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ほら風船旅行

作者: ココチュ

私は嘘は嫌いです。しかし盛大な嘘は「ほら」となり、皆さんを楽しませる一助になりうると信じます。重ねて言いますが私は嘘は嫌いです

 その日も腰痛が酷かった。腰に風船を着けたら身体が軽くなって腰痛の緩和になるだろうと沢山着けた。

 そうしたら事も有ろうにフワリフワリと空を飛んだ。あっという間に浮き上がり、助けを呼ぶにももう声は届かない。仕方なく風船旅行を始める事にした。

 天空を瞬く鳥達は驚いたが仕方ない。しかし私に声をかけてくる者もいた。

 「やあ。君は風船で空の旅かね、大いに結構じゃないか」見れば男爵翁様が鴨の群を紐で縛って飛んでいる「いえ、楽しんでる訳ではないのですよ」「それは勿体ない。せっかくだから楽しみたまえハッハッハ」鴨の羽ばたきは速く、男爵翁様もあっという間に空の彼方に消えてしまった。確かに男爵翁様の言う通りだ。成り行きで始めた風船旅行。楽しんでやろうじゃないか。

 見れば風下に小さな飛行船が居る。乗組員達は双眼鏡で何かを必死に探しているようだ。

 「やあこんにちは。何かお探しですか?」私は尋ねてみた。「はい。楽しさにかまけて亡くした『我』を探しているのですよ」なかなかおつな返事じゃないか。

「空の旅は楽しいですからね。ちゃんと見つかると良いですね」

ありがとうと言いながら飛行船と風船は離れて行った

 楽しみ過ぎて我を忘れた。なるほど有りそうな話じゃないか。しかし空に『我』は有るのだろうかと少しだけ考えた。例えばお金を落としたらチャリンと音が鳴るからすぐに気付くだろう。鳥の羽根を落としたら音は鳴らないから気付かないかも知れないが、下を見れば見つかる可能性は有るのだろう。鳥の羽根は目立つからね。

 『我』を亡くしたらどうなのだろう?目には見えない。風船みたいに空に亡くなるのか、鳥の羽根みたいに下に落ちるのかも分からない。

 きっと『我』を亡くしたら探すのは大変なのかも知れない。誰かが懸命に探すなら、私はそれをバカに出来ないじゃないか。

 どうか亡くした『我』が見付かりますようにと遠くなる飛行船に祈っていたら、今度はヘリコプターが近付いてきた。

 「こんにちは、こちらは空中パトロールです」ヘリコプターの搭乗員が声をかけてくる。風船はホバリングに煽られ遠ざかる「こちらこそこんにちは。風が強いですね」と困り果てながら、そして大声で返した。

 「この先にイタズラカラスが居ますので風船旅行の方はお気をつけください」

 気を付けるも何も、風船は流れに任せて進むだけ。気を付けようも無いじゃないか。でも言ってみたって始まらない。仕方なく声をかけてみた。

 「ありがとうございます。気を付けますよ。ところで最近は空も賑やかなんですか?」

 「そうですね。あなたみたいな風船旅行はなかなか居ませんが、最近は空のパトロールも忙しいものですよ」ヘリコプターの空中パトロールはそう笑いながら他の空の旅行者を探しに行ってしまった。やれやれ、人はいずれ宇宙の果てまで出掛けて行くに違いない。いつか空にも街が出来て渋滞とかも発生するのだろうか?

 そうこうするうち空中パトロールが言っていたイタズラカラスが風船を一つ二つとつつき、だんだん浮力を無くして私は地面にずっこけるように降り立った。

 大木に顔面をしたたかに撃ちつけ、悶絶している所を村の娘さんがタオルを持って現れた。

 「空を風船で旅行したヒーローさん、お疲れ様でした」 

 「いや、ヒーローを気取るつもりは無いですよ」タオルを顔に当てるとヒンヤリと冷たく気持ち良かった。さて、帰り道はどうしよう。顔の痛みで腰の痛みは気にならなくなったけど、悩みが増えたような気がする

皆さん楽しんでいただけましたでしょうか?

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