僕と契約して魔法聖女になってよ☆
思いついて書いてみました。拙作ですがよろしくお願いします。
ゆるゆる設定です。誤字脱字にはお目溢しを。
この世界には勇者と聖女がいる。魔界からやってきては暴れる魔物を倒してくれるのだ。
煌めく鎧にマントを靡かせ聖剣を振るう勇者に、淡く輝く真っ白なローブに可愛い服と凝った意匠の杖で魔法を放つ聖女は少年少女の憧れ。子供の頃はみんな一度は真似をしてごっこ遊びをしている。
彼らは十数年に一度代替わりするようだがその間は若い姿のままの不思議な存在で、天の使いや天界に住む一族ではないかと言われているが魔物が現れたらどこからともなく現れて倒したらすぐにいなくなってしまうのでその正体は長年謎のままだ。
かくいう私もあの日までは聖女様に憧れていたーーー
◇◇◇
「ただいまー」
おつかいから帰ってきて家の中に入る。返事はないが母の声が聞こえた。
声のした部屋のドアを開けると、
「ぎゃー!」
母と変な魔物がいた。
白くて猫みたいなウサギみたいなぬいぐるみかと思いたかったが浮いている!!
「お、お母さんそれは?魔物?!逃げて!」
「違うのよ。大丈夫だから落ち着いて。この子は聖獣なのよ」
「へ?」
「よろしく〜」
魔物が喋った!!なんか間延びしたイラッとくる喋り方だな。
「この子が見えるのなら仕方ないわね。この子は聖獣で聖なる導き手なの。彼が聖女と勇者を決めているの。そして、実はお母さんが魔法聖女なのよ!!」
……………。
「は?」
「だから!お母さんが魔法聖「それは聞こえた」
「反応薄くない?」
「いや、だって聖女様ってもっと若いじゃん」
「それはね。変身するとベストな年齢になるのよ!」
「なんのベスト?!」
「それはほら、体力とか見た目?髪色も変わるし目元もちょっとパッチリするのよ。急に言われても信じられないよね。わかったわ今証拠を見せてあげる。杖ちょうだい」
「ほいほ〜い」
白い魔物が杖を口から出す。どうやって収納してんのよ!!
母がそれを握ると部屋が白い光に満たされる。
目を開けるとそこには今代の聖女がいた。
「ほら、ね?信じてくれた?」
「ちょっと整理が追いつかないんだけど。お母さんが魔法聖女なら勇者様は?!まさかお父さん?!!」
「いえ、酒屋のジムおじさんよ」
「なんでよ!!最近髪が薄くなってお腹が出てきたこと気にしてたおじさんが勇者様だなんて!!」
「あ、大丈夫。浮気とかしてないからね。ジムとは長年一緒に戦ってきたけどビジネスパートナーだから」
「それはそれでなんかイヤ!!」
ゼェハァと肩で息をする。母はまだ聖女の姿のままだ。我が家に聖女様がいる光景がシュール過ぎる。
「いい加減変身?解いてよ」
「ああ、ごめんごめん。よいしょっと。はぁ〜。やっぱり疲れるのよね。魔法で若くなっても次の日とか反動がすごくて〜。だからね!早く次を見つけてって聖獣にいってたの!」
「だってもうすぐ魔王倒せそうだったし〜」
「貴方のもうすぐってスパンが長いのよ!!今日もその事で話していたらあなたが帰ってきたのに気付かなくて…失敗しちゃった」
「僕の姿も見えるみたいだし〜彼女で良くない〜?僕と契約して聖女になってよ☆」
「え?私が次の聖女?」
「ダメよ!!あなたを見られたから仕方なく説明したけどこの子にこんな業は背負わせられないわ!」
「一緒に勇者も変えよう〜。次はジムの息子のジェイクとか魔力多そうだしいいんじゃない〜!」
「え!ジェイクが勇者!やるやる!私聖女やる!」
彼はこの町の中では一、二を争うイケメンだ。将来の毛量に不安はあるが…。
「はい契約成立〜!」
「え?今ので?」
「ああぁ〜〜っ!!!ダメよ〜〜!!」
光に包まれて変身した。窓に映った自分の姿を見てピョンピョン飛び跳ねる。幼い頃真似した聖女様だ!白い可愛いローブに杖。髪色もなんかピンクに変わって見慣れない…。ていうか、美少女になってない?!
「本当に聖女様になっちゃった!!凄い凄〜い!!
お母さんはなんでそんなに落ち込んでるの?まだ聖女やりたかった?!ごめん!あれで契約成立すると思わなくて!」
「いえそうじゃないの。やめたくてやめたくて仕方なかったわ。この歳まで魔法聖女とかキツいのよ!!
見た目は若いままだから最初はずっとやっててもいいかなーとか考えてたわ!でも年々元の姿とのギャップが辛くなってくるの!特に近所の人に聖女さま〜とか応援されたら!羞恥心フルスロットルよ!!
しかも、聖獣の時間感覚が人間と違うから何度言ってもなかなか次の聖女を見つけようとしてくれなくて…何度聖獣にイラッとして倒したか…」
「え?聖獣さまを?!!」
「僕はこの世界のエネルギーの塊みたいなものだから〜。この体を斬ったり焼いたりしても第二第三の僕が出てくるよ〜」
「そ、そう…」
母の話になんだかちょっとゾッとしてきた。確かに今はいいけど次の聖女が見つかるまでやり続けるのか…いままでの聖女様達も一定期間で替わっていたそうだからある程度すれば見つかるのだろう。でも確かに母の年齢までこのフリフリ衣装とか…。
ヤバい!笑顔の母と目が合った。何考えてたかバレた!目が笑ってない!!
目をそらして話題を変えるために聖獣に訪ねる。
「さっきもうすぐ魔王が倒せるって言ってたよね?どういうこと?」
「魔物は魔界から送り込まれるんだけどね〜。人間の恐怖心が魔界の魔力の素なの〜。僕は天界から来たんだけど天界は人間の祈りが魔力の素で〜。長年の勇者達の活躍のおかげで魔界の魔力が枯渇しそうなんだよね〜」
「なるほど。じゃあ、魔王とかも弱体化してるってこと?魔界に行って魔王倒しちゃえば?」
「それは考えたことなかった〜」
魔物の前に聖獣を倒した。
「こうなったら少女の内に魔界に乗り込んで魔王を潰してやる!」
◇◇◇
最後に魔王を倒した勇者と聖女は歴代のなかで一番強かったという。特に聖女の覇気が凄まじかったそうだ。
魔界に乗り込んで魔物達を一掃したのは代替わりしてから五年後。魔界から帰還した勇者と聖女は「ギリギリ間に合った…」と涙し抱擁したそうだ。魔王と戦ったのだからさぞや苦戦したのだろうと民衆も涙したという。。。
最後まで読んでくださりありがとうございました。