表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダブルサイココライド ーSaga of Puppeteer ー   作者: KJK
2章 新たなる隣人達 魔女とスーパーマーケット
10/53

2話



山を駆け下りていく。まるで傾斜をバイクでフルスロットルで

降りているような感じ。以前の自分だったらなら恐怖心から

ブレーキをかけながら進んでいっただろう。

魔女になって身体能力が格段に上がっている。速度、身のこなし

共に人間離れしていたが、もう慣れ始めていた。


直ぐにスーパーの駐車場に到着。

まだ結構人がいた。どうやってこの人達を逃がせばいいのか。


「皆逃げて!」


兎に角声を張り上げて叫んだ。


店の入り口から出て来た家族が

ぽかんとした顔をして私を見る。

どう説明すればいいのか、わからない。

人をここから逃がすのが正解なのかも。


(何て言えばいいのかなんてわかるわけない!)



「皆! ゴブリンが出た! 山の方からこっちに降りてくる!」


人々が唖然とした顔で再度こちらを見た。

ダメだ、不審者だと思われていそう。


すぅーと息を吸って


「だ・か・ら! ヒグマがでた! 何匹も!」


漸く顔が強張る人たちが出て来た。

熊のほうが反応してくれる。


「熊達は人を襲いまくってる!」


これならわかるでしょ! 焦りと理不尽に対する怒りで

アドレナリンがドクドクと分泌されていく。

脚は既に震えていた。

実際にわかっている事実は化け物が山から下りてきて

恐らくそいつらは人を襲うということ。

ここの人達に準備をさせなければいけない。

少なくともほんの少しだけ時間があるのだから。



「熊達が山のほうからこっちへ来る!」

「子供が食べられてた! 凄く攻撃的になってる! 私も食べられそうになった!」


子供を探していた母親が叫ぶ!

