エルフの少女・5
お母さんとお父さんと一緒に暮らしていた時はよくご飯を作っていた
だから、料理は得意だし、好きなこと
「いっぱいアイデアが出てきた」
お昼ご飯を食べ、エイルさんが出て行ってからずっとこの宿で出すご飯のメニューを考えていた
昔に作ったことのある料理や作ってみたいと思っていた料理などいろいろと浮かんでくる
「これ、お父さん好きだったな・・・、こっちはお母さんがおいしいって言ってくれて・・」
ポタッ ポタ
「お母さん・・・お父さん・・・」
私を守ってくれた二人を思い出し、涙がこぼれる
「だめ、泣いてちゃ」
泣いているとエイルさんに心配をかけてしまう
「きっとエイルさんは私が悲しんでいると無理をせずに休んでと言ってくる」
昨日からずっと面倒をかけているのに、これ以上はかけたくはないのだ
「はあー、ふう」
一度深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる
「そうだ、今ある食材見ておかなくちゃ」
エイルは今日の夕飯からルアンに任せるといっていた
なので今どんな食材があるのか見ておく
「うわぁ、いっぱいある」
エイルはある程度料理もできるので、いろいろな種類のものを作るために食料はたくさん用意している
そしてちゃんと痛まないように魔法をかけて保存もしているので、食材を多く買っても問題はない
「何にしようかな・・・」
正直食材が多くありすぎて何を使うか、どんな料理を作るか迷ってします
「難しい料理は、また今度にしようかな」
料理は得意の部類に入るが、ちゃんと料理するのは久々なので失敗するかもしれない、なので今回は簡単なものにしておく
「そういえば、エイルさん、どれくらいで帰ってくるんだろ」
エイルは少し出てくるとだけ言っていたのでいつ帰ってくるかはわからない、おそらくあの言い方だとそこまで長い時間は出かけはしないと思うが
「とりあえず下準備だけしておこうかな」
焼いたりするのは食べる直前にしておいて、今はとりあえず食材を切ったり下味をつけたりしておく
「~~♪、~♪、~~~♪」
ある程度の準備は終わり、あとはエイルが帰ってきてからすることだけになった
なので、とりあえず椅子に座りやることもないので鼻歌を歌って時間をつぶしておく
「ただいま」
「あ、お帰りなさいです」
そろそろ日が暮れるくらいの時間にエイルが帰ってきた
「今の鼻歌、ルアンが?」
「え? あ、はい、聞こえてましたか・・・」
ルアンは歌はあまりうまくはないので、エイルに聞こえていたことに恥ずかしくなる
「うん、僕はちょっとほかの人より耳がよくてね、それより、その歌は?」
「えっと、詳しいことはわかりませんが、お母さんがよく歌っていたもので、たぶんエルフの里の歌だと思います」
さっきは鼻歌だけで歌詞はつけていなかったが、お母さんはよく歌っていたので歌詞はある、それに歌詞もエルフ語なのでおそらくエルフの里の歌だろう
「そうなんだ・・・」
「? どうしたんですか?」
エイルはルアンの言葉を聞いて少し不思議そうな顔をした
「いや、なんか聞き覚えがあるような気がして・・・、たぶん気のせいかな」
聞き覚えがあると確信できるわけではないが、何となく聞き覚えがあるような気がする
だがエイル自身、エルフの知り合いがいるわけではないし、エルフとかかわったことなどルアンが初めてになるので、エイルは気のせいだろうと思った
「あ、ご飯、準備しますね」
「ありがとう、待っておくよ」
とりあえずエイルが帰ってきたので、ご飯の仕上げを行う
それから少しの時間で完成し、二人でご飯を食べながらエイルが今日してきたことについて話をしていった
「じゃあ、とりあえずは返事待ちってことですか?」
「まあ、一旦はね、でも返事をくれるかどうかはわからないから、とりあえず自分で考えないといけない」
「そうですね、えーっと・・・」
エイルの師匠が返事をくれるかどうかは確信はできないし、エイル的にはおそらく返事は来ないだろうと思っている、なのでそれをあてにするわけにはいかないのだ
「とりあえず前に看板は出しておきますよね」
「そうだね、看板にも一応宿かけてある魔法をかけるから、共通言語でも書いて大丈夫かな」
宿全体にも掛けている、ある程度幸せを感じている人には認識できないようにする魔法を看板にも掛けて、一般の人には認識できないようにする
そうしないと普通の人が入ってきてしまうとルアンや今後来るかもしれない人達に何が起こるかわからないからだ
