐさま私がイヌ型を仕留める。

エイリアンは動かない。

目は無いが地面を見て固まっている気がする。


「あなたに話が伝わるかわからないけど、アイツらを倒したいんなら私の仲間になる?」


沈黙が帰って来る…

が否定的な雰囲気もない、迷っているんだ。

確かに人間もエイリアンも仲間なわけじゃない。

私だって彼らを無条件に信用していいのか分かっていない。

ただこのエイリアンからは共闘出来そうな何かを感じた。


治癒の泡を小瓶から取り出し負傷した手につけてやる。


「はっきり言うけど、あなた達だけじゃ勝てない。」


エイリアンがびくっと反応。

何となくあたしが言っている意味が解っているようだ。

ヒト型エイリアンはある程度の知性があるのかも。個体差もあるかもしれないけれど。

ヒト型はしばし沈黙したあと飛び出していき、戦闘を再開。

しばらくエイリアンのチームはゾンビと戦ったが、

最後には苦しい空気の中撤退した。



____翌日


----ウェンディゴ



様子を見にいった。

この日も彼らはゾンビたちと戦っていたが、昨日よりも動きが鈍くなっている。

息も絶え絶えでやっとのことでゾンビたちを相手にしているようだった。

特に乱戦を極端に嫌がる個体が何体か。

仲間がゾンビ化したのがトラウマになっているのかも知れない。


例のリーダー個体も慎重に戦うように指示し始めている様子。


私が森で存在を知らせると

近くまで気配が来たが姿を現さずに帰っていった。

治癒の泡など魔女のアイテムを置いて帰る。


その翌日もウェンディゴまでやって来た。

森の中で私が存在を知らせると今度は姿を現して私の目の前に。

傷だらけであった。

噛まれてはなさそうなのが幸い。

他のエイリアンたちも現れる。

雰囲気で理解する。もう覚悟は決まっているようだった。


「使徒になるのね?」


傷だらけのリーダー個体は臣下の礼をとるように膝をつき、

首を前に差し出すように頭を垂れる。


右手からWitcheryの十字短剣をだしてエイリアンの肩に置く。

私の心臓が強く脈打ち跳ねる。

短剣が輝く。


エイリアンのリーダーの体も煌めきはじめる

ヒト型の体内から円の中に十字があるデザインの銀色のエンブレム

が出現、エイリアンの胸に浮き上がりそれが共鳴。

十字短剣にそれが属した。



===ヒト型エイリアン 小規模勢力 領主個体

領土 紛失状態


使い魔 → 使徒エイリアン化 受諾。


領主個体が降伏→臣下、進化。


---名づけを。

「私の剣になって。グラム。」



---領主恭順

使徒となりました。

グラム配下の個体もWitcheryに編入。



----固有アビリティ「???」発動。


人型エイリアン グラムは

ハイ・ヒューマン型エイリアンから

使徒 ハイ・ニンジャ・エイリアンに進化。

-----


そしてその場でWitcheryの短剣が。

十字短剣についていた鎖が振り子のように動き出し、鐘が鳴った。

小さな鐘から出る音とはとても思えないような音が

辺り一帯に響く。


目の前のエイリアンの外見が変化していく。


体躯は僅かに大きくなり、外骨格の筋肉のような装甲に覆われた。

目鼻はないまま、顔つきや骨格もよりエイリアンらしさを残しながら洗練された印象。

纏うマナの様子が今までとは段違いだった。


変化の最後に強く光が迸り、グラムが大きな咆哮を上げた。

その光と音で、いやマナの奔流で敵に気づかれる。

千以上のゾンビたちが森を目指して動き出す。


私とグラム、そしてその配下14体のエイリアンたちも一斉に逃げ出す。

グラムに南のほうで合流することをチャネルで伝える。


ヒト型エイリアンゾンビの群れが

他のゾンビに先駆けていち早く森に侵入してくる。

出会い頭にモロトフを2発ほどエイリアンゾンビに投擲。


グラムも敵のほうへ顔を向けて口を大きく開く。

コシャン!

という音とともに何かが発射された。


着弾地点で小規模な爆発。


固まっていたゾンビが10体近く爆死。

グラムは忍者のように跳躍して木々の間に飛び込んで行き姿を消し

それに配下たちも続いた。


森を抜ける前にミネルヴァに狂気のスモークボムを上空から落としてもらう。

60体以上のエイリアンが敵と味方が識別不能に。

手あたり次第に互いに襲いだす。


追いかけてきていたゾンビの先頭集団が大混乱に陥いっている間に

隠密モードを発動。その場を離れた。


一度ペアマウント湖北西の岸の近くにある森で

グラムたちと合流してから領土の泊地へ帰還。


停泊所近くの小屋でみんなにエイリアンたちを紹介。


「すごい! 仲間が増えたね!」


ルーシーは喜んで言った。

しかしイーヴィーは神妙な顔つきで警戒するような表情。


「いや、安心するのはまだ早いとおもうよ! まだエイリアンの心が残っているかも!」

「いや大丈夫だから。イーヴィー…」




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