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転移
部屋は暗く、斜陽すら差さない。
勉強机の上には手付かずの参考書が山と詰まれている。ベッドには学校カバンが投げ出され、中身が布団の上に散乱している。今月の行事予定、テスト範囲一覧、英語のプリント。そういえば明日までの宿題が配られたんだっけ。
まあでも関係ないか。
いまから転生するんだし。
ライターに火をつけると、暗かった部屋が仄かに明るくなって、床に描かれた魔法陣が薄ら見えるようになった。
「……よし」
意を決して魔法陣の一端に火をくべる。
瞬間、部屋の中央に火焔が起こった。
思わず後ずさるが、燃え盛る炎はその勢いを増し続ける。
熱い。ヒリつく。眩しい。怖い。
視界の端で英語のプリントが焦げている。
凡庸でつまらない高校生の部屋は、非日常へと変わった。
…怖気付いてなんかいられない。
もう、火は点いてる。
「………いくぞ」
こわばった体を無理やり動かし、業火の中に飛び込んだ。
…
「………か!……ですか!…は…で……ですか!」
ん…?ここは…?
異世界…!?
やった!!転生は成功だ!!
「その服は何でできているんですか!」
…え?そこ?