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エルフの少女・6



 「さあ! 行くわよ! ゼリス!」


 日が昇り、外出の準備を終え、すぐさま執事を呼ぶ


 「おはようございます、エリカお嬢様」

 

 「ええ、さあ、はやく!」


 「はあ、わかりました」


 ゼリスはため息をつく


 なぜこんなに元気なのかと


 「ですが、おそらくエイル様は起きていないのでは?」


 日が昇ってすぐ、時間でいえば大体朝の5時くらいになる


 「むむっ、まあ、その時はそこら辺を散歩して時間をつぶしましょう」


 「かしこまりました」


 エイルからの手紙は二枚あり、一枚目にはゼリスに向けての軽い挨拶といくつかのことが書かれていた


 そして二枚目には


 「そういえば、二枚目の手紙には何が書かれていたのですか?」


 「おしえないですわ」


 「なぜですか?」


 「それもおしえないですわ」


 一枚目に絶対に見ないでと書かれていたのでもちろん見てはいないが、中身はやっぱり気になる


 「ん? お嬢様、馬車はまだですよ?」


 屋敷から出て、エリカはすぐさま門のほうへ向かっていく


 いつも外出時は馬車を待つのだが、今日は馬車を待っていなかった 


 「今日は歩いていくわよ」


 「? わかりました」


 おそらく手紙にでも書いていたのだろう、なので余計な口は挟まずについていく


 「行く場所はわかるのですか?」


 「ええ、書いてますので」


 「なるほど、ちなみにそれも見せてはくれないので?」


 「うん、だめよ、だから途中まで行ったら帰ってくださいませ」


 「それはだめです」


 エリカはそれなりの立場の人だ、だから街中で一人にしてさらわれてしまっては大変なことになる


 だが行く先がエイルのところなので、危ないところではないと分かっているし、そもそもエリカを攫える者などそういることはない


 それでも、一人で行かせるわけにはいかないのだ


 なぜなら


 「お嬢様、地図読めますか?」


 「いいえ?」


 さも当たり前かのように答える

 

 「それでは、どうやってそこへ行くのですか?」


 「大丈夫ですわ、ちゃんと詳しく書かれていますので」


 「いや・・・はあ、わかりました、ですが、もし迷ってしまったら連絡をください」


 詳しく書かれていても迷うのがエリカお嬢様です、と言いたかったが、行っても無駄だということはわかっているので、その言葉を飲み込む


 「はいはい、それじゃあ、もう戻ってもいいわよ」


 「わかりました、お帰りはいつになりますか?」


 「うーん、わかりません、最悪泊まっていくかもしれませんわ」


 「かしこまりました」


 「じゃ、あとは一人で行きますわね」


 「お気をつけて」


 ゼリスと別れて、エリスは手紙に書かれている通りに道を進んでいき、無事到着した


 と思っていたのだが


 「ん? ここどこです?」


 やはりエリカは道に迷っていた


 「あれ~?」


 ちゃんと手紙に書いていた通りに進んでいたはずなのに、それらしい建物など一つも見当たらなかった


 「あ、おじいさん」


 「ん? どうしたのかね?」


 「ここって何番街になるのかしら?」


 たまたま散歩していたおじいさんを呼び止めて、ここがどこかを聞く


 「ここは11番街じゃよ」


 「11番街・・・8番が言ってどっちなのかしら?」


 現在いるのは11番街、手紙には8番街と書かれているのでやはり迷ってしまっていたようだ


 「8番街なら、あっちの方向じゃ、大通りに出てまっすぐに行ったらつくはずじゃよ」


 「そう、ありがとうね、おじいさん」


 おじいさんにお礼を言って、言われた方向に進んでいく


 「おかしいなあ、ちゃんと確認したはずなのに」


 手紙にはちゃんと地図とどう進めばいいのか言葉でも書かれていて、それの通りに進んだはずなのに、エリカは迷ってしまった


 それからなぜか何度も道に迷ってしまい、目的地に到着したのはそれから2時間後だった



 コンコン


 「ルアン、起きてるかい?」


 「・・・・んん、は、はい! 起きてます」


 「後で下まで来てもらってもいいかい?」


 「わかりました」


 「急がないでいいからね」


 ルアンはこうでも言っておかないと今すぐにでも出てこようとする、声を聴く限り、今起きたばっかりだろうから


 「しまったな、起こしちゃったか」


 今のルアンはなるべくたくさん寝かしておきたいので、昨日までは起こしにはいっていなかった


 規則正しい生活をしないといけないのはわかるが、寝ているのを起こしたくはないのだ


 「それにしても、夜明けくらいに来ると思っていたのに、意外に遅いな」


 昨日出した手紙は昨日の夜には届いていて、すぐに読んでいるはず、であるなら相手の性格からしてすぐにでも出ようとするのはわかっている


 だからエイルも夜明けには起きて待っていたのだが


 夜明けから数時間は立っているがまだここにきていない


 「もしかして何かあったのか・・? いや、エリカに関してはそんなに心配じゃあないけど」


 エリカがもしトラブルに巻き込まれたとしてもたいていは自分で解決する、なのでそういうことの心配はしていない


 「まさか道に迷ってるなんてことないよな?」


 この宿には魔法がかかっているので、一般の人には認識できない、なので、ここまでの道のりについては事細かに書いているので、迷うことなどありえないだろうと思うのだが


 「まあ、もう少し待つか」


 ルアンが降りてくるまではとりあえず待って、それでも来なければ探しに行こうと考える

 

