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ハナ、hana、花 ~あいだのおはなし~

 私は花。まぁまぁの会社に勤めている十六歳よ。今日は会社が休みだし、家事も一通り終わったから、お散歩にでも行こうかしら。そう思って、ちびを見送ってから私も家を出ようと考えた。

「行ってきまぁす! ちゃんと帰ってくるからねー」

「なんかフラグっぽいものを立てた気がする……」

 そんなちょっと不安になる挨拶を残しながら、ちびは出ていった。

「よし、私も出ようっと」

 さっきのことを頭から消しつつ、私はカチャリと鍵を閉めて家を出る。このままどこかへ行こうか――

「さむっ」

 ――もうちょっと厚着にしておこう。






・・・ ・・ ・






「改めてみても、やっぱ田舎だなぁ」

 ぶらぶら歩きながら、私は呟いた。

 私たちが住んでいるここは、ティーアランドでも海に近く、交通にはあまり困らない。でも、どういうわけか、ここの地域にはそこそこの動物しか集まらないのだ。まぁ、いるだけでいいんだけど。

「あ、そういえば、小説の新刊が出てたんだっけ。買いに行かなきゃね、丁度近くだし」

そんなことを思い出したので、書店に向かう。

「今日は本のセールの日だったかな」

 また呟きながら歩いていると、もう着いてしまった。

「いらっしゃいませぇー」

 愛想のよい挨拶を聞きながら、中に入る。

「あ、あったあった」

 私の好きな小説を見つけたので、手を伸ばす。そして手をかけようとした、その時。

 ――誰かと手が重なった。

「「え!?」」

 思わず声を出し、横を見ると……。

「……く、草?」

「……は、花?」

 小学校時代の同級生に会うという、ここは目がきらっきらして、「うふふ」「あはは」言っている、みたいな超王道なラブコメかと言いたくなることが起こっていたのだった。





・・・ ・・ ・





「いやぁ、驚いた、まさかこんなことで再会するなんて。まるで少女漫画みたいだな」

「だね。ま、恋に発展はないね」

「親友だろう、進展しても」

「うんうん」

 道中草。目が黄緑色で、毛色は黒のネコ。誰からも好かれていた小学校時代の私の友達。驚きすぎて、思わず小説を買った後カフェに二人で来てしまった。

「この近くに住んでたんだね、草。全然知らなかったよ」

「そっちこそ。あ、ちびは元気?」

 頼んだスムージーを飲みながら尋ねる草。

「うん。今ちび小三なの、早いわよねぇ」

「おばさんみたいなこと言うなよ」

 彼が、ぷっと吹き出しながら言った。

「まぁ、会社勤めだし、半分おばさんになりかけてるかも」

「今お前、会社勤めの全ての動物を敵に回す発言したぞ」

「く、くぅ……っ! ご、ごめん、なさい……!!」

「いや俺に謝られても。あとそのテンション何なんだよ」

「こ、ここで答えろと言うの?」

「まぁいいけどさ。てか、お前高校行かなかったんだな」

「まぁね、ちびの学費とか色々あるから」

「……お前も大変だなぁ」

 なんかしんみりさせてしまった。ちょっと責任を感じて、ミルクティーを一口飲んだ後におどけてみる。

「ふふっ。じゃあ、草がバイトしたお金を一銭残らずください!」

「花って時々変なボケするよな」

「うるさい。……あ、やば、今日ちび午前中で終わりだったわ。ご飯作らなきゃいけない時間がそろそろだから、帰らなきゃ」

 いつの間にか、そんな時間になっていたことに気づく。

「そういや、そんな時間だったね」

「じゃ、私が払うよ」

「いや、俺が払う」

「どうぞどうぞ」

「お前そんなキャラだったか!?」

「んー、頑張ってみたよ」

「会話が最早、成り立っているようで成り立ってねぇ!」

「じゃあね」

「あっさり帰りやがった!」

 私はご飯の準備があるのだ、無駄に話している時間なんかないのだ。





・・・ ・・ ・






「ふーん、ふふん、ふふん、ふふー、ふふん、ふふーん♪」

 私はデザートのオレンジを切りながら鼻歌を歌っていた。

「たっだいまー!」

「あ、おかえり」

 ちびが帰ってきたみたいだ。

「ねぇ、ちび?」

「なに、おねーちゃん?」

「草お兄ちゃんって覚えてる?」

「覚えてるよ! そうそう、おねーちゃんに卵焼き作るって練習してたら、最初に作ったのが殻ごと焼いた『卵焼き』だったんだよ!」

「あんたは覚え過ぎよ。ってか、私も知らなかったし。……着替えてきなさい、今日はシチューよ」

「はぁいっ!」






    END



次回も、お楽しみに!

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