3話
ウィッチクラフトで
有用そうなアイテムが多く作れた。
だが多かったのはマナ消費量もだった。
額に浮出ていた玉のような汗を拭う。多少心拍数が上がっているのが気になった。
それに体も熱い。見なくとも頬が赤味を帯びているのがわかる。
少し一気に魔力を使い過ぎた、切りの良いところで終わりにする。
早速作成した回復薬を重傷者に飲ませる。
はた目からでも分かるほど容体が良くなったので、
店内の雰囲気が少しマシに。
皆の緊張の糸が少し解けたのを感じて自身もほっとする。
残りの薬は重傷者の看病をしてくれていた女性達に預けた。
一人がもっと作ってほしいと言ってきたが断った。
命取りになりそうな要望にはNOと
はっきりと言ったほうがいい気がしたからだ。
私しかいないんだ。私が判断しなければいけない。
次は万が一小鬼に侵入された場合どうするか
トニー達と話し合う。
全体的にバリケードを強化して
しばらくこのスーパーで籠城することに決まった。
その後は休憩を取りつつ
建物の周辺に小鬼たちがどの程度残っているのか探ぐろうとしたものの
なかなか把握出来ずにいた。
多分10体以上はまだ近くにいると感じていたが、
窓の隙間から伺える景色やマナの気配だけでは心もとない。
どうしよう、一度外に出ようか……
店内から屋上に上がる事は出来る。
しかし小鬼が屋上にいるはず。
……決めた。トーチを片手に陳列棚の物資を確認している
トニーに屋上に出ることを伝えた。『今じゃなくとも
もう少し待ってからでもいいんじゃないか?』
どうやら救助が来るまで…
と言いたかったようだけれど。
今やれそうだから今やると言うと
この真面目そうなポニーテールの男性は強張った顔で
了承した。
もう辺りはうす暗い。闇に乗じて
出窓の一つから屋上に狂気の疑似餌を放り投げた。
しばらく待つ。マナの感じからして屋上には何匹かいるはずだった。
屋上の扉のバリケード前で息を殺していると。
何かが倒れた音!
立て続けに何者かが殴打されたような鈍い音。
屋上にいた小鬼達が同士討ちを始めた。
その隙をついて扉のバリケードを一気に動かして私だけ外に飛び出す。
私が戻って来て直ぐにまた扉前をふさげるように
トニー達には待機していてもらう。
扉から駆けだし
屋上を走りながら見回して小鬼の数を確認。
1,2,3,4…
それだけ? それだけか。
幸い屋上にいたのは4匹のみ。
しかもそのうち一体は瀕死の状態。
争っているゴブリン2体の背後で争いに参加しようとしている個体を背後から殺傷。
一匹が私に気が付いたがこっちに気を取られている間に、
もう一方のゴブリンに棍棒で頭を砕かれた。
その残って一体だけになった小鬼を倒す。
倒れていた瀕死のゴブリンにも止めをさしておく。
屋上は制圧完了。
トニー達に扉越しに伝えておく。
これでバリケードや窓の隙間でなく
漸く見通しのいい屋上から四方を確認出来る。
一息にストレス事吐き出すように息をついた。
周囲を確認していくと。
スーパーマーケットの周辺には小鬼は10体程。
店内には意識はさほど向いていないようだった。
10体じゃ積極的に攻撃する気にならないのかも知れなかった。
もちろん安心など出来ないけれど。
ゴブリンたちがどこから登って来たのかも知りたい。
昇れそうな箇所は無い。
近くにある物置であれば飛び移れる可能性はあった。
ここから来たのか。
なるほど、ちょっと飛び移るには難易度が高そうだ。
飛び移って来た個体も幾度も失敗したのだろう。容易にその光景が想像できた。
物置からは大勢では来なさそう。
腕時計を見るともう午後9時を回っていた。
外は闇に包まれている。空を見上げると
普段よりも大きい満月が異様に輝いて見えた。
@@
さらに2日過ぎた。
屋上でまた戦闘。
昨日から数えて
もう6体ほどゴブリンを倒した。出来るだけ
他の人達に止めを刺してもらう。
ウィッチクラフトでさらに魔女のアイテムを作成。
===
魔女の薬草
毒の水晶球
毒風船
狂気の疑似餌
===
他の人間を連れて
屋上で戦闘。
狂気の疑似餌は近づいて手に取ると発動する、
疑似餌が閃光を放ち
その光をみると敵味方区別できなくなる。
毒の水晶球でゴブリンを動けなくさせてから
自分が補助しながら止めを刺してもらう。
マナを吸収するようにイメージさせながら何匹も倒していればもしかしたら
自分のような力が得られるんじゃないかと思ったからだった。
仕切り役を買って出てくれているトニーが
ゴブリンに屋上で止めを刺したときに
突然ヨロヨロとして、危うく倒れそうになる。
心配して声をかけると片膝をついた
トニーがこちらを見て親指を立ててきた。
「やった!」
その後強烈な眠気に襲われたトニーは店内で10時間以上で寝続けた。
「たぶんちょっと強くなった、これからはもう少し役に立てるよ。」
明け方前に起きてきて
トニーは照れ臭そうに報告してきた。
トニーによると
ジョブらしきものは脳裏に浮かばなかったらしい。
そういう人もいるのかな? それともそれが普通?
