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ダブルサイココライド ーSaga of Puppeteer ー   作者: KJK
3章 異界衝突 新世界戦争
20/53

7話  魔女の独り夜行軍* 呪い師の回想


Renee(ルネー) side


X大陸 X州 東部地方


使い魔である梟のミネルヴァと共に東部地方から元々住んでいた都市圏を目指していた。

X州州都までの道のりはまだまだ遠い。魔女に成った私の身体能力は通常の人間の範囲ではなくなり普通に走っていけば数時間、どんなに遅くとも5、6時間で着く距離ではあるのだけれど……


視界の見通しがまた悪くなってきた。道路の先は白い靄で覆われている。


「また霧だ。迂回しなきゃ…」

このように時折濃霧が現れて身動きできなくなる。

霧の中にいる影のような存在を避けなければいけないからだった。


こいつらが強いし厄介、思うように移動できない。

索敵をミネルヴァと連携しながら

なんとかやり過ごしているけれど…

最適なルートを何度も邪魔されて迂回させられている。

場合によっては20キロ以上の距離を何度も回らなければならないことも。

体力よりも、これが精神的に来るのだ。


呼吸の中に思わず溜息が混じってしまう。

しんどいな、本当に。…これからどうする? 足を止めて思った。


そろそろ陽が落ちるだろう。夜は霧が見えにくくなる。

私もミネルヴァも魔眼で常人とは比べ物にならない程夜目は利くものの、

それでも分かり難いのだ。一歩間違えれば命取りになる気がしていた。

基本的に霧の多い場所で夜の移動は控えたい。


山の中にある開けた場所で休息をとる。


「ねぇ、どうすればいいと思う?」


火を起こして暖を取りながら

話しかけると梟は首をかしげてこちらを見返してきた。

予想通りの反応に空しくなり、上を見上げ

夜の星空を体育座りしながら眺めていた。


「コーヒー飲みたいな。」


水筒にお湯が入っているから何か飲もう。

「夜だからやっぱりやめた。グリーンティとかカモミールならいいかも。」


そうだ。私の力… 使い魔スロットがもう一つ余っているんだ。

……使ったほうがいいのかな。どうしようか。正解がわからない。


「魔女だから黒猫とかいい感じかな。

いい感じってなんなの、そんなんじゃサバイブ出来ないよ。」


独り言を言い始めた時、また霧が出てきた。

立ち上がって火を消し荷物を背負う。


「また霧が出てきたよ、もう最低! 安心して眠れもしないし!

この黒い影たち、あなたたちさぁー! いつかホントにひどい目にあわせてやるからね!」


毎日追いかけっこだ、嫌になるが

慣れてきたしコツだって掴んできた。


とにかく地元の様子を見にいくんだ。こんな影なんかに構っていられない。

世界が変わったってホントに? この地域だけじゃなくて? 

確認しなくちゃ… 自分の目で見ていくうちに目的も定まるかもしれない。


そういえばあの人は生きてるかな?

前にあった人のことを思い出した。

どうだろうか。期待しないほうがいいかな…






@@@


Amos(アムス)  side


あの日。州都の中心でエイリアンや魔物の大抗争に巻き込まれた。

ビルは崩れ、聖域化も解けた。逃げ出して何とか体制を立て直し

結界を張り身を隠すことは出来た…


しかしアイツら、カトーとシンディとは合流出来なかった。


1週間以上前。世界が崩壊した日。

いや文明か。人の時代が終わった日。


幸か不幸か自分は助かった。そして不意に

新しい自分の情報らしきものが頭に流れ込んできた。

呪術師だとか、どんな技能が使えるだとか。いや、そんなに鮮明でもなかったか。

ただ何となくそんな気がしたとか、脳裏に浮かんできたという感じ。


重要なのは実際に俺が呪いやら結界やらに関係する力が使えるようになっていた事。

しかし呪いでこんな化け物達に一体どう対抗するのか。勿論幸運なことには違いないが

引き続き隠れ潜んで生き延びるしかなかったし。勿論それを実行した。

そうやってビルに隠れている時にシンディと出会った。


ブロンドのかわいいショートカットの女の子だった。20歳くらいで。

第一印象は性格が良さそうで素直で、だけど照れ屋な女の子。


俺は近くの会社で会計士をやっていて。

シンディはバーテンダー。近くのバーで働いていたらしい。

最初他にも生き残りがいたらしいが皆化け物にやられたと言っていた。


彼女も不思議な力に目覚めていてジョブは『野良弟子』だとか。

面白そうなジョブだと思った。本当にジョブでいいのかな?

