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エルフの少女・3


 「もしかしたら、早まったかな・・・」


 さっきの人の話しに関しては、経験と勘、それに嘘をついているときにでるしぐさも特に何もなかったので嘘はついていないとほぼ確信はできる


 「でも、嘘はついていないからって言っても・・」


 嘘はついてはいないが、あまりにもこっちに特があって向こうに損しかない話過ぎる


 「・・・・」


 ぼふっ


 だが、そんな考えよりも、目の前にある、柔らかそうなベッドについつい飛び込む


 「柔らかい・・・それに、あったかいなぁ」


 まだ、本当は何を企んでいるかわからない以上、熟睡するわけにはいかないがこのベッドに入ってしまってはそれには抗えない


 「・・・・ちょっと、だけ」


 すこしだけ、寝てしまおうと考え、眠りにつこうと思ったが、その気になった瞬間に一瞬で眠りにつく


 「・・・はっ!」


 そして、どれくらい時間が経ったかわからないくらいに寝てしまった

 

 「え! もう日が暮れてる!?」


 窓から外を確認して、ある程度の時間を確認すると、もうすでに夜になっていた


 つまり、少なくとも半日以上は寝ていたということになる


 コンコン


 「起きた?」


 「は、はい!」


 おそらく、店主が私が大きな声を出したことで私が起きたことに気が付いたのだろう


 「それなら、ご飯作るけど、ちょっとごめんね」


 するといきなり、店主は私に近づき、目や肌の調子、髪などを確認してくる

 

 「あ、そうだ、何て呼べばいい?」


 確認しながら、店主が私の名前を聞いてくる


 「名前は、ルアンなので、そのままで大丈夫です」


 「わかった、ルアンって呼ぶね、うん、軽い栄養失調だね、いつからちゃんと食べてない?」


 どうやら店主は私の様子を見ただけで、栄養失調だと分かったようだ


 「えっと、もう長いことちゃんと食べてないです」


 ずっと森の中や洞窟で生活していたので、ちゃんとした食事は全然していない


 「なら、消化にいいものにしよう」


 「下で待ってて」


 言われるがままに、下へと降りていく


 「ちょっと待ってて、あ、別に歩き回ってていいよ」


 そういって、店主はすぐさま奥へと向かっていく


 「見ておこうかな・・・」


 もし、店主の言っていたことがすべて本当で、私をここで雇ってくれるのなら、ちゃんとこの建物を見て回っておいた方がいいが


 「本当に、雇ってくれるのかな?」

 

 正直、亜人を店で雇うなど、デメリットしかない


 そもそも普通の人は亜人が働いている店なんかに行きたくはないと思うのが大半

 

 「なら、見なくても・・・・」


 「いや、あの人は雇ってくれると言ってくれた、それなら、ちゃんとしなくちゃ」


 雇ってくれる気なのなら、ここを見ていなくちゃ迷惑になる


 それに、どうせ待っている間、何もすることがないのだから見ていて損はないだろう


 「・・・・ここは?」


 まずさっそく、店の入り口に一番近い扉に手をかけて中をのぞく


 「トイレだよね?」


 なぜトイレと確信が持てないかというと


 確かに雰囲気はトイレだと分かるが、見たことがあるものとは広さ、綺麗さが全然違うから


 「中に入るのは、やめておこう」


 もし気軽に入ってしまって、汚してしまったら大変なので、中に入らずに、次の扉に向かう


 「こっちもトイレ」


 おそらく、女性用と男性用のトイレということだろう


 「じゃあ、向こうは・・・」


 この階の奥の方にある扉にむかう


 「扉以外に、何もない?」

 

 その部屋の中は、小さな部屋になっていて奥にもう一枚扉がある以外には何もなかった


 「この奥は・・・」


 何の部屋か気になり、奥の扉も開く


 「この部屋も何もない」


 床や壁は先ほどまでとは違うが、それ以外には特に何もない


 「まだ途中なのかな?」


 何のための部屋かわからないが、何も置いてない以上、おそらくまだ完成していない部屋なのだろう


 それからほかの部屋も見て回ったが、あとは私が寝た部屋と同じような部屋が数個あとは裏庭に出るための扉があった


 「あ、いたいた」


 庭の方を見ていると、後ろから店主に声をかけられる


 「ご飯できたから来て」


 どうやら調理が終わって呼びに来たようだった


 「うわあ・・」


 椅子に座って待っていると、店主が鍋を持ってきて、中身を見せてくれた


 「簡単なものしかできないけど、味はちゃんとしているはずだよ」


 鍋の中身は卵とお米を使った簡単なおかゆ


 ごくっ


 ただ、いつ振りかわからないちゃんとした食事、それに加えておなかが空いていたので、食べ物を見て自然によだれが出てくる

 