私の魔女というのはなんなのだろう。
いやジョブなのか役なのかも、不明だけど。
トニーを観察していると
幻視が発動する。
===
射手
===
それだけ出た。
トニーに脳裏に浮かんだイメージを伝えると。
なにか試してみたいというので
2人で屋上に出てみる。ゴブリンアーチャーが使っていた弓矢を構えると
トニーの周りのマナが少し増えていた。
しかも今までより明らかに体を流れるマナの
バランスが良くなっている。
狙いをつけて一匹で徘徊していたゴブリンの頭を射抜く。
そのまま小鬼は即死。
おぉ! 思わず声に出した。
矢の威力も今までよりあるし、正確だ。
トニーも驚いて嬉しそうにしていた。
@@
さらに3日すぎた、みんなここに缶詰でストレスが溜まりにたまっていた。
些細なことで言い合いが増えてきている。
何人かがここからもう出ようと提案。
それに反対する人々。
また皆が言い争い始めた。
一人が私に外に出てどの程度まで
安全になってるのか確認してほしいと頼んできた。
私は考えておくといった。断られたのが
気に障ったようで不機嫌な様子でぼそっと独り言のように
―強いだけで使えねー
といわれた。
聞こえてますよ、この馬鹿男。
頭に来るなぁ…
ふざけんな、コイツ…
近くにいたトニーがおい! とたしなめる。
私も一度冷静になろう。
確かにいつまでもここには居たくない。
だけど他の住めそうな所よりは安全な拠点なのも事実。
ただ、もうあれから1週間近いのに助けが来ないんだ。
助けが来ないってことは…
そんなに楽観的に移動するのはまずいのではないのか。
私が見てくること自体はいいけれど。
ここ数日はあのショッピングモールで出会った男の人。
なぜか全裸だった人が見せてくれた、あの人が教えてくれた
気配を消す術を思い出しながら練習していたことだし。
最初の頃よりは随分良くなったと思う、まだあのレベルではないが。
リスクはどの程度だろう、そこまで無いんじゃないかな。
よし行ってみるか。
皆に外をできる限り偵察してくることを伝えた。
半日ごとに戻ってくるからもし戻ってこなかったら。
何かあったと思ってと伝えた。
皆の顔が強張る。作ったアイテムを分けるためアイテムボックスに入れていく。
私の分も持っていく。
「ふぅ…、よし!」
ゴブリンたちは夕方から深夜3時くらいまで活発なことが多かった、
といっても結構ランダムだったけど。でも多少そういう傾向があった。
私は朝4時から昼くらいまでを偵察の時間に使おう。
クラフトで新たに作った「魔女のグリーンティー」を水筒にいれて
深夜3時を少し回ったころで出発する。
その他のアイテムはバックパックに入ってる。
まだ明け方前でもないから、まだ暗い。
練習してきたスニーキング技術を使いつつ屋上から飛び降りる。
ゴブリンたちは人間と比べて
特別に目が利くわけじゃなさそうなのは幸いだった。
さてこのスーパーにあった地図で、
ここから8キロいったところに警察署があるのはわかってる。
そこで人と会えるかもしれないし、武器や物資だって期待できるかもしれない。
施設が捨てられてたらそれこそ持っていってしまえばいい。
あとはとにかく他のグループの人間と情報交換したい。
政府とかメディア関係者とかいないかな。
あの時と同じでネットが機能していない。
小鬼を道中に何匹か始末。
自分が泊まりに来た別荘のある森の近くまでくると天候が悪くなってきた…
「もう! どうしよう… 戻ろうかな。でも
ここから走ってもスーパーより別荘のほうがずっと近いよね。」
よし、別荘に行ってみよう。
別荘につく前に雨が降り出した、結構強い大粒の雨。
雨にさらされながらも別荘に到着する。
周りの家からは人の気配がない。生き残ってる人はいないのだろうか。
来た時からそうだったから違いがわかりずらかった。
別荘は荒らされた形跡は無い。
外からも一応確認したけどこの辺りはゴブリンが出てないみたいだった。
別荘の中をひととおり見て安全を確認して体を濡れタオルで拭く。
はぁ…
一人になってようやく落ち着いた。
正直内向的だし、人とずっといるのは気が休まらなくてきつかった。
頭を空っぽにしてベッドに寝そべる。
今午前5時半、まだまだ時間はある。
ちょっとだけ眠ろうか。
目覚めた、久しぶりにぐっすりと眠れた。
生き返るような気分だった。
眠りから覚めた余韻まで気持ちいい。
-魔女 3
魔女の呼吸
この呼吸っていうのが
多分マナをコントロールしたり変質させたりしてるスキルかもしれない。
===
-skill取得可能2
水魔法
呪術
使い魔 使役
魔眼
===
使い魔が欲しすぎる。
絶対欲しい。取ります。
それと魔眼も。
「使い魔 使役」「魔眼」取得
よし!




