第1話 企業のライフステージ
銀杏大学の最寄り駅、國分寺駅のエキナカにて…
「せんぱ~い!」
改札前で待っていると、駅ビルのある南口から、私の姿を確認した先輩が手を振っている。
「ゼミの副幹事の仕事で、少し遅くなった。待ったか?」
「私も今来たところだよ!」
「なら良かった!それじゃ、早速中に入ろうか!」
「はい!」
”ピッ” ”ピッ”
改札のモニターに『定期券利用』と表示され、入口が開くと同時に、私と先輩は改札の中に入った。
「それにしても、まさか國分寺駅にエキナカができるとは思わなかったよ…」
「私が入試を受けた時位から、工事してましたよねぇ。私はてっきり電車のホームとかを拡張するのかと思ってましたけど…」
「大学の仲間内じゃ、エキナカができてオシャレな空間になるって、もっぱらの噂だったけど、本当にそうなるとはな…」
「そのお陰で、私と先輩がデートできる場所が増えましたけどね!」
「そうだな………おっ、ここだ」
「開店して間もないってこともあるんでしょうけど…かわいい店ですね!」
私たちが入ろうとしている店は、色とりどりのマカロンを販売している店で、イートインスペースもある。
開店したては混在するだろうと踏んだ私たちは、1か月位経って少し落ち着いた頃に行こうということにし、大学の友人から客足が少し落ち着いたという情報を入手し、今日その店を訪れたのだが…
「…落ち着いた、とはいえ結構並んでいるな…」
「先輩!大丈夫ですよー」
「??どういうことだ?」
「今日のこの時間で、イートインスペースの席をリザーブしておいたんです!」
中を見ると、『reserve』の札が置かれた席がいくつもあった。
「なるほど………だから、予約をしていない人達が列を成しているって訳か」
「はい。中に入りましょう!!」
「いらっしゃいませ~」
「2名で予約している嶋尻ですけど…」
「………嶋尻様!お待ちしておりました。どうぞこちらへ!」
店員に予約席まで案内された私と先輩は、マカロンと飲み物のコースを注文した。
「それにしても、この店を展開している会社って、確か創業して間もない会社でしたよね…」
「ああ。企業のライフステージで言えば、 創業期 に該当するはずだ」
「この店って、沿線のエキナカに凄い勢いで出店してますよね!」
「そうだな。俺が知っているだけでも、10はくだらないはずだ」
「確か、創業期の会社って、『創業者の夢の具現化』『具体的なアイデアや商品・サービス』『創業者の覚悟や家族・協力者の同意』『資金調達』『創業者の経営知識やノウハウ』『労働力』『販路の確保や拡大』『PR』なんかが経営上の課題になるはずでしたよね」
「ああ。故に、通常は新規参入の会社は、1号店で様子を見て、 成長期 になったら新しい店舗展開をするはずだ」
「 成長期 の会社って、『事業拡大の運転・開業資金』『社内の体制作り』『自社に必要な新た課題』『経営に纏わる社内外のサポート体制』が課題なんですよね~」
「そうだな。で、 安定期・成熟期 になった会社は『自社の強みと弱みに根差した対策』『経営革新』『業績向上』『経営改善計画の策定と解決に向けた取り組み』が課題になるんだ」
「今流行っているタピオカドリンクの店を展開している会社は、ブームがひと段落してますから、安定期・成熟期に該当するのかなぁ…」
「大半の会社がそうだろうけど、中には 衰退期・再生等 に該当する会社もあるだろうな」
「ふぇぇ………衰退期・再生等のフェーズに移行した会社は、もうダメなんですか?」
「まずは『経営改善』か『私的再生』で、金融機関との取引条件の見直しを図ったり、債権者に対する債権放棄の交渉、業種転換や不採算部門の切り離し、資産売却による資金捻出の検討、などがされる。それでも事業継続が難しい場合は『自主廃業』や、法的措置による廃業を検討し、事業からの円滑な撤退を図ることになるだろうな」
「ブームに乗っかったお店が、ブームが去るのと同時に店を撤退させるのも、経営改善や私的再生が難しい故なんですね」
「そういうこと。だから、今日来たこの店も、マカロンだけでなく、いろいろなスイーツを提供しているだろ?」
「確かに…マカロン以外にも、クレープだったり、タピオカドリンクだったり…」
「仮にマカロンのブームが過ぎても、客が離れなければ、他の商品で営業を続けられる、という経営戦略なんだろうな」
「マカロンって、見た目もとても可愛いし、私は大好きですけど、確か2005年位に流行ったスイーツですよね。ブームは繰り返すって言いますし、カフェ系の飲食店は、流行りを先読みする力が求められますね!」
「そうだな…で、流行りを先読みできても、創業者が引退した途端に潰れてしまう会社もあるから、しっかりと後継者を育てて、 事業継承 を検討しておかないと、大企業との友好的M&Aを検討する必要が出てくるだろうな」
「M&Aって、最近その言葉が入った会社のCMをよく見かけるようになったと思うんですけど…」
「日本でのM&Aは、吸収合併や事業譲渡、会社分割、買収合併などがある」
「ああ!簿記で言うところの『のれん』や『負ののれん発生益』が発生するアレですね!」
「日商簿記2級、全経簿記1級、全商簿記1級の吸収合併、買収合併で出てくる、企業の実際価格と吸収の際に発行した株との差額、ないし買収の際に払ったお金との差額のことだ。そもそもM&AはMergers and Acquisitionsの略称で、合併と買収という意味だ」
「なるほど………で、M&Aに友好的とか………その反対は、敵対的???なものってあるんですか?」
「買収の対象となっている会社の経営陣が同意していない時のM&Aは、敵対的M&Aと呼ばれるんだ」
「確かに、買収される側が同意していなければ、買収する側は『敵』って感じになりますもんねぇ…」
「『敵対的M&A』の場合、経営陣だけでなく、買収される側の企業の、株主や取引先、従業員などの利害関係者に対しても、良くない条件を提示されることが多い。故に、後継者不足に悩む中小企業が多い昨今は、友好的なM&Aを模索する企業も少なくないようだな」
「お待たせしました~今日のおすすめマカロンとドリンクのセットでございま~す!」
目の前のテーブルに、色とりどりのマカロンと美味しそうなドリンクが並べられる。
「先輩!美味しそうですね~早く食べましょうよ!!」
「ああ!」
「この店が、いつまでも安定期・成熟期であることを、私は祈ります!」
「そうだな!!」
第2話 に続く
☆検定問題にチャレンジ!!☆
次は、企業が『事業の持続可能性が見込まれない』時についての記載である。中から不適当と思われるものを1つ選びなさい(剣世炸作成 オリジナル問題)
1.金融機関を含む債権者との債務整理の交渉を行う
2.自主廃業や法的措置による廃業を検討する
3.事業の存続がいたずらに長引くと、経営者の生活再建や企業の取引先に悪影響を及ぼす
4.債務整理・資産売却による資金の捻出の検討する
不適当 (間違っている)選択肢は…
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4.債務整理・資産売却による資金の捻出の検討する
☆ 解 説 ☆
債務整理や資産売却による資金の捻出を検討するのは、経営改善や私的再生が必要な段階での課題となり、『事業の持続可能性が見込まれないとき』に行うべきことではないため、不適当ということになります。