JSと勝負することにした件について
小学生の女の子は、まるで誰かに聞いて欲しくて、それが今実現して一気に思いがでたかのように、話してくれた。
小学生の女の子は、一ヶ月ほど前に、中学受験をしたそうだ。
とても勉強をがんばった。
だけど全部落ちてしまった。
勉強したことが無駄になってしまった。
そして、勉強ばっかりしていて友達がいなくなってしまったので、中学受験が終わってもこうして一人で図書館に勉強するしかやることがない。
そういうことだった。
今は三学期も終わり。
この小学生の女の子は、一ヶ月以上も一人でそんなことを抱えていたみたいなのだ。
振られたその日に慰めてもらった僕とは、全然違った。
「私、最近自分がいる意味がわからなくて、私がいると、誰が楽しいのかなって疑問です」
「……」
「私はがんばったのに周りは辛そうな顔をしています。落ちたから。お友達は、私がいてもいなくても変わらずに楽しそうにしています」
「……」
「だから、私、いる意味あるのかって思うんです。私がいると楽しくなる人なんて、いるんでしょうか?」
「……いる」
僕は答えた。
そして答えながら思った。
小学生の女の子が僕に言ってくれたこと。それはきっと小学生の女の子の願望だ。
だけど現実には失ったものしか見当たらないのだ。
そんな風に思っている。
だから、小学生の女の子は、僕をなぐさめて、僕にいる意味を認めてもらいたかったのかもしれない。
誰かの役に立つことをしたかった、そういうことだ。
「なあ、勉強がんばったのに失ったものしか見つからない僕と君でさ、勝負しない?」
「勝負ですか? お勉強の勝負ですか?」
「違う。明日、この時間にここに来れる?」
「これます」
「じゃあ、明日ここに友達を連れて来れた方が勝ち。二人とも連れて来れたなら、二人とも勝ち。一人でも、たくさんでもいい」
「なんですかその幼稚な勝負」
「……やらない?」
「や、やります。わかりました。やりましょう。お互いお友達を作れるといいですね」
「ああ」
僕たちはこうして、変な勝負をすることになった。
だけど勝負ではない。まあそれにおそらく僕が負けて、小学生の女の子が勝つだろうし。