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ダブルサイココライド ーSaga of Puppeteer ー   作者: KJK
4章 Witchery  魔女と湖畔の街と革命の鐘
31/53

2話 生存者と小熊


ペアマウント南地区 校舎



二人を連れ3階に上がる。

廊下の奥にいたゾンビを駆けていき倒し、振り返ってジェスチャーで来てと伝える。


梟が割れた窓の隙間を潜り抜けるように入って来て私の肩に停まった。

2人が目をパチクリさせる。熊は興味津々だが恥ずかしがっているように

美人な子の影からミネルヴァを見ていた。


「この梟の事は後で、取りあえずここで話そう。」


目に入った職員用の部屋に入るように二人を促す。

何故か熊も一緒に入ってくる。

この子たちを保護者の様に認識しているのかもしれない。

とりあえず。


「これまでの経緯を聞かせて。」


エヴァンジェリカと名乗った茶髪の子が答える。


「うん、わかった。こっちも一杯聞きたいけど…」

「そっちからお願い。」

「うん。えーとどこから話せばいいのか分からないけど、

大学の休みで友達とこの街に遊びに来てて…」

「この子のことだよね?」


背の高い子に顔を向けて聞くとエヴァンジェリカが気まずそうな顔をした。

え、違う?


「えーと、この子は友達じゃなくて、いや友達でもいいんだけど。

この子は今日ゾンビから逃げてる最中に知り合った子なんだ。」


「そうなんだね、友達は?」

「し、し、死んじゃった……」

「何人いたの?」

「ふ、2人、私含めて3人で来てた。」


肩をすくませながらエヴァンジェリカが言った。


「何があった?」

「えっと、知り合いのガレージで車の改造とかしてて、

そのあと海に行って釣りをして。」


車の改造なんて出来るんだ。凄い、私はそんなの出来ない。


「で、そのあと私はガレージにまた戻って… まだ夕方くらいだったけど。

うたた寝してて。私よく不規則なタイミングで寝るから。

キッチンとかでも寝ちゃうし。」


珍しいな、と思いながら聞く。


「うん、で起きて車で皆で止まってる別荘のほうに戻ろうとした

時にゾンビ、あの動く死体を見てびっくりして車でそのまま逃げて……」


「別荘についたらドアが壊されてて、

……それで、そこで友達が死んでた…」



―それですぐに車に戻って逃げて

そしたら霧がどんどん濃くなってきて

車で街のほうに来たらもっとゾンビが出てきて車の音に反応してきちゃうし

道が狭くて簡単に出れないから急いで

アクセル踏んでゾンビを撒こうとしてたら袋小路に入っちゃって…


ーそれで車から降りて隠れながら逃げて、

途中でこの子や他の人たちと合流出来たの。

熊はよくわかんないけど、何かあたしたちと一緒に逃げてる。

怖いんだと思う。成獣じゃなさそうだし、あと人に慣れているみたい。

ブラウンじゃなくてブラックベアだから大人しくてそんなに狂暴じゃないかも。

学校に入る前の大通りから一緒にいるけど、何か自然に一緒にいる。


エヴァンジェリカ。イーヴィーはダムが決壊したかのように

一気にまくし立てるように喋った。

息が乱れているのに自分で気づいて整えている。



もう一人の子。マネキンのような坊主頭に眉なしの

身長188くらいはありそうな子にも話を聞く。

名前はルーシー。


彼女にも話を要約すると。


他州からここではないもっと東の街に家族で旅行していてその帰り道だった。

お父さんの実家があった街らしい。


ここペアマウントを通り過ぎる手前のガソリンスタンドで

突如としてゾンビの大群が現れ人々に押し寄せた。

数は不明。兎に角一杯だったとルーシーは言った。


両親とそこに居合わせた人々と逃げ回ったり隠れたりしていた。

陽が沈む頃には母も含めて一緒にいた人はガソリンスタンドで殆ど死んだ。

ルーシーの父親が学校のほうがゾンビが少なそうだといって

向かっている最中にイーヴィーや熊と出会ったらしい。


確かに。実際にゾンビは少なかった。

この学校はフェンスや塀がかなりしっかりしていた。

ゾンビはよじ登らなきゃいけないようなものは、

積極的には乗り越えてこない傾向が確かにあるようだ。


入口が閉ざされている建物は比較的安全かもしれない。

街を探索している時にもそれは感じていたし。


そうか。ゾンビは意識自体が希薄だとしか思えない。

目的や意図がしっかりしていないのならば……

必要がなければ無駄にエネルギーを使いたくないのは他の生き物と同じなのだろう。


そうだ、エネルギーが無ければ動けないのはゾンビだって同じ。

体が死んでいるのなら尚更で。

それってもしかして…



あとでミネルヴァと一緒に街のゾンビ共を確認しに行ったほうが良いかもしれない。


2人は質問したそうにこちらを見ていて、『どうぞ』と言うと。

恐る恐る口を開き始めた。


何でそんなに強いの? 身体能力凄くない?