「とりあえず、書ける文字で[この看板に気づいた人は誰でもいいので入ってください]って書いてほしい」
「わかりました」
むやみに差別はしません、だれでも入ってくださいなど書いても警戒させるだけ
なので今はいい書き方を思いつかないのでこのような書き方をする
「とりあえず、ルアンが書けるのは亜人語?」
「はい、あと公言語、えーっと、今でいう古代語ですね、それも一応は書けます」
「あー、古代語か・・・」
古代語とは、はるか昔、この世界に魔王と呼ばれる魔物の長が存在していた時代に使われていた共通言語
主に古代魔法と言われる今よりも便利な魔法その詠唱に使われていた言語であるが、魔王が倒されて以来、現代ではほとんど使われていない
それからはもともと人類側で使われていた現代語のほうを共通言語として使われているのだ
「いま古代語を読めるのって、どんな人がいるだろう・・・」
「えっと、エルフくらいですかね? ほかの長命種なら、読めるかもしれませんが」
「ほかの長命種・・・ドワーフとか?」
「すいません、あまり詳しくなくて・・具体的に何が長命種なのかはわかりません」
まあ、エルフからしたら基本的にほかの種族などどうでもいいだろうから知らないのは当然だろう
「じゃあ、とりあえず亜人語で書いてほしい、あとの言語は調べて随時追加していこうか」
「わかりました」
とりあえずエイルは少し大きめの木の板を持ってきて机の上に置く
「適当に書いてくれていいよ、まだ板はあるから、失敗しても大丈夫」
板に字を書くのはちょっと難しいので、失敗してもいいと伝えて食べ終えた食事の器を片付けに行く
「えっと・・・これくらいの大きさで・・」
ルアンはしっかりとやってくれているようでしっかりと大きさや見易さを考えて書いてくれている
「自分もできることをしないとね」
ルアンにはできなくて自分にできることは外に出て直接探すこと、今はこれくらいしか思いつかないが何か行動しておかないと落ち着かない
「出るとしたら、夜かな」
夜だと普通の人は外を出歩かない、なので、目的の人たちが出歩くのならその時になるだろう
「よし、洗い物は終わり、次は掃除しないと」
日中はずっと外に出ていたのでまだ掃除ができていない、といってもあまり汚れなどは出ていないが
「ルアン、君の部屋も掃除してもいい?」
「あ、はい、大丈夫です」
基本的に人が泊まった部屋は毎日簡単ではあるが清掃をするつもりだ
だからルアンの部屋も掃除をしなければいけない
それにルアンの体調は元気そうには見えるが実際はわからない
それ関係の知識はないので、もしかしたら自分が見てもわからないように我慢しているのかもしれない
だから、数日はベッドのシーツ等は毎日きれいなものに取り換えることにする
「・・・そういえば、ルアン着替えも持っていないよな・・・」
ルアンがここに来たときは荷物を何も持っていなかった、なので着替えも何もないはず
「買いに・・・いや、サイズがわからない、自分でも・・いけないよなぁ」
さすがに女の子の体のサイズを測るわけにもいかないし、ルアンを連れて行くわけにもいかない
なのでどうするか悩む
「うーん、あいつならいけるかな?」
男の自分がサイズを測るわけにはいかないが、女性で差別意識がない人などなかなかいない
だが、いないわけではないし、心当たりもあるがあまり頼りたくはない
「それでも、やらないといけないよな」
ルアンの着る服があの一着だけなら洗濯もできないし、体調的にもよくはないだろう
「送っておくか」
すぐさま師匠に送った魔法と同じものでその心あたりがある人物に事情を書いた手紙を出す
「多分明日には来るか」
自分から手紙が来たということを知ったらおそらくすぐにやってくると思う
ただ、今はもう遅い時間なので明日の早朝にでも来るだろう
「とりあえず掃除だけをして・・」
ベッドのシーツを取り換え、床のほこりなどを掃除していく
「よし、次は・・」
それからほかの部屋も一応汚れがないか見ていき、掃除をしていった
「これで終わりだね」
最後の部屋も掃除を終え、一回へと戻っていく
すると
「すぅ、すぅ」
(寝ちゃったか)
思ったよりも掃除に時間がかかり、まだルアンの部屋を掃除していると思ったのだろう
なので部屋に戻れなくここで寝てしまったのだろうか
「とりあえず運ぶか」
起こさないようにそっと持ち上げて、ルアンの部屋に運んでいく
(軽すぎじゃないか?)