熊達は狂暴でここにきたら死人が出るだろうと伝える。

出来るだけすぐ、ここから逃げたほうがいい。

離れた人もいたがここで働いている人たちや一部の人たちは離れる気配が無い。

迷っているようだった。


遠くからギャァギャァという声が聞こえてきた。

もうすぐ時間切れ。小鬼の群れとの戦闘になるだろう。


大声で叫ぶ。


アスファルトに何かが落ちた音。

小石ではない。不格好な石の矢じりの矢。


スーパーマーケット駐車場に、もう1本矢が飛んできた。

振り返ると多数のゴブリンの弓持ちが弓矢を構えていて

駐車場にいた人たちに向かって数十の矢が射かけられた。


数人が負傷。

弓持ち達が第二波を放とうとしたが、

その他のゴブリンたち10数匹がそれを待たずにこちらに突っ込んでくる。

体格は子供くらいだが身体能力は大人に近いほどある。


私も小鬼に対応しなければいけない。

石器の斧のようなものを持った小鬼が駆けて来る。

杖を小鬼の頭部に当て

マナを脳にまで通し破壊。

小鬼は一瞬痙攣し頭を強く打ち付ける様に地面に倒れ込み動かなくなった。


死体を蹴飛ばして直ぐに移動。

確実に一匹ずつ仕留めていく。

3匹ほど仕留めたあたりでコツがつかめてきた。

頭蓋骨を通り越して脳を破壊。ダメージがいくように、

集中しながらやれば一撃死させれる。

もし上手くいかなくとも瀕死状態にまではもっていける。


ただ気は抜けない。

矢が怖い。

ちょうど今も仲間のゴブリンに当たりそうなのも意にも介さず

私に矢を射ってきた。

小鬼はあまり理性がないようだ。それとも無いのは罪悪感や責任感だろうか。

どちらでもいい。


「ほんとに最低!」


この場にいた多くの男達は武器になりそうなものを見つけてきて

それぞれスーパーの中に匿った戦えない人たちを守るようにして戦っている。

逃げ出した人もいるみたいだけど。


スーパーのシャッターが音を立てて下り始めた。

誰かが籠城するために動いてくれているんだ。


ここまででゴブリンを4体。弓持ちは2体倒せた。

まだ5分もたってないだろう。

人が密集してるところで矢を防いだりもしないといけないから、

あんまり自由に動いて倒していくことができないのがもどかしい。


見える範囲内で、残り20体くらい。

ここの人達にスーパーの中に入って

籠城してもらえれば私もやりやすくなる。


「早く中に入って!」

声を上げて中に入る様に促す。


ただし省エネモードで戦わないとまずい。

正直もう疲れてきてしまっていた。

大丈夫かな…

マナが尽きたら戦えない……


その時、駐車場の裏手になにか見えた。

群れだ。小鬼の集団。


ざっと見ただけで

小鬼の増援40体以上……

スーパーのシャッターは下りた。

後は最後の非常口。

店の中から避難した人たちが私に入るように叫ぶ。

ゴブリンの群れをどこか遠くまで誘導する自信は無かった。


近くにいた小鬼を倒し、急ぎ中に入る。

窓からも簡単には入ってこれないように

生き残った人たちがバリケードを作ってくれていた。

仕事が早くてありがたかった。


そこからしばらくシャッターが叩かれたりしていたが、

だんだんと静かになっていった。

奴ら諦めた?


気配は遠くに行っているように感じた。


安心した途端に強烈な眠気がおそってきた…

私は少し疲れたので仮眠をとらせてほしいと伝えて建物の角のほうに座った。


すごく眠い…




@@




目が覚めた。天井の電気はついていない。

時計を見ると19時だった。


「やぁ、起きたみたいだね」


髭にポニーテール、それに眼鏡の作業服を着た、

背も高いけどオタクぽさ真面目さもあるような

おじさんが話しかけてきた。

トニーというらしい。


彼が色々と状況を説明してくれた。

私は数時間眠っていたらしい。


スーパーの中には人が24名

大人20名

男性12

女性8

子供4


男10名は何とか戦えること。 

負傷者、重傷者とも数名

その他重傷者3名いたが死亡。


説明を聞きながら店内を見渡すと頭を抱えている人や、

シクシクと嗚咽を漏らしている人たち。


私の使ってた超能力は何なのか聞かれた。

簡単にできる範囲内で説明する。


ふぅ……

神経を休ませれると思った矢先、

天井が大きくドンドンと鳴った!


「あいつらだ、屋上に登ったやつらがいるらしい。」

トニーが天井を睨みながら言った。

緊張していて明らかに声は震えていた。


「いつから?」

「音がしだしたのは5分前くらいだよ。」

小鬼(ゴブリン)を殺した人はいる?」


「小鬼を殺したのは… まずオレかな? 

一匹は斧で頭をかち割ったから多分殺せたと思うけど……」

「力は感じる?」

「いや、特に超能力が使えるようになったとかはない。すまない。」


トニーは私が最後の頼みの綱だからできる限り

私がやりやすいように協力させてほしいと言ってきた。


指示を出してこようとするよりはいいかもしれない。

私がリーダーでいいかと聞くと。


「もちろん!」


自信は無い。でもどうにかしないと。

私だけが頼れる戦力なら主導権はもらわないと話にならない。


とりあえずスーパーの中の素材を集めてウィッチクラフトする。

スーパーなだけあって素材は揃っていた。

薬品類に、食材、酒類に、工具に調理道具も。

店内にあった小鬼の死体を引きずって来て腹に切り込みを入れ不要なものを除去。

魔女のアイテムを作るための鍋を作る。


ーひっ…


横にいた人たちが

おびえたような顔でこちらを見て、直ぐに目を逸らした。


こんなグロテスクなこと別にしたくない。気持ち悪いし

面倒だし。

いずれ亡骸などを使わなくとも出来るようにしたい。

ただ今はこうしたほうがいいんだ。

小鬼の亡骸には僅かに魔力が宿っているのだから。


一心不乱に作成していた。終わってみれば

意外と色々出来た。が、これ一回作る度にマナをかなり消費してしまう。

戦う前とかには使いたくない。


出来上がったのは以下の通り。

===


魔女の回復薬

魔女のモロトフ

燃える水

毒消し

毒風船

毒煙罠

狂気の疑似餌

===



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