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ダブルサイココライド ーSaga of Puppeteer ー   作者: KJK
3章 異界衝突 新世界戦争
22/53

9話 野良弟子と仲間達


-州都の何処か。

坂のある狭い路地 いくつかの飲食店と駐車場 ビルに囲まれた一角


Cindy  Side



もう無理かもしれないな。皆と合流するのは…

漆黒の闇しかない雑居ビルの中。冷たいコンクリートの壁を背に

体育座りをしながらシンディは思った。


夜になると、寒い。アムスがいたころの様に火を起こして暖を取ることは出来ない。

夜は気配を消してやり過ごす時間だった。別に昼も隠れているけれど…


この場所を選んだ理由は至極単純で足場が悪い場所や瓦礫が多いビルの中には

河馬型のような大物や強そうな魔物は居なそうだと思ったからだ。

何の保証にもならない子供じみた願望ではあったがそんなことはシンディ自身も良くわかっていた。


突如勃発した魔物の大抗争。

師匠の二人。カトー、アムス共に離れ離れになり

以来合流出来ないでいた。いや二人は出来たのかもしれない。

逆にあちらの方が心配しているのかも知れなかった。


そこまで考えたところで

今自身がどうするべきかにシンディは意識を戻す。


まずはどうしよう…

魔物から回収した素材でマジックアイテムを作ろう。

何か良いもの作れないかな…

今日はイヌ型と鹿の魔獣の皮が入手できた。


マジックアイテムDIYのための

魔法陣を地面に書いて素材を置く。手からマナを素材に触れていく。

魔法陣が明滅するとシンディが触った箇所から素材が共鳴するように微かな光を灯した。

素材の裏側から懐中電灯を当てているようだった。


少しずつ時間をかけて形状、質感が変化していく。

ある程度具体的胃イメージしながらシンディ自身の手で成形していかなければならない。

シンディにその経験は無かったがろくろを回している感覚に近いかもしれない。

勿論アイテムは回転していないが。


10分も経たないうちにアイテム完成。


毛皮のフード付きローブに毛布も作成。

エイリアンの皮も謎毛皮のアイテムに変化した。

暖かいし、防御力も通常の服よりは期待出来そうで。

血行促進してくれる機能もあった。


出来栄えに満足するとシンディはさっそくローブを羽織り壁に再び背を預けて座り込む。

寿命が長いマジックアイテムの蝋燭を一本だけ火をつけて

目の前の床に置きじぃっと眺める、揺らめく炎が落ち着かせてくれる。

何も考えなくていい。自身の置かれている状況さえも。

揺れる炎をじっと見つめながら毛布に包まる。


「カトーは呪いを受けてちゃってたね… 出会った時につけてた呪いだよね。

大丈夫かな。」



師匠その2は運が悪い人かもしれない…

カトーがあの場所に留まり続けるのはまず無理。

とにかく離れた場所にいかないといけなくなったはず。

アムスは移動力が一番低いけど結界があるから大丈夫かもしれない。

カトーはどこか遠く、アムスは不明。


あそこから南はもう港だし、あの状況からは行こうと思うわないだろう。

北、東、西。ビルが崩れて一斉に逃げ出したとき、アムスは西へいった?

直ぐにお互い見失ったからわからないけど。私は少し北の方か。でもまだまだ都心に近い。

もしかしたら一番あそこから離れていないのは私?


カトーは多分、家が北東方面だ。

咄嗟に都市の中心から魔物の軍勢から追われている状況。

知っているルートを選んで逃げていく可能性は高いかも。

それに北東方面は明らかに私たち2人が向かわなそうな状況。

あそこからだと魔物が多くいたし。

あたしたちに魔物の大群を牽引しないようにしてくれていたなら…


仮にそうならカトーは北東方面に向かったはず。

あ、彼自身もあたしとアムスがそれを覚えていることを念頭に置いている可能性。

落ち着いたら、北東方面に行ってみようかな。


今はとてもその余裕はないしお互いの無事を祈るしかないけれど。

探そうと思ってあそこら辺をうろつくなんて出来ない。


おもわず溜息が漏れる。これから先のことを考えると気分が重くなった。


カタッ


ふと割れた窓ガラスのほうに目をやると

鳥が意味不明な言葉を発しながら入ってきた。


(…オウム?)


「ベラボォメェェ! ヨォヤットミツケタワ! コンチクショ、フェー。ツカレタ!」

(何こいつ。)


「ヤイ! シンディ、オメガ! シンディヤロガイ。 伝言ジャ! ボケー、ナスゥ。」

(こいつ… 攻撃したほうがいいの? わ、わかんない、どうしよう。)


「カトー様から伝言ジャイ、ドノクチデ、イウトンネン、マンネン。ジャケン、コン糞ヤロ。」

(こいつ、うざいし。 言葉も聞き取りにくい… ん?)