杖で触っただけでゾンビを倒しちゃったのは?

その梟はペット?


「私、魔女なんだ。それも少し説明するね。」


2人が驚いた顔をしたが説明を始めると緊張したような面持ちで聞き続けた。

簡単に説明を終えて。


「さてと。キミについてはどうしようか?」


目の前のまだ成獣になり切っていない子熊が首をかしげて見返してくる。

この近くに動物園なんてないだろう。

熊が生息してるのかも怪しい、というか知らない。

知識がないが恐らくこの州に熊はいない。というかこの大陸には熊がいないと思う。


ただエイリアンや、小鬼など

実際にいないはずの生き物が既に出現しているのだから絶対はない。

あとこの熊は人に慣れすぎてる。


サーカスが近くまで来てたのかな?

2人に聞いてみるとブルネットの子

エヴァンジェリカがサーカスのフライヤーなら何処かで見たといった。

ただ今どきのサーカスは動物愛護の観点から

サーカス熊自体少なくなっている気もする。


サーカスじゃないなら… 謎だ。

動物園に護送されている最中だったとか? その可能性もありそうだ。


そうだ。使い魔!

熊の目の前に移動して目線の位置をあわせてかがむ。


「お前は私と契約する?」


手を差し出すとクマはきょとんとして、少し間をおいてから私の手の甲にキスをした。


お互いの心臓が脈打ったのがわかる。全身にマナが巡っていく。

私と子熊の間に繋がりが出来た。


「君は私の使い魔に成った。

名前は何にしようか。」


全然思い浮かばない。

エヴァンジェリカとルーシーに相談してみる。


エヴァンジェリカは目を輝かせて、任せて!

とよくぞ相談してくれたと言って親指を立てて見せてくる。


「OK、いくよー! このクマの名前はパンダです!」


どう? と、わくわくしてるような表情で聞いてくる。


「いやぁ、パンダは嫌だな。」

「じゃあねぇ、うーん。コブラ!」


どう? と自信ありげに聞いてくる。


「うーん、コブラかぁ。面白いけど……」

「待って待って! じゃあねぇ。T34!」


「いや、ちょっと良くわからないし。車か何かの名前?」

「違います、戦車です! でも大丈夫! とっておきのもありますよ! ゴリラ!」


どう? ん? とドヤ顔が混じった妖艶な表情で聞いてくる。


「ゴリラはなぁ…」


ルーシーは後ろで全部いいじゃん! などと言っている。


イーヴィーに私もなんか出してみてと言われて…


「えー、わかんないよ。」

「何でもいいから、出してみたらいいんだよ! 

