『道中出来事3』
ハクロを従魔にして数時間。日が暮れてきたのでいったん野宿することになった。
前に王都へ行ったときは、めちゃくちゃ早く行きたいから貴族専用の特急馬車だったが、今はただの馬車である。
アンネルさんはハクロがわなに使っていた糸をもらえてすごく涙を流していた。なんでもアラクネの糸はかなり高く売れるらしく、しかもハクロはその中でも超レアモンスターにあたるのでその価値はとんでもないそうだ。別に俺にとっては、服がただで手に入る程度しか思えない。
「いや、だからさアラクネの糸ってのはかなりの強度と質があるから高いんだよ。それを目当てにアラクネの住処へ行くものなんかいるが、アラクネはかなり強いモンスターだから滅多に手に入れられないんだ。しかもそいつはアラクネの中でもかなり上の種族だろ。より高く取引できるんだよ。それなのに欲がないなぁ」
「そんなこと言われても、一応金は困ってないんだよな。昔からモンスター狩りまくっていたからなぁ」
「いつからやってんだよ・・・。ま、そいつを従魔にできたならそれだけの実力はあるのか」
ちなみに、今ハクロとスラ太郎は互いに何か会話していた。
「プルプルン」
「へーっ、スラ太郎さんはゼロ様が3歳の時くらいから一緒にいるんですか」
「プルルルン」
「ふむふむ、自分より年齢が上でも序列は変わらない。先輩後輩とあると」
「プルプルンプル」
「でも、平等に扱ってくれる人だと」
「プルン!」
「だから先輩とかさん付けしなくてもいいんですね。わかりました!」
どうやって会話が成立しているんだろうか?スラ太郎とは長いから仕草でまだわかるけど、その鳴き声だけでよくわかるな。
ふと見るとアンネルさんも同じことを思ったんだろうか。俺たちは互いに苦笑した。
その会話が成り立つ理由を聞いてみようとしたとき、ハクロが突然何か警戒するような顔をした。
「ゼロ様、何か近づいてきています。この気配はおそらくモンスターの群れです」
「なに、モンスターの群れだと。ハクロはそれがわかるのか?」
「はい、蜘蛛は巣を作って獲物を待つ習性があります。私たちアラクネは同じことをしていますが、私は今糸ではなく魔力を薄く細くしたものを辺りにひいていました。そのうちの幾つかに反応があるんです」
意外にも(意外じゃないかな?)ハクロはかなり有能そうな奴だった。
ハクロは有能かもしれないけど、少し抜けた所がある