ルアンを持ち上げて改めて気が付く、ルアンは人間で例えれば大体12歳くらいの大きさ
それくらいなら一番下の妹と同じくらいの年なので体重はよくわかるが
それと比べても圧倒的に軽い
(もっと食べさせないといけないな)
とりあえずルアンをベッドに移動させながらもう少し肉をつけさせないといけないなと感じた
「さてと、出るか」
ルアンも寝たので、起こさないようにそっと宿を出る
「あのゴミ捨て場、たぶんいるよな」
昼間に一度行ったゴミ捨て場、見た感じは誰かがいたような痕跡はなかったが、どうも怪しいのだ
何か証拠があるわけでもなく、ただ単にエイルの勘ではあるのだが、確認をしに行く
「・・・・」
ゴミ捨て場に到着し、一旦耳を澄まして何か音がしないか確認する
「・・・しないか」
数分間耳を澄ませたが、物音一つしなかった
「いったん降りるか」
なにも音がしないとなれば今ここにはいないという可能性にかけ、次は生活の痕跡がないか確認する
「・・・・こっちのあたりはないか」
ここのゴミ捨て場は結構な広さなので、全部を探すのは少し時間がかかるが、ちゃんと隅々まで見ていく
「ここもない」
そして、いよいよ探すところもなくなってきたところで
「・・・! あった!」
ぱっと見ではわからないが確かに人がいた痕跡があった
「やっぱりいたんだ・・、でも、今はいなさそうだ」
あたりを見回しても人影はない
「とりあえず戻るか」
とりあえず宿のことを書いた紙をおいて、今日は帰ることにする
「これで来てくれたらいいけど、まあ、難しいよな、でも、いると分かっただけで十分」
ここにいると分かった以上、それなりにできることはある
「ただいま、ああ、眠い」
今日はいろいろなところを歩いたので、宿に戻った瞬間一気に眠気が襲ってくる
「水浴びは明日でいいか、風呂も早く作らないと、明日作るか」
今はルアンもエイルも水浴びで済ませているがそろそろ外の気温も低くなってくるので水では風邪をひいてしまう
なので、とりあえず風呂のことを優先することにして、今日は眠りにつく
一方、ある場所にて
「ちょっと!! どいて!」
「だめです、今日は遅いので明日にしてください!」
「黙りなさい! 今すぐに行くの!!」
エイルからの手紙を受け取った女性は、内容を確認して瞬間に家を飛び出そうとしていたが、それを家の人に止められて言い争いになっていた
「だめですって! それに今の時間だともう向こうも休んでいる時間でしょう!」
「ぐぬぬ、確かに、今行けば迷惑に・・・・それじゃあ! 夜明けとともに出るわよ!」
「はあ、わかりました」
「おやすみ!!」
バタン!
そういってすぐさま自分の部屋へと戻り、女性は眠りについたのだった
「先に見ればよかった」
先ほどまで女性を止めていた男は送られてきた手紙をすぐに見せたことを後悔していた