 そして、少しの間時間が経つのを待ち

 

 「エイルさん、お待たせ・・・」


 「お兄様! 到着しましたわ!」


 「!!」


 ルアンが降りてくるのと同時に、入り口から大声を出しながらエリカが入ってきた


 それにルアンは驚いて急いで隠れようとする


 「ルアン、この人は大丈夫」


 ルアンはエルフであるから、見つかればエイルに迷惑がかかると思って隠れたのだ、だが、エリカに関してはそういう心配はしなくていい


 「あら、その子が手紙の子ですのね?」


 エリカが隠れようとしていたルアンを見つけ、すぐさま近づいていく


 「まだ小さいわね」


 そういってエリカはルアンを持ち上げる


 「軽いわ・・・お兄様、ちゃんと食べさせてます?」


 「もちろん」


 「え、あの、えっと・・・」


 エリカに持ち上げられているルアンは混乱した様子でエイルに助けを求めた顔を向けてくる


 「この人は私の妹だよ、エリカ、おろして自己紹介してあげて」


 「わかりましたわ」


 エリカは少し下がってカーテシーを行う


 「お初にお目にかかります、エリカ・ル、あー、エリカと申しますわ、そちらにいらっしゃる、エイルお兄様の妹になりますわ」


 一瞬エリカはエイルに目配せをしてから名前を言った


 「え、エイルさんの? あ、えっと、おはつに、おめにかかります、ルアンと申します」


 エリカがエイルの妹出るといったことに驚きながら、エリカの真似をしながら自己紹介を行う


 「あの、エリカ様は、貴族様ですか?」


 「・・・・いいえ、違いますわよ?」


 エリカが一瞬迷った後、ルアンの言葉を否定する


 「大丈夫、エリカの言う通り本当に貴族じゃないから」


 エリカがルアンに気を使ってそう言っているのではないかと疑っていそうなので、ちゃんと補足しておく


 エリカもルアンも貴族ではない、ただ少し特殊な立場であるだけ


 「それより、お兄様、お部屋借りますわよ」


 「了解、上の階ならどの部屋でも大丈夫」

 

 エリカがルアンを連れて上へと上がっていく


 「あ、あの・・・」


 「どうしました?」


 「な、なにをするんですか?」


 「あれ? 聞いてないのかしら?」


 「すまん、今日説明しようとしてたんだが、その前にエリカが来たからな」


 昨日に説明してもよかったがルアンが寝てしまっていたので、説明ができなかったのだ


 「なるほど、了解ですわ、ついでに説明もしときますわね」


 「任せた、ちょっと少し休ませてもらうね」


 なんだか今日は朝起きてから少し体が重たく感じる、なので少しルアンのことを任せている間に休むことにする


 「ちょっと睡眠時間削りすぎたか・・・」


 ここ最近まともに睡眠時間を取れなかったし、寝る場所も大体は椅子や床だった


 おそらくそれが原因で体調を崩してしまったのだろう


 いったん仮眠をとるため、ベッドのある部屋で休むことにする


 その間、エリカたちは


 「さてと、まずは服を脱がせますわ」


 「え!?」


 「お兄様から、あなたの服を買うのを手伝ってほしいって言われたのですわ」


 エリカはとりあえずルアンの服を脱がせながら説明をしていく


 「あなた、服を持っていないらしいですわね、働く以上、ちゃんとした服を着るのは当り前ですわ」


 「あ・・・、確かに」


 「まあ、お兄様もそれは考えていなかったようですけどね」

 

 ルアンもエイルもそういったことは全く考えていなかった、エイルに関しても今となっていってきたことが何よりの証拠だ


 今回もエイル的にはただ単に普段着るものを買ってきてほしいといったことを頼んだのだがエリカ的には仕事用の服も買うべきだと考えている


 「ついでにお兄様の服も買っておきますか、む、あんまり動かないでくださいな」


 「す、すいません、くすぐったくて」


 エリカはしゃべりながらもしっかりと手を動かしてルアンのいたるところのサイズを測っていっている、それがくすぐったいのか、ちょくちょくルアンが動いていてしまい、怒られてしまう


