1話
RENEE
X大陸 XX州 東部地方
州東部にあるペアマウント市に着いた。
元居た別荘がある森から徒歩で3時間ほど。
湖畔にあるここら一帯では比較的大きな町。
リュックを背負いながらアスファルトの道を歩いて
ペアマウントシティと書かれている標識を通り過ぎる。
名前は聞いたことはあるけど来たことは一度もない。
「湖畔の街ペアマウント」
ここからずっと西に進んで私の地元州都に向かうつもりでいた。
ここらはまだまだ州都からは遠く、都市外側の郊外に着くまで
徒歩であと7、8時間はかかるだろう。
途中何度か霧に行く手を阻まれたが、何とか切り抜けられた。毎回突っ切るのは得策ではないし
迂回しなければいけないこともあるが、相棒の梟が霧を通れそうなルートを上空から
示してくれる。
日はまだ昇り始めたばかり。
時計が壊れていてもいなくとも今は早朝。
気温はひんやりとして過ごしやすい。17度くらいか。
昨日雨が降ていたせいか道路は少し濡れていた。
歩きながら汗をぬぐう。
暑くなくともここまで歩き詰めであった。
腹も空いたしシャワーも浴びたい。
この街ペアマウントに立ち寄って休憩するのが良いように思えた。
街に入ったら休憩場所も自分で作って温水が出なくても自分で水を温めてシャワーくらい浴びれる。
よし、そうしよう。
街の周りには森と山と農場。
街の中心にあるはずの湖畔を目指して歩いていくと
直ぐに湖と中州を繋ぐ橋が見えた。街中は霧が殆ど無かったおかげで快適に移動できる。
中州ではキャンプやBBQが出来るようになっており
橋は中州と向こう岸にある区画をつないでいる。
橋に繋がっていく2車線の車道に破壊された車がいくつも放置されていた。
橋の手前にある建物の中に入る。
民家ではないけど、お店という感じではない。
湖の近くに来た人がくつろげるようなスペースのようだけど。
貸しボート屋などが所有していた施設かもしれない。
施設内に入る前魔眼で3体ゴブリンが潜んでいるのが見えていた。
廊下に隠れていた小鬼に近づき頭を杖で小突いて仕留める。もう2体も同じように。
小鬼たちはやけに傷だらけだった。
リュックをテーブルの上に置いてロビーにあるソファに腰を降ろす。
溜息を一つ。少し目を閉じて神経を休ませる。
窓の外を見ると少し霧が出て来ていた。
魔眼で見るとあの通ってはいけない霧では無さそうだった。
小鬼退治のコツは随分掴めてきた。相当数に囲まれてもそうそう遅れは取らないだろう。
もう日課のように仕留めているのだ。
さっきのゴブリンでちょうどレベルアップした。
----ルネー
魔女 レベル4→5
技能:??? 魔眼 使い魔ミネルヴァ 使い魔2 チャネル
魔女の呼吸 ウィッチクラフト 隠密行動 見えない魔の手
水魔法
新たに水魔法を取得。
水魔法で出来るのは水を清浄化したりシャワー代わりにしたり、
あとは水球を宙に浮かせてウォーターカッターのように相手に噴射できた。
かなりのダメージを与えられるかもしれない。
欠点は遠くまで水球を飛ばせないこと。
至近距離から噴射しないと威力が相当弱くなること。
ウィッチクラフトで作れる燃える水と組み合わせでも良いかも知れない。
他にも水魔法の良い使い方ないかな。思い浮かばないので今度にする。
休んでいると外に気配。立ち上がる。外を見ると傷ついた人間?
いや、違う。どういうこと? 死体が動いてる?
それは動く死体の群れだった。
さっきの小鬼達もしかしてアレから隠れていた?
見通しの魔眼を使用。
この建物から湖の橋手前の駐車場とそこから遠くない
桟橋と半ば一体となっている湖畔のレストラン前には多くのゾンビ。
ゾンビだ……
ゾンビってあのゾンビ!? 犬みたいなエイリアンに巨大蜘蛛。
その後は小鬼と来て次はゾンビ!いい加減にしてくれ! とつい声に出そうになる。
なんなの本当に!
