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エルフの少女・1


 森の中に、ひっそりと身をひそめながら小さくなっている少女の姿があった


 「はあ、寒い」


 気温もだいぶ下がって、体温も奪われる


 「火、つけなきゃ」


 少しでも寒さをしのぐために、焚き火をしようと枯れ葉や小枝を集めるが


 「あ、火打石が・・・」

  

 燃えるようなものをすべて集めてから、火を付けるための道具がもないことに気が付く


 「明日にでも、調達しなきゃ」


 火おこしをする体力も残っていないし、今日は我慢することにする


 ぐうう


 「おなか、空いたな」


 ここ数日、まともに食事もしていなく、空腹も襲ってくる


 「寝よ・・・」


 ただ、もう食べ物もないので、それも耐えるしかない


 「明日も、生きているといいな」


 正直体もかなり限界がきているので、もしかしたらこれが最後の瞬間になるかもしれない

 

 「ううん、諦めちゃダメ、お母さんとお父さんのためにも」


 数年前、亜人狩りに会いわたしたちエルフの里は襲撃された、その際、お母さんとお父さんが命がけで守ってくれたので、簡単にあきらめたりはできない

 

 のだが、正直こんな世の中で生きていける気はしない


 今迄は森の中で自給自足をしていたが、私みたいな子供じゃ、食べれる野草も分からないし、狩りもろくにできない


 食べ物を買おうとしても、エルフである私にはそもそも何も売ってはくれない


 だから、食べ物にありつくにはごみ漁りが一番安全だが、高い確率でおなかを壊してしまうので、あまりしたくはない


 「一回でいいから、暖かいお家で寝たいな・・・」


 もう数年、ちゃんとした建物で寝ていない、ボロボロな空き家や洞窟を転々としていただけなので、暖かい部屋で暖かいベッドで眠りたい


 「そろそろ寝ないと・・」


 この辺りは日中、人が少なくはないので、日が昇る前に移動の準備をしなければならない


 


 「・・・・なんとか、生きてた」


 ろくに睡眠はできなかったが、もうそろそろ日も昇るので移動する準備をする


 「よし、行こ」


 行き先も決めずに、ただ適当に人に見つからないように歩くだけ


 そのついでに果物を見つければ取って食べる


 「あ、そうだ、火打石・・・」


 火をつけるためのものを調達しなければ、今日も寒い中野宿になってしまう

 

 「でも、どうやって買えばいいかな」


 普通の店では、そもそも私には物を売ってくれないし、もし売ってくれる店を見つけても無理な値段を吹っかけてくる


 「お金も、ないし」


 「とりあえず、むぐ!!」


 とりあえず町の近くまで行こうと考えていたとき、いきなり後ろから何者かに襲われる


 「おお! 旦那、亜人ですぜ、それにエルフ、いいもん見つけましたね」

 

 この言いぐさにはよくなじみがある、亜人を取り扱っている奴隷商だ


 「ん! んぐ!!」


 今迄こいつらを一番警戒していたのに、疲労と空腹から警戒がおろそかになってしまい、つかまってしまう


 「とりあえず、寝かせろ」


 「そうですね」


 そういって、奴隷商は睡眠薬か何かを吸わせてくる


 「・・ん、ん・・・」


 ここで寝てしまったら、もう逃げることなどできなくなってしまうが、睡眠薬が強烈なのか抗うことができない


 そして、完全に眠りに落ちてしまう




 次に目を覚ましたのは、檻の中だった


 「ん、ううん、ここは・・・?」


 おそらく運ばれている途中なのだろう、檻のようなものに入れられていた


 「まだ、森の中・・・」


 檻から外を確認すると、木々が見えたので、多分森の中で、眠りに入ってそこまで時間は立っていないと予想する


 「森の中のうちに逃げたいけど・・・」


 もし、このまま町や都の中まで運ばれてしまったら逃げれる確率は大きく下がってしまう


 「だめだ、鍵もかかってるし、外れそうにない」


 簡単な鍵なら、多分外せたと思うが、思ったよりも複雑な鍵なようで、外せる気がしない


 「はあ、もう終わりかな・・・」


 今のところ、逃げる手立てはないのを確信した私は、もうあきらめてしまう

 