あなたなら出来る! なんたって魔女なんだから!」

「じゃあグリーンティー…」


むむむ、とエヴァンジェリカが反応して。


「いいじゃん!グリーンティー! ほら! 今日から君はグリーンティーだよ!」

「いやいや、本当に? なんかコブラとどっこいどっこいな気がするけど。」

「じゃあコブラにする?」

「じゃあそうする。」


といったらエヴァンジェリカは少し驚いて『え? コブラでいいん?』

と聞いてきた。


「うん、いいよ。コブラいいじゃん。」

「いやほんとにいいの? …コブラだよ?」


エヴァンジェリカの引いてる感じで怖くなった。


「えーとじゃあ、オスカーで…」


というわけでグリーンティーはコブラを経てオスカーになった。



名前も決まった所で立ち上がり手のひらを天井に向け胸の前に。


私の目の前にうっすらと魔力で出来た魔法陣が出現。

魔法陣からはマナが炭酸の泡のように少し立ち昇っている。

杖をその魔方陣の中心へ通すと魔法陣が杖に収束し煌めきだす。

輝く杖をオスカーの肩へ杖を置く。


杖から煌めくマナが小熊に移っていく。

オスカーはマナを受け入れることに抵抗感はないようだった。



オスカーが使い魔になりました。

オスカーの位階上昇が可能。

熊 オスカーは

熊型魔獣 オスカーに進化しました。

固有アビリティ「???」が発動。


熊型魔獣オスカーは

「月の怪物オスカー」に発展しました



---------オスカー 

月の怪物 lv1

技能:「不可侵の毛皮」 分厚い毛皮はさらに怪物を怪物たらしめる。防御力大上昇

---------


技「怪物の前腕」を取得。


正式に使い魔になってオスカーは全体的に筋肉質に、体も一回り以上大きくなった。

サイズはもう成獣並み。


毛並みがミネルヴァのように黒の中に紫がすこしだけ煌めいている色に。

顔つきなどはブラックベアーから何か違うものに変わったように見えた。

熊には詳しくないのでそれ以上の変化はわからなかった。


2人には何も説明せずにやったからか唖然としていた。

エヴァンジェリカは弟子入りしたそうな表情でこちらを見ている…

ルーシーは茫然としていた。


「さっき言ったでしょ? 私が魔女だって話。」



改めてもう少し詳細に2人に私の経験を話す。

魔女になったことだけでなく最初はショッピングモール。

その後なぜか普通の世界になり

今度は違う街でゴブリンが大量発生してここに来てたのは

州都に戻っている途中の休憩の為だったこと。

霧は私にとっても危険なこと等。


ルーシーはそこまで聞くと一瞬固まって。


「え、待って! もしかしてここから出ていくの!?」

「そのつもりだけど…」

「待って! 連れていってよ! 私たちここで住めないよ! 

見捨てるの!? 強いんでしょ!? あなたがどうにかしてよ!」

「……」


沈黙が場を支配する。

ルーシーははっとしたような表情になって


「ごめんなさい、いきなり。パニックになっちゃって…」


「……私だって何でもできるわけじゃない。もし足手まといになるならそれは負担に感じる。

もし、何もできないあなたを私が面倒見続けなきゃいけないなら、そうして当然だと思うなら…」


正直私は彼女から何かプレッシャーを感じている。

自分の気持ちをかなりストレートに口に出してくるけど

私にとっては精神的に負担に感じるのだ。何故だろう。

気持ちが分からないわけでは無い。


彼女の父親のことも。何でだろうか、よく考えてみるとなぜ自分が

こんなに不安を感じているのか理由が

直ぐには浮かんでこなかった…


彼女は自分の気持ちは主張するけど

私の気持ちや負担を無視しているように思えるから?

彼女の言い方から罪悪感を利用されてるように感じる? 


彼女の父親はゾンビだ、相対したら殺さなきゃいけない。

放置するのもどうなんだろう…

感染が広がるのでは、一瞬頭にそれがよぎった。


もし彼女の父を私が倒したら恨まれるんじゃないか、

この子は精神的に不安定になりやすそうな気がするけど

本当に信用できるの?

助けた子に理不尽に逆恨みされるなんて嫌だ。

それが今私の懐に入り込んできて不安を感じてるのだろうか…

爆弾の面倒を見なければいけないような感覚。


彼女たちの事を置いていくからね、なんて話をしようなどとは思ってなかった。

同じ生き残りの人間同士だし。助けるのは当然、助け合いたいとも思う。


でも州都に向かっていると言った時彼女は連れて行ってなどではなく

見殺しにするの? あなたがどうにかしてよ! と反応した。

それが不安なんだ。


(私だって同じ人間なんだよ! こっちのことも気遣ってよ!

アンタの気持ちはアンタが十分気遣ってるのに。もし逆恨みしたら許さないから!

人を助けて後悔させないでよ!)


ふと自分の心の底からそんな声が聞こえた気がした。

まだ何も起きてないはずなのに。


(何でアンタは私の気持ちがまるで存在しないような気分にさせるの!?)


自分の中にこうやって叫んでいるような声が眠っていたのを見つけた。


インナーチャイルドか、内なる声…

この子にはこういう声が良く聞こえているんだろう。

自分に素直になればもっと聞こえるのかな…



自分も彼女のように内なる声をたまには…

その通りに生きたい気持ちもあるのかもしれない。

正直にか…


でも。切り替えていこう。

一つ、気づきや学びはあった。

ありがとう、ルーシー。少し無理やりだが感謝しておく。


…ゆっくりと息を吐く。


「ルーシー。面倒はどのくらい見れるかわかんないし、見たいとは思ってるわけじゃない。

負担もかけてほしくない。」


「うん…」

「でもすぐに見捨てる理由も特にない。まだすこしは余裕もあるし。

勿論あなたに死んでほしくない。」


とりあえず…


「霧はまだまだ濃い。霧の怪物はちょっとやばそうだからこの街にはまだ滞在する。

あなた達を助けてもいつまで面倒見ればいいのか分からない。

だけど、私と協力しあって生きていくつもりがあるならついてくればいいよ!」

「うん!」


と話していた矢先のことだった。


それは起こった。

オスカー

月の怪物 レベル1

アビリティ

「不可侵の毛皮」 分厚い毛皮はさらに怪物を怪物たらしめる。防御力 大上昇

スキル

「怪物の前腕」


不可侵の毛皮: 分厚い毛皮は怪物を怪物たらしめるように攻撃を通さない。

防御力 大上昇 


怪物の前腕:マナが込められた前腕からの一撃。怪物の前腕は対象を破壊する、打ち飛ばす。


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