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『目が覚めると異世界に来ていた。』

なんていうのは、よくある話でまさかのモンスターになっていたり最初からスキルがチートすぎる冒険者になっていたり。

それは異世界側のきまぐれで起きるイベントのひとつで、まさか自分にそんなことがあるわけがないと思っていた。思っていたのだが・・・。


はい、来ちゃいました。異世界に。

ここは森の中か。草むらに寝転がって木々の間にはめこまれた雲ひとつない空を見上げている。

草の感触が心地良い。面倒なのでしばらくはこのままでもいいか。

ゴロンと寝返ると透明無色のスライムっぽいものが横にいた。

「うわっ!きみらなにしてんのっ!!」

びっくりした俺は、ガバッと起きあがった。

何かしかけてくるかと身構えたが、半透明のそれはプルプルと左右に動いているだけだった。

そりゃこっちのセリフだと思っているんだろうな。

ま、スライムだから何考えているか分からんが。


まずは身体を触ってみる。お、これはヒトっぽい。

モンスターになっていたらどうしようかと心配していたがまずはホッとした。

容姿はどうなっているかと近くにあった水溜まりを覗き込む。

これは・・・やりこんでいたオンラインゲームでプレイしていた時の忍者の姿そのもの。たしかアサシンだっけ?


そして、異世界あるあるの1つ!

まずはステータスの確認しますよっと。

「え、ウソだろ。」

レベルは1から。

レベル90までカンストしていた俺がまさかの。チートでいけるかと思いきや予想外すぎるこれにはがっくりきた。

草履を履き麻布に革紐をまいてあるシンプルすぎる装備。

ま、黒い長髪をまとめたイケメンだから良しとしよう。

レベリングして装備も揃えればあの時みたいに様になっていくと思えばいい。

何かないかとスライドしていくと、『鑑定』の下に『兼役』というスキルがある。

「ん?なんだこりゃ。」

よく分からんが、ここにいる間になんやかやで分かってくるだろう。

切り株に座りながらあれこれ考えていても行動しなければどうしようもない。


よし、試しにやってみるか。

低レベルのスライムがうようよしているこのサバイバルな状況で、使えるとすれば。

落ちていた片手剣くらいの長さの木の棒をスッと拾いあげ少し離れた場所にいるスライムに向かって全力ダッシュした。

レベル1でもさすが忍者だ、桁違いに速い。

あまりの速さにスライムもきづかなかったようで簡単に倒すことができた。

「木の棒でスライム撃破!」

どこかのカードゲームの主人公みたいなセリフを言いつつかっこ良くポーズをとってみる。

今のところ、スライムしか見ていないからできることであって街中ではさすがに恥ずかしい。

「おっ!レベル2に上がってんじゃん。」

スキルも『斬撃』が追加されている。木の棒だけどいいのかよっ!

それでも、最初にしては順調だ。

高レベルのやばいモンスターも出ない。

あっさり木の棒だけで倒せる。

そして、主人公っぽい始まり方。

異世界に来たってだけでテンションあがるキモチが今ならめっちゃ分かる。

うんうん、痛いほどに。

「よっしゃあっ!ボッコボコにしてレベリングしていくぜ!俺は――」

言いかけたところで、遠くから悲鳴が聞こえてガサガサと葉がこすれる音がした。

一斉にザザザッと何かが向こうから走ってくる。

こっ、これは・・・まさかのヒロイン登場か!?

しかも、複数とは。

このレベルの俺がもうパーティーつくれるのか?

レベルが高くていればいるだけ十分だ。

好みのタイプならなおさら良いっ!!

今日までバレンタインに手作りチョコを受け取る想像をしていた俺には刺激がマジで半端ないぜ。

ありがとう異世界!


にしては、小さすぎないか?

眼を凝らしてよく見るとゴブリンの群れ。

その数10数匹ほど。

それぞれが手作りの武器も持っている。

悲鳴はゴブリンの雄叫びだったらしい。


「これ、マジでやばいんじゃね?」


ステータスをよくみると『斬撃』の下にもう1つスキルが増えていた。『挑発』

詳細を見ると、

【モンスター撃破後に発動。初回はレベリングのため問答無用に発動。よりレベルの高いモンスターが出現しやすくなる。】


俺はスッとステータスを静かに閉じ


無表情かつ無言で


クルッときびすを返すと


後ろを振り向くことなく


全力で


逃げたッ!!

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