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わたしをとめるもの

作者: 彷徨える旅人


「外」に出てみれば、


妙なる重奏の調べが聴こえてくる。



 


(そと)


 夕暮れ時、わたしは散歩に出掛けました。


 今日はとても寒い日でした。


 まだ青い葉をつけた街路樹が

 凍える風に共鳴して

 身を震わせています。


 ほんとの秋がやってきたようです。




(あかり)


 わたしに気をつかっているのか、

 月は姿もみせません。


 紅い顔した街灯が、

 まわりに集まり

 押しくらまんじゅうする羽虫を見つめながら、

 時折り、まばたきをしています。



 遠くで救急車が

 金切り声をあげているのが聞こえてきます。




(におい)


 どこからか、

 肉饅の人懐っこい笑い声がしてきます。

 どうやらふたごになったようです。


 雪色のコートを着込んだ、

 長い黒髪の人がむこうからやってきます。

 目はお互い伏せて、でも、

 ジャスミンの花が咲きました。


 往来はなかなか賑やかです。




()


 どら声が耳元を行ったり来たり、

 みんな着込んでいるので、

 餌にあり付けない蚊がいます。

 文句はわたしに言われても。


 救急車が、一段と大きな声を張り上げます。

 いつの間にやら、

 病院の近くに来ていたようです。

 魅力的な赤黒いサイレンは

 わたしのそばを通り過ぎました。


 今日はとても穏やかな日です。




(うち)


 夜更け前、わたしは家に帰ってきました。


 あいかわらず、殺風景な部屋のままです。


 外套を掛け、布団に寝転び、


 はあ、まだ、わたしは生きています。






「内」に戻ってみれば、


変わらぬ、けれども、

美しい旋律が聴こえてくる。







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― 新着の感想 ―
[一言] アウトドア派の凹むぐらいなら自分の家の内装にも気をつかえよっ って話じゃなくて、そんな深い意味が! 面白い情景描写だな~って楽しんでたら本質を読み取れなかったようです。解説有難う御座いまし…
[良い点] 外は素晴らしい景色で満ち溢れているという事を思い起こされた良い気分になりました。 [一言] 内(家)「いつも わたし を泊めてあげているのは(私)なのにひどいわっ」
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