『後始末は大変なんだよな』
後始末はどこの世界でも大変なんですよ。
ハグエェだった怪物が消え、俺たちはとりあえず国王様を守るために走ってきた騎士たちに事情を説明した。
というかあんたら来るの遅すぎるんだが・・・。一応この人さ、この国の国王様だよね?この国にとって重要な人だよね?
騎士たちから遅かったわけを聞くと、あのゴーレムが出た瞬間、この国王様が好奇心でアッという間にその場から駆け出したという。その速さは実は国王様の履いている魔道具の靴の効果らしく、本来は危険な場所から逃げるために作られたものらしい。
危険な場所から逃げるためなのに、むしろ自分から進んでいくなんて間違った使い方してないかそれ?
「とりあえずなんだが、今回のことに関しての功績は後日改めてまた表彰したいんだがどうだぞい?」
「あの、できればお断りしたいんですけど」
またあの貴族たちからのアピールを食らうに決まっているからな。もうさすがに嫌になっているんだが。
「それならば仕方がないぞい。ならばそうじゃな、国王命令ぞい!ゼロ殿は明日、王宮にきてまた表彰を受けろぞい!!」
「どっちにしろ決定事項なのかよ!!聞いた意味ないじゃん!」
「あっはっはっはっはっは!!どちらにせよ、今回はゼロ殿が目立ってしまったからな。気が付いていないようだからあっちを見てみるぞい」
「え?」
国王が指さした方向を見ると、そこのはいつの間にか大勢のやじ馬たちが集まっていた。
「おい、あの魔物使いがあの怪物を倒しちまったぜ」
「たしかあいつランクDの冒険者だよな・・・、どう考えてもランクに合わなさすぎるほどの実力なんだが」
「あの従魔たちも相当すごかったよな。あの美女がドラゴンになっていたぜ」
「あのアラクネも素敵だったな・・・」
「おい!われらがハクロちゃんに変な目線を向けるんっじゃねえ!!」
「なんだと!おまえらだってアルテミスの姉御に変な目を向けるな!!」
「なんだとこのやろう!!」
「やんのかごらぁ!!」
・・・なんか変なのが混じっていないか!?いや、そうじゃなくていつの間にこんなに人が集まっているんだよ!!
「どうやら最初に出たゴーレムが倒されたときに近づいてきたらしい。そこからあの化け物が現れてずっと腰を抜かしていたようだぞい」
つまり、途中からから一部始終を見て・・・・え?
「それってつまり、俺が魔法を使って凍らせたところも」
「ばっちり見られたようだぞい。そもそもあの怪物にあれだけ派手に魔法使ってたからの、むしろ見ていなかった人がいないんじゃないぞい?」
奥の方を見ると、どうやらギルドの人たちもいるようで、魔法使いの職である人たち全員が驚愕の表情を浮かべていた。
「な、なんだよあの威力・・・あれでDランク冒険者の、しかも魔法使いでない魔物使いが使う魔法かよ」
「明らかに俺達よりも強力な魔法だったよな。なんで魔物使いの方をやっているんだよ・・・」
「才能のすごい無駄遣いじゃん・・・。驚きを通り越してむしろ呆れたよ」
「あの従魔たちだけでもかなりすごいのに、魔物使い本人もあそこまでの魔法を使うなんてどうなっていやがるんだよ」
「ランクDなんてもう通り越してランクAですらも超えているんじゃないか・・・?」
あ、やべっ。完全にこれはまずいことになりそうな予感が。
「あそこまで騒ぎになっているのに、そのままにしておくのはいかんぞい。あのまま騒ぎを大きくしてしまえば、元凶が紛れて逃亡してしまうぞい。そのため、一時的に注目をゼロ殿に集めてもらって、今回の元凶をゆっくりと我々が探し捕まえる。それが1番いい方法だと思わんかぞい?」
この国王の考えていることはもっともだ。このままほったらかしにしておくのはまずい。
「はあ、わかりましたよ。受ければいいんでしょ」
「もちろん貴族たちに、表彰式でゼロ殿には接触禁止と言っておくぞい。今回のことでゼロ殿の力が目に見えて分かったのであろうからな。自分のところに何とかしてつけようとでも思うだろうからなぞい」
「あ、そうしておいてください」
とりあえず、疲れたから早く宿にいって寝たいんだよね。
そういえば、今回はハグエェはのこっていないな。前の時は何とかあのバカ坊っちゃんは残っていたんだが、何か違うのか?
「考えても仕方がないか。お前ら、今日はもう帰るぞ」
「了解!」
「また退屈な表彰式かの・・」
「ゴハンハヤクタベターイ!」
とりあえず、質問に会いながら野次馬の間をなんとか抜け、宿につき、そのまま寝たのであった。
ゼロたちが戦い終わったその時、はるか上空からその光景を見ていたものがった。
「ふふふ、やはりすごい実力をあの魔物使いは持っていますね。あなたの報告通りですね」
「私の情報に間違いはないですよ、我が主よ」
1体のモンスターと、一人の女性は互いに話し合いながら一部始終をずっと見ていたのだ。
「そうですね、あれだけの実力を持っているのにこんなところに置いておくのは惜しいですね」
「スラム街に放っておいた密偵たちがいつの間にか捉えられていましたが、その分犠牲にしても、今回のことは十分おつりがくると思われますが」
「ええ、十分すぎるわね。何とかして彼を我がウィーキッドネス帝国のものにしたいですね。いや、むしろ私のもとにおき、あの足クサ皇帝を倒してもらって私が帝国の女王になりたいわね」
「さすがにあの足クサ皇帝陛下はきついですもんね。何とか根本から改革するためには消えてもらうのがいいんですけど、私たちにはまだ力がありませんもんね」
「だから彼をどうにか帝国に連れてくることができないかしら?」
「うーむ、何とかなるでしょう。それまで待っていてください、我が帝国第1王女殿下様よ」
「ええ、待っているわね」
そうしてその女性は自身の国へ飛んで行った。
「しかし、どうしましょうかねぇ・・・ギルドの依頼でも出しますかね?」
残されたモンスターは頭をひねらせながら、なんとかゼロを帝国に連れてこれないものかと考えていたのであった・・・。
表彰式か・・・今度はどんな格好をさせようかな?




