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塔の姫は隣国の王子と恋をする  作者: しろねこ。


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騎士訓練①

「昨日は大変でした…」


同じく眠れなかったミューズはふわぁと欠伸をしながらレナンと話をする。

座学が始まるまでの間、少しだけなら話す時間もあるのだ。


「何かあったのですか?」

「ティタンがエリック様にヤキモチを妬いてしまって。政治の話など仕事に関わる話題にのれないのが寂しいそうです」


ティタンも政治の事はある程度わかるが、騎士であるティタンがそれ程詳しくないのは仕方ないのに。


鍛錬や警護で忙しいのだから、そちらに力を入れないといけない。


(私のためにあの筋肉を維持してもらいたいし)

早くあの厚い胸板に飛び込みたい。


昨日の抱擁を思い出し、ちょっぴり顔を赤くしてしまった。


顔を赤らめるミューズを寝不足で具合が悪いからだろうと心配する。


「ですが、ミューズ様は結婚なされたら政治に関わるポジションにつかねばならないですし、難しいですね。ミューズ様に仕事を変えられてはこちらも困りますし。ですがティタン様の気持ちもわかります」


「ミューズ様もティタン様のお仕事を見学に行ってみては?」


「お互いの仕事に理解は必要です。ティタン様が寂しいとおっしゃられているなら寄り添う事が大事だと思います。

私やエリック様といると、つい仕事の話になりがちなのも申し訳ないです…」

その点の配慮が足りなかったとレナンも反省する。


「私もミューズ様もティタン様のお仕事について詳しく知りえませんし、騎士様たちの鍛錬を見学させてもらえるよう頼んで見ましょう」

「見学…!」

なんと素晴らしいアイデアだろう。


ティタンとの距離も縮まるだろうし、たくましい騎士達の鍛錬を間近で見られるなんて。

期待に胸が膨らむ。


「素敵なアイデアですね。先生に頼んで休憩時間を少し早めにとらせてもらいましょう」


疲れなど吹き飛び、俄然やる気が湧いてきた。レナンとしてもミューズが元気になりとても嬉しい。


「ティタン様あちらを…」

鍛錬中に部下の一人がこそっと耳打ちをする。


重大な話かと思い、促す方向を見るとミューズとレナンがこちらを見ていた。

驚きに目を見張り、釘付けになってしまう。


今朝はずっと鍛錬場で過ごしてしまい、昨夜から会えずじまいだったが、こうして来てくれるなどニヤけてしまいそうな程嬉しい。思わず口元を隠す。


すぐにでもかけ寄りたいが、こんな汗だらけで行ったら嫌われてしまうだろうか。


「あぁ、なんて素敵なのでしょう」


鍛え抜かれた騎士達の動きはそこらの劇よりもよっぽど心躍る。飛び散る汗。引き締まった体。


その中でミューズの視線は自然とティタンを追ってしまう。

それに気づいているレナンはミューズを微笑ましく思い、他の騎士達の訓練を見てみる。


(全く動きが見えませんが?)


体を動かす系が苦手なレナンには凄いとは思いつつも細かな動きがわからない。

解説してくれてるミューズには悪いがどこがどの動きなのかわからない。


「わぁ、今の動き凄いです!くるりと剣をひねって返す刃で…あぁ一瞬でそんなに距離を取れるなんてどんな脚力でしょうか」


令嬢達には乱暴であると敬遠される訓練の様子もミューズにとっては素敵な演武だ。

鍛錬場のあちこちで訓練が行われており、目移りしてしまう。


だか一番ステキなのはやはりティタン。

木剣を手に次々と相手をいなしていく。

真剣な表情と鋭い目つき、大きなカラダにそぐわない素早い動き。


時には左手で木剣を受けつつ突きで相手を倒していく。


倒した相手にアドバイスをしている様で少し話したら次の相手と鍛錬をする。

実力差はあるが一撃で倒すわけではなく、何回か剣を受けてから倒している。

打ち合うとはどういう事か試させているようだ。


騎士団長であるとは聞いてるが、ただ強いだけではなく後任育成にも務めているのだ。


実際のティタンの仕事を見てその複雑さに改めて大変だと思う。

人に教えるというのはとても難しいのに、一人ひとりに丁寧に接する姿を見て凄いなぁと素直に感じていた。


ふと目線があったような気がしたが気の所為だろうか?


そこへ別な男性がティタンと話し始める。栗色の髪の毛と切れ長の目。何やら親しげにも話しており、ミューズには向けない気さくな笑顔を見せている。


仕事の話だろうが、胸がちくりと痛む。

自分の知らない話題、表情、男同士の友情。


(あぁきっとこれがヤキモチなんだわ)


独占欲の気持ちにようやくミューズはティタンに共感した。


相手が男性であれ女性であれ、自分の愛しい人が違う人に気持ちを向けている状態は辛い。改めて自分の行動を見つめ直そうと反省した。

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