 「よし、終わりましたわ、それじゃあ、行くわよ」


 「いくって、どこにですか?」


 「私の店ですわ」


 「エリカさんの店?」


 「うーん、説明が難しいのですけど、まあ、私の店ですわ、だからあなたが行っても問題はありませんわ」


 「そういえば、あなたは私をそういった目では見ないのですか?」


 ルアンはエルフ、なので迫害の対象となるのだが、エリカからはそういった扱いを全く受けない


 それを不思議に思い、エリカに聞いたみたのだ


 「そういった? ああ、周りみたいに、あなたたちを差別しないのかってことです?」


 「・・・はい」


 「はっきり言いますと、差別なんかしませんね、どうでもいいので」


 エリカからしたら、目の前にいるルアンがエルフであろうが人間であろうがそんなことどうでもいい、というかそもそも人間に興味がないのだ


 「ああ、厳密にいえばしているかもしれないですね、お兄様以外は誰に対しても見下していますので」

 

 簡単に言えば、エリカは人間が亜人を差別の対象にしているのと同様に、差別の対象を兄のエイル以外の者にしているということ

 

 「?? それって差別なんですか?」


 「さあ?」


 エリカ自身、差別ということをあんまり理解できていないので、これが差別に当たるかどうかなどわからないのだ


 「そんなことどうでもいいですわ、それより行きますわよ」


 ルアンのいろいろなところのサイズを紙にメモし、さっそくエリカの店へと向かう


 「いったんこれをかぶって」


 そういい、エリカがルアンに帽子を渡してかぶらせる


 「それかぶっていればあなたがエルフだとはばれませんわ」


 ルアンに渡したのはこの宿事態にかけられている魔法に似たようなものがかけられた帽子


 かぶっている者に対して興味を持たなくなり、ルアンがエルフだということなどどうでもよいといった考えになる帽子である


 「かぶったわね、外では外さないように」


 くれぐれも外さないようにルアンに言いつけて宿を出る


 その後、きちんと言いつけを守り、ルアンは帽子をしっかりかぶっていたので、もちろん何かの事件に巻き込まれるようなことはなく、エリカの店に到着する


 「うわあ、大きいですね」


 見上げるほどの大きさの店に驚く


 「そうかしら? まあ、そんなことはどうでもいいですわ」


 そういいながらエリカは店の中に入っていった


 それに遅れないようにルアンも急いでついていく


 「さて、選びますわよ」


 そして、エリカはルアンの服から下着まで、ここで買えるもので必要なものを次々に選んでいく


 「お店の制服も、いいものがなかったから作らないといけないわ」


 エリカの店には制服のようなものをおいていなかったので、それに関しては後日エイルと相談して決めることにする


 「さてと、ほかにいるものはあるかしら?」


 「え、えっと・・・」


 ルアンはエリカの言葉に困惑しながら考える


 「もう、だ、大丈夫です」


 本当はまだ必要なものがあったのだが、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないので、大丈夫だということにしておく


 「はあ、まだ必要なものがあるのでしょう? 遠慮なく言って」


 だが、エリカにはルアンの考えていたことが分かったようで、少しイラつきながらそう言う


 「ひとつ言っておきますわ、あなたが何を遠慮しているのかわかりかねますが、これはお兄様のためにしていることですわ」


 あくまでエリカはエイルのために行動しているのであって、今ルアンが遠慮して後々に必要になったときにエイルに迷惑がかかるのが嫌で、このような態度になってしまう


 「ご、ごめんなさい」


 「あ、いや、別に怒っているわけではありませんわ、失礼いたしました」


 ルアンが謝ったことで冷静になり、つい口調がきつくなってしまったことを謝罪する


 「それより、必要なものを言って」


 「・・・・えっと、何かメモを取れるものが・・・」


 「個人的に使うものですわね、それならたくさん必要ですわね、あ、あとペンもですわね」


 メモ帳を買うのなら、せっかくならペンも買うことにして、とりあえず雑貨屋へと向かい、店の中を見ながら今後必要になりそうなものも買っていく


 「結構多くなったわね」


 「あの、お金は・・・」


 「問題ないわよ」


 ルアンがお金のことを聞いてくるが、別にエリカはルアンにもエイルにも今回のお金を請求するつもりはない


 「というか、払えるお金なんてないですわよね? それに私はお金には困っていないの」


 エリカは先ほどの店のほかにいくつも自分のお店を持っているので、お金に困ることはない


 「まあ、それでも納得しないというのなら、経費だと思えばいいですわ」


 今回買ったものは普段でも使うものだが、仕事中に使うものも多い、なのでエリカにお金を出してもらうといったことに納得できないのなら経費だと思ってもらう


 「さて、そろそろ帰りますわよ、でも、ちょっと荷物が多いですわね」


 さすがにいろいろなものを買ったので、手で持って帰るのはつらい


 「馬車でもつかうとしましょう」


 なので、荷物を運ぶために馬車を使うことにする


 「ちょっと待っててください、お店のほうに馬車を借りれるか聞いてきますわ」


 そういい、エリカはルアンを少し待たせることにして先ほどの店へと戻っていった


 そして数分後


 「お待たせしましたは、馬車のほうはここで・・」


 この店で馬車を借りることができたので、それを伝えに行くが


 「あの子、どこに行きましたの?」


 その場には、荷物だけを残してルアンの姿が消えていた


 

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