『クラィング山を目指しての旅路1』
旅ってなんか憧れないかな?
「そーれっ‼︎」
スパン!
ハクロが糸を引き、その糸で綺麗にゴブリン達が切れていった。
「おーっ、あっという間だったな」
「数が少ないから早かったんですけどね」
今、俺たちはクラィング山を目指して旅をしていた。王都から旅立ち数日が経っているが、未だにクラィング山は見えなかった。
「結構距離があるなぁ。結構歩いたと思うんだけどなぁ」
「そりゃ、まだまだ距離があるじゃろ。王都と帝国との大体中間にあるからの。そんな早く着かないじゃろう」
「そういうもんかね」
「そういうもんじゃろ」
一応、アルテミスをドラゴン化させ、乗っていく手段はあるが、それだと周りが怯えかねないため徒歩で向かっていた。
昼間からずっと歩き続け、日が沈んでくると野宿の準備のために寝床を早く決め、そこで寝る。また朝早く起きての繰り返しだった。
「ま、なんかこっちの方が冒険者って感じでなんかいいんだけどね」
「たまにゴブリンとかが襲ってきますけど、返り討ちにしてますもんね」
たわいもない雑談をしながら進んでいると、少し先にオークの群れと交戦している人達の姿を見かけた。
「後方に馬車が見えるからどこかの護衛達かな?」
「あ、ゼロ様、あの中のモンスターに見覚えがありませんか?」
ハクロが指をさした先には、確かに見覚えのあるモンスター達の姿があった。というか、インパクトが強すぎて覚えていた奴らだった。
「たしか、アルノマ、タイタン、クサビ、コンキンだったよな。あのゴーレムとだるまにはかなりの印象があったもんな」
「あ、あれBランク冒険者魔物使いのジョイントさんですよ。あのいかつい顔は間違いありません」
思わぬところでの再会であった。
「うーん、今のところ助太刀する必要がなさそうだな。あのマッチョだるまがオークをちぎっては投げまくっているしな」
「言葉通り本当にオークの両腕をつかんでちぎっては投げていますもんね」
「我としては少し甘いと思うな。せめて体を握り潰すとかして欲しいのぉ」
「ミンナマエヨリツヨーイ!」
以前、対戦した時よりも確かに強くなっているように見えた。マッチョだるまのコンキンはより筋肉質に、メタルゴーレムから進化したらしいタイタンはより大きく、ブラックウルフのアルノマは牙がより鋭く、インテリジェンスウェポンのクサビはより切れ味がよくなっているようだった。
「ま、せっかく再会したんだし手伝いますか」
「そうですね、私たちも加わりますか」
ここで会うのも何かの縁。せっかくなのでオークとの戦いに加わることにしたのであった。
まさかの再会である。実をいうと、あのモンスター達がなんかもったいなかったから再登場させたかったんだよね。