ゲーム的過ぎるか。役=ロールでもいいかもしれない。

あれ、これもゲーム的か? まぁいいか、誰も答えなど知らないのだし。


その後自分の魔力が十分なじんだ場所を聖域化出来る事が判明。


【聖域】にモンスターはまず近寄らない。

人間も本能的に近づかない場所があるようにモンスターたちも聖域には入ろうとはしない。

この技能を初めて使用したときは思わずその場にへたり込んでしまうほど安堵した。


シンディは目を輝かせて呪術師の弟子になると言い出して…

断る理由も無し。もちろん了承した。家庭教師のアルバイトなどはやったことはあるが。

シンディは物覚えの良さ、いや器用さなら今まで見た中でも群を抜いていた。

あのジョブのせいだろうか? 元々呑み込みが早い子な気もしたが。


それからしばらくして……


駅から少しいったところにあるビル付近を

ヒト型エイリアンたちが駆けまわっているのに気づいた。戦闘しているのか?

注意深く見守っていると相手は人間だった!

人間がエイリアンたちと戦闘していた。


シンディも気づいて一緒に戦闘を見守った。

エイリアンに追われてる男。

執拗に何体ものエイリアンが男を襲っていたが、

エイリアン達の様子が何か可笑しい。


あのヒト型エイリアンは脅威そのものだった…

人間がやり合えるなんてとても思っていなかった。

複数のヒト型と互角以上に戦えている男。開いた口が塞がらなかった。

シンディと一緒に食い入るようにその戦いを見守った。



その男は坊主で黒髪、背は180くらいか。

筋肉質で整った顔、黒縁の眼鏡をしている。

混血か? 白人とアジア人との混血のようにもみえるが。

地中海系の人間のようにも見えた。


男は人間とは思えない身のこなしで

襲い掛かってくる敵をいなしつつ確実にエイリアンを減らしていく。


凄い… 

男の周りのエイリアンが妙な動きをした。攻撃されたエイリアンが

一瞬ガクっと全身の力が抜けたように崩れ落ちるかと思いきや

突然横の他のエイリアンを攻撃しだした。


その後も他のエイリアン個体が同様の状態に。

突然仲間を裏切り男と連携して他のエイリアンたちに襲い掛かる。

男は左手で何か操ってるような動作を頻繁に見せながら戦闘。


どんな力だ、それは。化け物を操れるのか?

この男もまた化け物なんだと理解する。

しかし男も疲弊しているのは間違いなかった。


ここは聖域化出来たし。どうにか呼び寄せようとシンディと話す。

鏡を使ってこちらに気づかせようとしてるとすぐに気づいたようだった。

戦闘が終わったところでこちらも身を乗り出して手を振る。

こちらにきた。男を迎え入れる。

あの時は正直緊張した…


男は仲間? にしたエイリアンと一緒に当たり前のように入ってきた。

聖域が反応しないので危険な存在ではないらしい。


お互いに自己紹介した。

男はカトーと名乗った後、やっぱりジョンスミスのほうがいいかもとか言ってきた。

よく意味がわからなかった。どっちだ?

カトーでいいんだよな?


少し変わったやつだった。最初の印象は頼もしい味方。

雰囲気は落ち着いていて理知的な感じ。優しそうでもある。

一見何人だかわからないような見た目。

顔は整っていて坊主に髭に眼鏡。肩幅が結構ある。表情が豊かなタイプではない。

俺と同い年くらいか?


後で聞いたら若く見えたけど少し年上だった。


ジョブはなんと仙人。仙人、セイジか。

何でもエイリアンをパペットにするスキルをもってるらしい。

それ最強じゃないか? あとそれって本当に仙人か? 

そんな仙人聞いたことないけれど。


好き勝手にパペット化できるわけではないらしく。

殺したエイリアンか、攻撃して一気に意識をハックして支配しないといけないとか。

出来ないタイミングや出来ない個体もあると。

戦いの中で隙があれば試みて成功すれば儲ものという感じか?


それでも実践の中で普通に使用できるだけ凄すぎるスキルだが。


カトーが来てからはいろんなものが順調になった。

意外とコミュニケーションもとりやすかった。


俺とシンディもレベルアップしたし、隠形のスキルは便利すぎた。

安全にいろんな物資をとってきてくれた。

弓を作って練習しだしたり。俺とシンディもエイリアンたちを、

小鬼だけじゃなくイヌ型のあの狂暴なエイリアンも狩れるようになっていった。


あんなのに見つかったらやばいと思ってたが。

嘘みたいに順風満帆な日々だった。

そんな嘘みたいに状況が好転していってた最中…


エイリアンたちの戦争が起こった。



無茶苦茶だった。

もうすべてが。


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