ゾンビがいる方向を睨みつけ
心の中で地団駄をふみながら悪態をつく。
疲れと苛立ちを自分の体から追い出すように息をふぅっと吐きだした。
ミネルヴァと共に魔眼でゾンビを建物の中から観察。
マナの感じから見て小鬼よりは少しは強いかも知れない。
ゴブリンのゾンビは生きてるゴブリンと大して変わらないかむしろ弱くなってそうだった。
感染してしまうなら戦闘力よりそっちの方が問題だから全く安心できないけど。
殆どのゾンビは人間が元となっているようだった。
……そして未だ姿を見せない街の住人。
まさかこの街の住民がゾンビなった?
ゾンビたちは数十体ほどいる。
もしこれがゾンビ映画なら嚙まれれば感染することになるが。
大丈夫だろうか。絶対に攻撃を喰らわずに相対しなければいけない相手。
動く死体共はこちらには気づいていない。
施設内で物を漁ってウィッチクラフトをする。兎に角使えるアイテムは欲しい。
魔女の救急セットに、あとは魔女のモロトフと毒の結晶石。
毒なんてゾンビに効くのだろうか。
それだけじゃない、この街に生きてる人が全員ゾンビになったとしても数が少なすぎる。
まず人間の死体自体ほとんど見当たらない。
全員ゾンビになったわけでは無い? あのスーパーマーケットの時からだ。
独りになって見回っても人間とあまり遭遇しないのが気になって来ていた。
隠密行動の技を使用。
気配が希薄になり、意識を向けられにくくなる。
注意を引かないよう気を付けつつ街を探索。
休憩をはさみつつ生き残りの人間がいないかも見て回る。
人は見つからないけれどその代わりの様に食料品店を発見。
見つけた物資はもう少し安全そうな建物に移動させておく。
そのほかに見つけたものはゾンビとか、ゾンビ犬とか…
この1時間くらいで見たゾンビは2百体ほど。
かなり数が多いけどまだまだいてもおかしくない。それでもこの街「ペアマウント」
の人口にはとても足りない。この規模の街の人口はどのくらいだろうか。
周辺の住宅も含めてこの地域は…
2万人以上は住民がいたのではないかと思ったが、
町の人口など予測しようと思ったこともなかったので自信はなかった。
群れからわずかに離れていたはぐれゾンビを背後から近づいて倒してみる。
大丈夫問題ない。数体のゾンビを気を付けながら倒し、物資を漁っている間に日が暮れていく。
今日入って来た道を見ると
街の外はカーテンでもかかっているかのように霧が濃かった。
この街で一晩過ごしたほうがいいか。
夕焼けが終わり始めていて街灯は殆ど機能していない。
もうすぐ街は暗闇に飲み込まれるだろう。
独りで人間の文明が感じられない世界の中で歩いていた時も不安だったけれど。
人っ子一人いない街も中々寂しかった。
ゾンビは蠢いているし、人間の道具や建物などがあるだけマシだけど。
今日は桟橋のレストランをねぐらにすることに決めた。
1階はゾンビが入ってこれないようにして2階で過ごす。
何とか寝室と呼べるような物を作り、その後は使い魔とくつろいでいた。
因みに今日はミネルヴァがレベルアップ。
---------ミネルヴァ
魔眼梟 レベル2
技能: 見通しの魔眼 共有
スキルとアビリティが取得できます。
以下の中から選んでください。
・感知する魔梟の耳
・アクロバット飛行
・回避up
感知で。
「感知する魔梟の耳」を取得しました。
夜も更けたころrスト卵2階から抜け出し街の上空を散策していたミネルヴァの耳が
人間の叫び声を感知。
湖とは反対方向にある街の学校の校舎に生き残りの人間がいたようだ。
急遽飛び起きて学校に向かう。
学校の敷地内に入り魔眼で中の様子がわかる距離に入る。
校舎2階に人間のマナが6。動いている、いや逃げている?
ゾンビが校内に10体ほどいた。
走りながら昇降口で2体倒す。
階段でもう一体。そいつの横の床に首を食いちぎられた人間。
恐らく私が着くほんの少し前まで生きてた人間だ。
上階にいる人間がゾンビともみ合っている。倒れた。
また人が一人やられたのが魔眼で見えた…
速度を上げる、間に合え! 間に合わない…
もう一人やられた。
2階に上がり暴風のような速さで廊下にいたゾンビを1体仕留め
ちょうど人間を襲おうとしていた個体も同じ勢いで仕留めた。
なんとかここに固まっていた生き残りの人間2人は助けることが出来た。
残りのゾンビは1階と3階に1体ずつ。
まだ安心できないけれど、息を整えてから
2人のほうを見た。生き残りの人間だ。
それともう一人ではなくて…
そこにいたのは、
2人の女の子と…
熊?
