相合傘
これは第6話です。
相変わらず、回避策とやらが一向に見つからない。
こんな展開になったことのある人に相談したい。
あらかじめ、筒魁さんに事の事情を説明して…。
いやいやダメだ。そのあとどうする。
こんな感じで考えているうちにどんどん時間が過ぎていく。
時は4月下旬。
約束の1ヶ月まで、あと1週間とちょっとしかない。
春もそろそろ終わりで、雨がだんだんと多くなってきた。今日もいきなり雨が降ってきて、体育が中止になってしまった。
こんな日の放課後、俺は学校に置きっぱにしてた傘を取り、昇降口にむかった。下駄箱から靴をとり、上履きへと履き替える。
すると、前に誰か立っていた。
外は大雨。完全に傘忘れたやつだなこれ。
近ずいて見ると、あれ?
「佐久間くん!」
やっぱり、筒魁さんだ。
傘を忘れたのだろうけれど一応聞いてみた。
「何してんの?」
「傘忘れちゃって…」
な、なんだこのありたげの展開は!
傘忘れたから貸してくださいって?
いやーまいったなぁ~、貸してあげないこともないけどぉ~。
中学生男子ならみんなやりたがる相合傘へ、さりげなく誘導しよう!
ん?俺が本当に筒魁さんのことが好きなのかって?
な、んなわけねぇーだろ。
と、とにかく! さりげなく誘導をかけていく。
「かばんの中とかもう一回見たら?」
「何度も探したけどやっぱり忘れちゃったみたい…」
よし! ナイス! 完璧だ!
このままいっきに相合傘へ連れ込むぞ!
と思ったその時…
「…あぁっ!!」
びっくりしたぁー! なんだよいきなり!
何かに気が付いたようだった。
「そういえば私、置き傘してたんだ! ごめんね気を遣わしちゃって」
…え? ちょ、ん? あ、相合傘…は?
「じゃあね佐久間くん!」
「あ、ああ、じゃあね…」
べ、べつに、残念がってないし!
さすがに思い通りにいかないな。
今度はもう少し計画を練ってから挑もう。
筒魁さんとのよくわからない関係は、まだまだ続きそうだ。
(相合傘したかったなぁ~)