「え? ていうか今カトーって言った!? お前カトー師匠のパペット?」


「ダァレガ、マペットヤネンゴラァ! チクショウ!

傀儡化ナンゾ、解ケトンジャ! ワレェ。イマジャ最モ自由ナ傀儡ヨ。アホンダラ」

「え? パペットじゃないの? それともパペットなの?」


「ウルセー! 伝言キケェ! イクゾォ!」

 

オウムが硬直したように動かなくなると突然音声を再生するようにパクパク喋り始めた。


----------

おいアムス,シンディ。呪い受けた。

北東部のKジャンクション方面。

そこをさらに北に超えた場所を目指してる。

##地区の#ストリートに家があるから。

えー、あとはなんだろう…呪い解呪してくれー。

でももう大丈夫なのかも、弱まっているけどよくわからん。

あとこっちくるか?

お前らはどこにいる?

これ伝書鳩ってスキルを傀儡が手に入れたんだけどちゃんと届いてるかな?

もし返信できるならやってみてほしい。

----------



「ねぇ!これ返信できるの?」

「イヤ、デキネーョ! 閉店ガラガラァァ!」


「お願い! どうしても連絡取りたいの!」

「ムゥゥリィィーッス! バァーカ!」


「お前ぇ! マジでムカつく!」

「シラネェ! キニスンジャネェ!」


そうだ。エイリアンスカウト!

交渉開始!


「仲間になって!」

「そこをどうにか」

「協力プレイしたほうがいいんだって、こんなご時世なんだよ? 

アンタ一人じゃ生きてけないって! そこわかってるの?」

「裏切らないよ、契約したら安心する?」


なんだかんだ交渉の末。バカオウムが仲間になった!

名前は特に無いらしい。じゃぁ私が名付けてあげるよ。


「うぅむ、じゃぁお前の名前はエリザベス!」

「シャラクセェェー!」




エリザベスとの交渉は…こいつは優柔不断で兎に角大変だった。


契約内容はエリザベスにマナのおすそ分けをすること。

エリザベスの成長と利益を考慮していくこと。

捨て駒にしないことだ。


OK!


なんかレベルが上がった!

なんで?

いやいいけど。


====

シンディ

野良弟子 レベル2→3

固有アビリティ「弟子入り」

アビリティ「スカウト」

仲間エイリアン「エリザベス(オウム魔獣)」


所有スキル

「簡易呪術」、「魔道具作り」、「気配消し」


---取得可能技。以下の中から2つ


・エイリアン交渉術 スカウト成功率 10%UP

・どうでもいい話 そこそこ警戒されにくくなる

・弟子の呼吸  コピー、学習速度 20%UP

・マジカルテント作成   休息補正


どうしよ、なにがいいのかわかんないよ!

うーん。

生き延びるのが優先だからね。

テント作成と弟子の呼吸。


「マジカルテント作成」取得------

「弟子の呼吸」を取得------



「よしっ!」


テンションが上がってつい取得のポーズをする。 

ただの小さなガッツポーズであるが

成長するたびに取得のポーズと名付けて

リチュアルにしようと思っていた。


さっそく周りにあるものでテント作成してみる。

マジカルテントをビルの中で作って休む。

入った瞬間から、心身ともに緊張状態から一気に解放される。

疲労を回復するためだけにある空間なのだと

本能的に理解しているように休める。


エリザベスもかなり気に入ったみたい。


(エリザベスって言いにくいな、あだ名付けようかな。

ベス、ベティ、リズ、リサ、エリー…)

どうでもいいことを考えているうちに

深い眠りに落ちていった。


________________明朝


州都何処かの雑居ビルの一室。


明け方、割れた窓から陽光が差し込んでいた。

風が心地いい冷たさで肌を撫でる。

これほど良く眠れたのいつぶりだろうか。

5年に一度しか味わえないようないい眠りであった。


なんか元気がみなぎる!身体の調子も絶好調だ。

まだ少しボーっとしている頭でもそう思えてしまうほど。


エリザベスと作戦会議をしたところ。

いくつかやることが決まった。


・まずオウムに弟子入りして狂人の話を学ぶことに。


3番目の師匠がまさか、オウムになるとはね。


・カトーと合流するためにKジャンクションに向かうこと。

ベスが言うにはカトーは大量の魔物を引き連れながら移動していたから

今カトーの通った道は多数の魔物が徘徊している可能性があるということ。

つまりここから最短のルートで北東へ向かうのは危険。

力をつけることと、魔物をばらけさせるための時間を少し置くことが必要。

 

他にも魔物をスカウト。仲間して戦力UPしたい。

レベル上げもだ。


(今の私の強さだとエリザベスは不安みたい。)