 「売られたら、どこに行くんだろ?」


 私のような亜人は、奴隷になったら、大体の結末は決まっている


 一生工夫として働くか、使い捨ての兵士として戦争に行かされるか、最悪、実験材料として使われることもある


 「それなら、いっそう、今のうちに」

 

 もし今後そんな生活が続くのなら、今のうちに死んでしまう方が楽なのでは、と思い


 「・・・・やっぱり回収されてるか」


 もしもの時に隠していたナイフを探すが、案の定回収されており、自殺もできなくなってしまった


 「昨日、生きようって思ったのに・・・」


 昨日、改めて親のために生きようと思ったのに、そんな矢先にこんな事態になるなんて思わなかった


 もうあきらめ、何も考えないまま時間が過ぎるのを待つ


 「あ、森を抜けた・・・」


 森を抜けて、どこのものかわからないが門を通った

 

 そこからまだ移動をして、数分が経ったときに突然


 かちゃん


 「ん?」


 どこからか音がして、何の音かを探る


 「え・・・開いてる?」


 もしかして、檻の鍵が開いたのかと思って手をかけると、予想通り鍵が開いていた


 「・・・今なら、逃げられる・・・」


 明らかに私をさらった人たちが開けたとは思えない、それに今も移動し続けているのだから目的地についていないはずだし開ける必要もない


 「・・・どうせ、このままここにいてもいいことはないんだし!」


 一か八か、逃げ伸びられる可能性があるのならそれにかけてみる


 「荷物は、仕方ない」


 どこに荷物があるのかわからない以上、手ぶらで逃げなければならない


 「・・・別に大切なものはないし、いいか」


 荷物の中にはその日に必要なものを入れていたようなものなので、あえて探して持っていくようなものではない


 「・・・いま!」


 タイミングを見計らって、檻から飛び出る


 「おい! だんな! 亜人が逃げたぞ!」


 ただ、すぐに逃げたことがばれてしまい、すぐさま追手が来る


 「・・・はあ、はあ」


 追っては馬に乗って追ってきていたが、路地裏や、細い道を取ってなんとか逃げていた


 「こっちは・・・ダメ」


 路地裏から出ようとしたが、人が多い道に出そうになり、戻る

 

 今は顔を隠すためのものが何もないので、人前に出るわけにはいかない


 それぐらい、亜人というのは目立ってしまう、今の状況で目立ってしまうと逃げることもままならなくなってしまうので、人にも見つかるわけにはいかない


 「おい、隈なく探せ! せっかくのエルフなんだ! 絶対に逃がすな!」


 近くからさっきまで追ってきていた男の声が聞こえ、すぐさま身を隠す


 「追手も増えてる・・・どうしよ・・・」


 追手が増えてる以上、このままでは見つかるのは時間の内、それなら一か八か目立つのを覚悟で人が多いところに行くのも手ではないかと考える


 「おい! 出てくるなら今の内だ!」


 そうこう考えているうちに、追手が私の隠れていた路地まで近づいてくる


 「考えてる暇はない!」


 もう逃げ場もないので、覚悟を決めて人の多い道に出ようとしたが


 「・・・そんな・・・」


 振り返った瞬間に、男が立っているのに気づく


 「ここにいたのか」


 私が気づかないうちに反対からも追手が来ていたようだ


 つかまった・・と、ペタンと、力が抜けてその場に崩れる


 そして、男が近づいてきて私に手を伸ばし


 「・・・しー」


 肩に触れて、声を出さないように指示してくる

 

 「え・・・・?」


 「声を出さないで、あいつらに見つかる」


 声を出しそうになった私の口を塞いで、無理やり声を出さないようにする


 「ちっ、ここにもいねえ」


 そして、そのまま声を出さないようにしていると、明らかにこちらが見えているはずなのに、追手は認識せずにどこかに行く


 「もう少しまとう」


 今の出来事に混乱していると、助けてくれた男の人が声をかけてくれる


 「・・・よし、今なら大丈夫だ」


 「・・あの・・」


 「とりあえず、移動しよう」


 「あ、は、はい」


 このままここで話を続けているともしかしたら追手がまた来る可能性もあるので、移動するようだ


 「でも、どこにですか?」


 私が亜人である以上、むやみに移動するわけにもいかないし、建物の中に入れるわけにもいかない


 「大丈夫、この近くに僕の宿がある、そこに行こう」


 そして、男に連れられるがまま、一つの宿までたどり着く


 「・・・【黒猫の宿】?」

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