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『異形の怪物再び』

なんかよく騒動に巻き込まれる人っているよね

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」


 ハグエェが黒魔石とかいう魔道具で怪物になり、その姿はあのバカ坊っちゃんが怪物になったときの姿に似ていた。


 違う点と言えば、大きさが壊したゴーレムより少し小さいが、それでも巨大である点である。表面はバカ坊っちゃんの時と同じように、黒く、どろどろした感じになっていた。


「ゼロ様、あの時と同じです。かなりやばいような感じがします」

「とりあえず、鑑定してみるか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:鑑定不可能

種族:鑑定不可能、未確認モンスターの恐れあり

MP:不明

ATK:500000

DF:290

スキル:「鋼の体」「溶解の鎧」「溶解の触手」「溶解の霧」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なんか確実に性能が段違いに上がっているんだけど・・・」


 違うとすれば、毒から溶解と変更されている点だろう。「鋼の体」はゴーレムを取り込んだことから考えれば納得できるものだった。


「『溶解』ってことは、溶かすのかな?それだとあまりバカ坊ちゃんの時とは変わらないような気がするが」


 あの時は、猛毒で溶かすみたいな感じだったから、溶かすだけになっている点はむしろ弱体化なのかな?と考えていたが甘かった。


「っ!?」 


 いきなり、体の力が抜けた。一瞬だったが、結構やばかった。


「ゼロ様大丈夫ですか!?」

「あ、ああ。なんかいきなり体の力が抜けたんだが」

「まずいのぉ。主殿、おそらくなのじゃが、今魔力を吸われたのじゃろう。」

「え?」

「アレの周りを見てみい」


 いつの間にかドラゴンの姿から人化していたアルテミスがそばに立っていた。言われて元ハグエェだった怪物の足元を見ると、その足元の色が変色していた。


「あやつ、根こそぎ魔力を吸収しておる。この大地からも、今周りにいる者たちからもじゃ。」

「な!それってかなりまずい事態なんじゃ・・・」


 このままにしていくと、王都中が魔力を吸われてしまう恐れが高い。いや、それどころか世界中が危ない。


「何とかするのが一番良いぞい」

「いやその何とかと言われても・・・え?」

「何かあるのかぞい?」

「「「なんで国王様がここにいるんだよっ!?」」」


 いつの間にか国王が後ろにいた。てかあんた、仮にも国王なんだからさっさと逃げればよかったじゃん。


「いや、ハグエェが暴走したと聞いてな、地下にある隠し通路から来たんだぞい」

「それって重要機密とかなんじゃ・・・」

「ちょっと主殿!!そのおっさんと話していないで今はあれに集中しないとまずいぞ!!」


 アルテミスが慌てたように言うので見ると、ハグエェだった怪物が、こちらに顔(のような部分)を向けていた。


「グギャゴギギ、ゼ、ゼロ、タス、ケ、ギャギギギグナンダ、ナギャギギッギギギギギ!!」

「まさか、意識がまだあるのか!?」


 あのバカの時にはなかったのだが、どうやら今回はぎりぎりあるようである。


「ゼロ様!怪物がゆっくりと動き始めました!!」


 見ると、先ほどまでほとんど動いていなかった怪物が前進し始めていた。


「あしもとの魔力を吸いつくしたのじゃろ。魔力を求めて動き出しおった」

「まずい、このままでは民に被害が出てしまう!!ゼロ殿何とかしてくれい!!」


 国王よ、何も泣きつかなくても。でも確かにこのままじゃまずい。前は全身が毒みたいだったから、スラ太郎の回復魔法で消し去れたけど、今回は状況が違う、対象がでかすぎるし、うかつに近づいたら魔力を吸われてしまう。


「いったいどうすればいいんだ?あんなドロドロじゃうかつに触れないし、そもそもどう対処すれば・・」

「そうです!いい案が思いつきました!」

「何!?どんな案なんだ?」

「あんなにドロドロしているなら、氷魔法で固めて、砕いて小さくして、それから燃やしていくんです!そうすれば少しずつですが消し去ることができます!!」


 おお、ハクロにしては珍しく名案・・・いやちょっと待てよ。


「あいつが魔力を吸収しているなら魔法も効果ないんじゃ?」

「その通りかもしれん。じゃが、あやつの吸収量を超えた魔法ならもしくは・・・」

「じゃあ、ゼロ様!お願いいたします!!ゼロ様の魔法ならきっとできますよ!」

「いや、でも、俺の氷魔法はちょーーーーっとつかえないんで」

「え?使えないんですか?」

「使えることは使えるんだけど、威力が調整できないんだよね」

「国王として許可するから使ってくれぞい!!もう町にあいつが出てしまうぞい!!」

「あーーーもうっ、どうなっても責任取らんからな!!」


 俺の氷魔法は、昔たまたま見つけた魔導書で覚えたものだが、試しに山で撃ったところとんでもないことになった。なので、できるだけ使いたくなかったんだがもうどうしようもない。


