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塔の中

「今日はどうしましょ」

まだ眠気の覚めぬ中ぼんやりとした頭で考え始めた。

早朝と深夜に執務をこなし、昼には国王のもとへお見舞いに行ったりお忍びで視察にいったり、部屋で出来る執務をこなしている。


たまに来る異母妹のイジメをかわすのが、ここ数年のミューズの日課だ。

この塔の中には王妃の娘であるミューズと数少ない使用人だけしかいない。

豪華で広い王宮には意識のない国王とその愛人と娘が暮らしていた。

王妃が病で亡くなった数日後、国王も失意の中倒れてしまった。

医者や魔術師が診たが、体に異変はなく精神的なものではないかと思われた。

ミューズも魔法で治療を試みたものの目覚めることはない。

身体は正常に機能しているため、ミューズは命の灯火だけは消さないよう魔力を流していた。


(お父様は好きだけれど、浮気は許せないよね)


国王が倒れてから、なんと国王の妾だという女性とその娘が訪れた。

贈り物だという王家の家紋入りの宝剣と玉璽が押された手紙を持って。

もちろん城内は荒れた。

愛妻家で知られていた国王にそんな醜聞があるなんてと慌てふためいた。


しかし、当の国王は意識不明で聞くことも出来ず、追い返すには完璧すぎる証拠の品も持っている。

仕方なく王宮に招いたが、ここから様々な事が一変した。

まずは王妃が亡くなったために自分が王妃だと言う女性、ワガママ放題にお金を使うその娘、何故か二人を推す大臣派の面々。

王妃の娘であるミューズはこうしてこちらの離れている塔に押し込められた。

さすがに政治に関わる事は明け渡しはしなかったが、予算についての口出しは大いに増えた。


国王の右腕であった宰相が切り盛りしているが、それだけでは負担が大きいので後継者として育てられたミューズがこっそり手伝いをしている。

表立って行くと大臣や妾の女性がうるさいのでこっそりと。


ここずっと社交界に出られてないミューズの悪評は何も知らないはずの国民へも広まっている。


とてつもなく金遣いが荒く、男たらしである。どんどんと国庫から金を引き出しどんなに注意しても散財してしまうと。

それ故に国王夫妻を悩ませ、王妃の死や王の病気へとつながった親不孝娘であるなど。

もちろん民とて最初は信じなかった。

しかし、異母妹達が、孤児院や治癒院に媚を売りにいき、国の情勢が傾いてくるとその噂も真実味を増してきた。


実際には国王が倒れてしまい、死にものぐるいで立て直しをはかっていたためミューズには余裕がなかったのだ。


気づいた時には噂が隣国まで知れ渡ったあと。

世間の目が痛く仕方無しに塔へ移住をし、茶会などの社交界にも顔を出さなくなった。

そもそも茶会に参加する時間も予算もミューズにはなくひたすら執務に挑んだ。

全ては国王が目を覚まし、真実を語ってくれれば元に戻る。


そう信じてひたすら走り続けて5年も経ってしまった。


全てを投げ出そうかなと思ったが、民や重臣、そして父を見捨てる事は出来なかった

「我ながら馬鹿よね」

母の肖像画に語りかけながら、くすりと笑う。

母が生きていればこんな事にはならなかっただろう。



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