 「熱いから気を付けてね?」


 そういいながら、鍋から小皿にいれてこっちに渡してくる


 「・・・・あの、本当に食べていいんですか?」


 店主に、食べてもいいのか確認する


 「もちろん、というか、きちんと食べてもらわないと、たくさん働いてもらうからね」


 「・・・食べなくても、動けます」


 その日のご飯にありつけない日などたくさんあった、なので一日二日くらいちゃんと食べなくても働くことはできる


 「それでも、食べたほうがより働けるだろ? だから、遠慮せずに食べてくれ」

 

 「・・・わかりました」


 このままずっと遠慮してても、かえって迷惑になると思い、食べることにする


 「・・・!!」


 一口食べて、美味しさと、久々のちゃんとした温かいご飯に感動する


 「全部食べていいから、ただ、体に悪いから急いで食べないようにね?」


 店主がちゃんと体に良くないので早食いしないように注意してくる


 ただ、空腹に加えて、久々の暖かいご飯、当然手が止まることなどなくすごい速さで口に運んでいく


 「・・・ふう」


 鍋のご飯をほとんど食べつくして、ようやく落ち着いてくる


 「まあ、とりあえず、君の仕事について話そうか」


 「あの、本当に私を雇ってくれるんですか?」


 「? そりゃ、雇うけど、別に嫌ならいいけど」


 「あ、いえ、そういうわけじゃなくて、私とかを雇っていたら、客が入ってこないんじゃ・・・」


 泊っているだけならほかの客がいるときは部屋にこもっておけば何も問題ないと思うが、働くとなった以上、絶対に人前に出ることになる


 そうなればすぐに噂は広まって客が来なくなってしまうのは確実なのだが


 「いや、普通の客は今は入れる気はないよ」


 「え? でも、それじゃあ、稼ぎは・・・?」


 「別に稼ぎたいからしているわけじゃないよ」


 一度目に聞いた時は細かくは聞かなかったので、今一度ここの宿について詳しく聞く


 この宿は普通の宿には泊まれない者に対して開いており、すこしでもそういった人たちの休める場を作ってあげることを目的としてやっているようだ


 だから、別に無理にお金を取るつもりもないし、なんならお金を稼ぐ手助けも必要ならするつもりでいるらしい


 「だいいち、見ていられないんだよ、君たちがこんな目にあっているという事実が」


 そういいながら店主は拳を今にも血が出そうなくらい握りしめる


 「一番の目標はいつか、どれだけ時間がかかってでも、僕は差別や迫害をなくしたいと思っている、だから、そのために君に手伝ってほしいんだ」


 エルフという、差別されている者がきちんとこの宿で働かせてもらえてると知ってもらうだけで、すこしでもほかの人が来やすくなる


 「わかりました」


 今の話しを聞いて確信する


 この人は絶対に嘘は言っていないし、思いも本物だ


 差別や迫害をなくすというのは簡単ではない、それでも、私たちのために本気になってくれているのだから、それに答えないわけにはいかない


 「まずは、何をすればいいですか?」


 「・・・ありがとう、本当に」


 店主が、嬉しそうに感謝を伝えてくる


 「でも、今日はもう休むといい、まだ疲れはとれていないだろう?」


 確かに、完全に疲れは取れてはいないが、動くのに問題はない


 だが、店主がそういうのなら、言葉に甘えて今日は休むことにする


 「明日、改めていろいろ教えていくよ」


 「わかりました!」


 そういい、部屋に戻る


 ぼふっ


 「なんだか、疲れたな」


 今日はいろいろと起こって、濃い一日となった


 奴隷商に捕まったことから始まり、店主に助けてもらった


 そこから久しぶりのちゃんとしたところで熟睡し、暖かいご飯を食べ、働くところもできた


 いままで一日一日なんとか生きていくための生活をしていたが、これからはちゃんとした目的をもって生活していくことになる


 「私も、できるだけほかのみんなを助けたい」


 店主の話を聞いて、自分でもできることはないのかを考えてみることにする


 「うーん、あんまり思いつかないな」


 何をしたらいいかも、自分にできることも分からない以上、それほど難しいことは考えられない


 「簡単なことから、始めようかな」


 まずは、この宿のことを知ってもらうこと、それだけでも、店主の助けになり、それからみんなを助けることにもつながる


 「うん! まずはこれを目標に頑張ろう!」


 頑張るためにも、まずはしっかり休んで明日からの仕事を精一杯するために、すぐにベッドに入る


 「余裕ができたら、お母さんたちにも会いに行きたいな・・・」


 無事なのかどうかはわからないが、一度家には帰ってみたい、私が無事であることも伝えたいし、もし可能ならお母さんたちもこの宿に連れてきたい


 「まあ、まだ先のこ、と・・・・」


 そう考えているうちに、私はいつの間にか睡眠に落ちていた

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