「『エターナル・ブリザード』!!」


魔法名を叫ぶと同時に、その怪物の頭上に魔法陣が現れ、そこからものすごい勢いで冷気が噴き出してきた。いや、頭上からだけではない。怪物の周りをすべてを埋め尽くすように魔法陣が現れ、同じように猛烈な冷気を浴びせていた。

 その冷気の一部が隙間から漏れ出し、瞬く間にあたり一面を凍り付かせた。


 そして、その冷気がやんだ時にはあたり一面は氷の世界となり、怪物まで氷漬けになっていた。


「さ、寒いですゼロ様」

「こ、これほどまでの威力とは。あの怪物が凍り付いたはいいが、こっちまで寒さでやられそうぞい」

「主殿、ここまで寒くなるとは予想外でした」

「「サムイヨ~」」


 全員寒さで震えていた。この氷魔法を使いたくなかった理由はこれなのだ。威力が高すぎて、試し打ちした山を永遠の氷で閉ざされる場所にしてしまったのだ。今回はぎりぎり威力を抑えられたが、それでも一気に回りが冬景色になってしまった。


「だからこの魔法使いたくなかったんだよね・・・。寒いの苦手だもん」


 ハグエェだった怪物は完全に凍り付いていた。


「こ、これなら砕いて小さくできます」

「よし、アルテミス!ドラゴンの姿にまた戻って一気にあの氷像と化した怪物を砕け!!」

「わかったのじゃ!!」


 再びドラゴンの姿に戻ったアルテミスは、その拳で一気に怪物を砕いたのだった。


ガッシャ―――――――――――――ン!!

 

 きれいに怪物は砕け散り、その破片はそのままかと思われたが、砕けた瞬間に次々霧のように消えていった・・・。


「燃やす手間が省けちゃいましたね・・・」

「そういえばあの時の怪物もスラ太郎の回復魔法で浄化されただけかと思ったけど、あれはその部分から死んだから消えたんだな」

「消えていくということは、やはりモンスターとも違うようだしの」


 モンスターなら、その死骸はアンデッド系とかでないかぎりはそのまま残る。あのドロドロした感じはアンデット系とも言えなくもないがそれでもやはり違う気がする。


 空に消えていった怪物を見ながら、その謎を考えたのであった・・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 王都近くにある森にて、三人の人影があった。


「やはりあっけなく終わったな」

「んー、『黒魔石』はまだ暴走の危険があってさらなる改良の余地ありと」

「しかし、あの男も哀れですね。実験台代わりにされたようなものですもの。それでもゴーレムと一体化するところは驚きましたね」

「ま、今日のところは引き揚げましょう。そろそろ国が恋しくなりましたからね」

「はぁ、自分から勝手に国を出て、本当にあなた様は本当に自分勝手な性格ですよね」

「自覚してるよ。別にいいじゃない、人間だもの」

「「人間じゃないでしょうが!!」」

「あははは、そうだったよね。僕らは人間じゃないからおかしいか。『元』とつければよかったかな?}

「そういう問題じゃない気がするんですけど・・・」

「あきらめろ、この人はこういう人なんだよ」

「そうでしたね・・・」


 二人はがっくりと肩を落とし、もう一人は王都をじっと見つめた。


「それにしても、やはりあの魔物使いは『あのお方』の可能性があるよね」

「伝承によればそろそろこの御世にあらわれるということでしたが、その可能性はあるでしょう」

「どうします?接触してみますか?」

「いや、やめておくよ。いま合うと僕らの好感度が駄々下がりになってしなうだろうしね」

「「それはあなた様が確実に原因ですよね」」

「・・・とりあえず、さっさとこの場を去りましょう。いずれ彼に接触できる機会に巡り合えるでしょう」


 その場から、三人の影が消え、あたりには静けさだけが残ったのであった・・・。

そういえばハグエェどうなったんだろう?

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