第4話 事業承継
ある日の嶋尻家のリビングにて…
”次のニュースです。速報です!家電大手KAMADAホールディングスの創業社長急死に端を発した現経営陣と創業家の対立が本格化し、創業家側は所有する株とTOB、株式公開買付により少数株主から買い付けた株を合わせて、発行株式数の50%超となる株式会社鎌田損保をKAMADAホールディングスから独立させると発表しました!!”
「ほぅ。やはりお家騒動は収まらなかったという訳か…」
「パパ。KAMADAって、創業した社長が一代で築き上げたっていう、あの電機屋さんだよねぇ…」
「美琴か。そうさ。うちの家電製品のほとんどをKAMADAで買ってるぞ!」
「他の店よりも高い時に値引してくれる上、ポイントの還元率も高いから、月1で行ってるよね」
「ああ。最近は家電だけじゃなく、日用雑貨や食料品なんかも置いていたりするから、母さんと一緒によくでかけるな」
「そのKAMADAで、お家騒動?」
「創業社長が去年の暮れに亡くなって、その株を相続した創業家が、現在の経営陣と事業承継でもめて、対立しているんだよ」
「で、KAMADAグループから、損保会社が独立しそうになっているって話なんだね…」
「保険会社っていうのは、うまく経営を行えば利益を上げやすい業種なんだ。故に、本業で損失が出ていても、グループ会社の中の保険会社が利益を上げていて、グループを支えているってこともあるんだ」
「事業承継って、この前の大学の講義でも出てきたんだぁ。大学の講義じゃ、誰が承継するのかの観点と、何が承継されるのかの観点に別れるって言ってたなぁ…」
「誰が承継するのかの観点だと、 親族内 親族外 (役員・従業員) 第三者 の三つに分かれるな。親族内の場合、内外から受け入れやすいが、親族に経営能力や意欲があるかは別の問題ということになる」
「親族外の場合、親族内に適任者がいなくても、候補者を確保しやすいけど、親族からの承認が必要になるんだよね」
「ああ。で、第三者の場合、広く候補者を集められ、現在のオーナーは会社を売却することによる利益を享受できるという訳だ」
「何が承継されるのかの観点だと、 地位 財産 (有形・無形) 経営そのもの の3つがあるんだよね」
「地位は、代表権や取締役、議決権としての株主などだな。で、財産は株式や財産権としての株主、経営理念や社風。そして経営そのものは、経営判断力、先見力、決断力、社内外からの信用、人望、人間力などだな。帝王学といっても良いかも知れない」
「鎌田損保が持ち株会社から独立しそうになっているってことは、KAMADAは事業承継が失敗したってこと?」
「まぁ、そういうことだな。死んだ人の相続人が多い場合、その恩恵を受けようと、それまで経営のケの字も知らない相続人が会社を承継する権利を主張してもめることが多いんだ。KAMADAは大企業だから、今回のお家騒動は自業自得と言われても仕方ないだろうな」
「中小企業の場合は、何か違うことがあるの?」
「中小企業の場合、事業承継を支援する制度がある。例えば 経営承継円滑化法 という法律では、税制や民法上の遺留分制度による制約の対応といった支援策の基礎が定められる。税制では、非上場株式を贈与・相続した場合に納税が猶予されたり、後継者が死亡した場合は猶予中の税が免除される仕組みがある。これ以外にも、平成30年から10年間限定の 特例事業承継税制 があったり、 民放特例 、 経営者保証に関するガイドライン が定められているな」
「日本の会社のほとんどが中小企業だもんね。で、それが事業承継のたびに潰れたり解散したりしていたら、一番被害に遭うのって、そこで働いている従業員だもんね」
「その通り。故に、中小企業の事業承継では、さまざまな支援策が講じられているって訳さ」
「KAMADAも、はやくお家騒動が落ち着いて、前みたいなサービスが私たちに提供されるといいんだけど…」
「そうだな………KAMADAの件、明日は我が身と思って、真琴と美琴が争うことのないように、準備をしていかなければな…」
「パパ!それは大丈夫!!パパとママの財産を、私が継承することは、多分ないから…」
「…なぜ、そう言い切れる?」
「それは、私にはせんぱ………」
「美琴には…なんだって!?」
「いや……なんでもない」
「??」
第5話 に続く
☆検定問題にチャレンジ!!☆
次の1~4は、事業継承を支援する制度である。このうち、平成30年度税制改正で定められた、10年間限定の税制に関する特例措置が規定されたものを1つ選びなさい。(剣世炸作成 オリジナル問題)
1.経営承継円滑化法
2.税法特例 (事業継承税制)
3.特例事業承継税制
4.経営者保証に関するガイドライン
平成30年度税制改革で定められた、10年間限定の税制に関する特例措置が規定されたものは…
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3.特例事業承継税制