まだ成体になりきっていない黒熊がおどおどしながらこちらを見ている。
人間のほうは19歳くらいの栗色の髪で青目の美少女。
クールな顔立ちの中にもどこか守ってあげたくなるようなかわいらしさもある。
綺麗で思わず見とれてしまった。
その子が不安そうにこちらを伺っていた。
両腕で身を抱きしめるようにしている。
もう一人は二十歳くらいのスーパーモデルのような女の子。
染めたような金髪の坊主頭で眉毛がない。
瘦身で身長は180センチ以上はある。
こちらの子も驚愕したような顔でこちらを見ていた。
その時背後で気配。振り返ると
廊下でやられていた人間の死体が起き上がる所だった。
音がして二人もそちらのほうに目をやって、
ヒッと息をのむような声を出した。
ゾンビは直ぐに転んで
なかなか立ち上がれなそうにしている。
「お父さん!」
モデルのような子が叫んだ。
死体が立ち上がれずに這いずり回りながらも、こちらに近づいてくる。
私が杖を手に構えると
彼女が私を見る…
私とゾンビを交互に見て言った。
「い、いや! 嫌だ! お願いお父さんを殺さないで!」
……
何と返せばいいのか分からなかった。
ゾンビが近づいてきたときに。
「じゃあ、どうすればいいの?」
と言うと。
「だって! お、お父さんだもん! 嫌なの! 絶対、殺さないでよ!」
(もう時間がないよ、近くまで来すぎてる!)
眉なしの子が腰が抜けたのか座り込む。
せめて自分で立ち上がって離れてくれ!
怒りが湧いて無理やり女の子二人の体を掴んで距離をとらせる。
背の高い女の子は私にしがみついてと泣きわめく。
しかも立ち上がらせようとしてるのに自分から座り込む。
「ねぇ! 立ってよ! それに静かにして!」
というと震えながら頷いて黙った。
このまま目の前のゾンビを殺そうと思ったが、……決断できなかった。
とにかくここを離れる二人について来るように言う。
もう一人のブルネットの子は大人しく従ってくれた。
眉なしの子は必死に
「お父さんは!? お父さんはどうなるの? 見殺しにするの!? 」
「わからない! ゾンビは連れていけない! 何も出来ない! 早くついてきて!」
背の高いマネキンみたいな子は思い詰めた顔で
何度も変わり果てた父親のほうを振り返りごめんなさいと謝り続けながらついてきた。
廊下を速足で移動している最中
死体だと思っていたゾンビが立ち上がって
こちらに襲い掛かるようなそぶりを見せた。
こちらに飛びかかるのに失敗して再度床でもがいている。
(心臓が飛び上がった、このゾンビ!)
私にどうしろというのか。この子もそうだ。こんな時に! 私だってゾンビは怖いんだよ。
理不尽さを感じさせる状況で対応を迫られて、苛立ちながら廊下を進む。
でも今すぐにあのゾンビを殺さなかったのは悪くない判断だっただろうか。
なにが正しいのか分からない、
殺さないを選ぶ余裕は少しだけあった。優柔不断だっただけかも知れない。あの子に恨まれたくないとか。気を使ったのかもしれない。
今のように人情やモラルを意識しだした判断を繰り返していたら
いつか私は死ぬんじゃないかな。それは嫌だな。
気をつけなきゃいけない。
自分を優先させてあげないと、あの子マネキンみたいな背の高い子。
あの子の気持ちや記憶に私が責任感を感じてちゃいけない。
恨まれたとしてもそれはあの子の問題。当たり前だけど…
何かモヤモヤしたものを感じながら
私は私に対して何がしてあげられるのか。何が正解なのか。
とこの時の私は考えていた。
ルネー
魔女 レベル5
固有アビリティ「???」
アビリティ
「魔眼」 「使い魔契約 ミネルヴァ」 「使い魔2 空き」「共有」
スキル
「魔女の呼吸」 「ウィッチクラフト」 「隠密行動」 「水魔法」new!
水魔法:
水関係の魔法が使用可能になる。魔法の質と幅は術者の知識、適正、レベル依存。
ミネルヴァ
魔眼梟 レベル2
アビリティ「見通しの魔眼」 「共有」
「感知する魔梟の耳」new!
感知する耳:感知系アビリティ、自覚的な魔眼に比べて受動的。
魔眼と違い死角がなくマナの揺らぎを感知可能。
距離と精度は能力者の適性とレベル依存。