というわけでベスに周囲を探索してもらう。

目的はお互いの成長とスカウトできそうな魔物探し。


このチームは一応私がリーダーではあるけど

WinWinであることが条件で、ちゃんとした合意も必要。

お互いが嫌がることをしそうな相性だと最初からスカウト失敗になる上、

攻撃したりすればその場で契約破棄となる。


信頼関係が大事。

ていうか。これさ、いきなり裏切られたらヤバいじゃん。

あ、でもそうなりそうな時点で契約成立しなくなるのか。

それは逆に良かったのかも。


新たな師匠であるオウムが外へ探索に。

ベスは出ていくときまで騒々しいのだが。騒々しい時といきなりだんまりして

ずっと無口になる時がある。ムラが凄くてたまに心配になった。


一人でいる間に師匠たちから学んだスキルを練習。

呪術に槍術、気配消し。アイテム作りも。


ひと通り終えた時に

エリザベスが帰ってきて何か発見したと報告。

いわれるままにビルの外に出ていくと。

2ブロック程離れた通りの開けた場所に一匹の犬の魔獣がいた。


犬というには少々大きい。狼? いや狼犬だろうか。

落ち着きがあり、堂々とした雰囲気。

地面に寝そべっている。


世界が変になってからはイヌ型エイリアンのほうがよく見かけてたけど

見た目がほとんど犬のモンスターもいる。見た目と身体能力以外何が違うんだろう。

スカウトはできるはず。今のところはエイリアンも動物も普通の動物よりも強そうなものは

全て魔物呼びして、その中でもエイリアンじゃ無い個体は魔獣呼びしておく。


ウルフドッグに近づいていくと

挙動が普通のイヌの魔物とちょっと違う。

目や耳、頭の動きもおかしい。 耳を使ってる?

もしかして目が見えてないの?


一匹で寝そべりながらエイリアンの死骸を漁って食べていた。

ほとんど食べるところがなさそうだけど。

エリザベスが近づいて行ってよくわからないことを話しかけてから、

こちらに戻って来た。


「センデーイ! センデェーイ!オイ ヤイ! サササ、ト。 

コーショーシィロォィ、セェーンデーイ!」


「センデイじゃなくてシンディだよ! うるさいなぁ!」


早速交渉してみる。襲い掛かってこないことを祈りつつ。

何となく話したり身振り手振りで話して。

こちらの言いたいことは伝わってるようだった。


「やったぁ! なんかOKでた!」


新しい仲間! 狼犬魔獣でもともと目が殆ど見えないらしかった。

ほんの少しくらいなら見えるらしいけど。

群れを組むのは抵抗ないみたい。

むしろ足を引っ張る可能性もあるからすまないとか言っている。


条件もエリザベスと同じでいいとのこと。

名前もないからつける。


じゃぁ、ハチ!

ハチで行きますか!


---------

狼犬型魔獣 盲犬ハチ


レベル2 

技 「超聴覚」「噛みつく」       

---------


ハチを連れてビルのアジトに戻って、身体を綺麗にしてあげて

少しテントで仮眠をとる。


ハチは超聴覚で、周囲の音を拾って遠くからでも

足音、心臓の音、息遣いまで聞こえてるらしく

見張りから索敵、逃走経路まで任せてくれていいと言われた。



え!? 凄い! エリザベスよりずっと凄いじゃん!

ふわふわとしたテンションになる。

宝くじに当たった時ってこんな気分なの?


昼過ぎに一度ハチの耳とを頼りに狩りに出てみた。

ベスも念のために上空から目視でサポートする。

たちまち一匹ではぐれてるエイリアンを見つけ

あたしとハチで倒すことに成功。



=======

今日の成果


イヌ型 2体

ゴブリン 4体

大きいゴブリン1体 

========


ヒト型エイリアンは避けておく、アレはだいぶ強い。

大ゴブリンとは初めてエンカウント。

ゴブリン3体分くらいの強さだと思う。

大きいのが何体もいればキツイけど。

特に問題なかった。





翌日も狩りをする。

成果は…

========

ゴブリン3体

イヌ2体

大きいゴブリン 3体

カメレオンの魔物 2体

========


カメレオンは仲間に出来ないかとおもったが交渉にすらならなかった。

でも見て盗んで擬態スキルを取得。


ちょっとだけ見た目が周囲に溶け込む感じだ。

カメレオン型やカトー師匠のレベルでは全然ないけど。

あるだけいい。






そして翌日には2匹ともレベルアップした!


シンディ

野良弟子 レベル3

固有技能「弟子入り」

技「師匠らの技、劣化版」「魔獣・エイリアンスカウト」


仲間「エリザベス(オウム型魔物)」



狼犬型魔獣 盲犬ハチ

レベル2 


技「超聴覚」「噛みつく」


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