『再び』
王宮にて発言していた謎の声より
『俺さ、すでに忘れられていない?』
王宮にたどり着いた俺たちは、そのゴーレムの大きさに驚いていた。
「でかいな・・・」
「我の本来の姿ぐらいでかいな・・・」
アルテミスがドラゴンの姿になったのと大体同じくらいだろうか。
「よく来たんだな、ゼロとそのゆかいな従魔たちよ」
「誰だ!!」
上を見上げると、そこにはゴーレムの方に乗った男がいた。
「僕のことが分からないかい?君が卒業試験を受けたときに姿は見ているはずだよ?」
いやほんと誰ですか?あんな人いたっけ。
「忘れているなら思い出させるんだな。いけ!『アダン MK-2』!!やつらに攻撃するんだな!!」
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
唸り声をあげ、そのゴーレムは右手をこちらに振りかぶってきた。
「やばい!!みんなよけろ!!」
慌てて回避すると、その横すぐそばをその拳が通り過ぎて、そのまま王宮の一部を吹っ飛ばしてしまった。
さらに、そのままでは飽き足らず、その拳から出た余波がその方向にあった街を吹き飛ばしていった。
「め、滅茶苦茶な威力じゃん・・・。余波で街ごとなんてひどすぎるだろ」
「さあ、これで僕が誰かと分かっただろう?」
「いや、そこは全然なんだけど・・・」
「あ!!あの全く手も足も出ずに撃沈したあのゴーレムの製作者のハグエェですよ!!あのしゃべり方と今のゴーレムの名前が同じですよ!!」
ハクロはどうやら思い出したようだ。ハグエェ・・・あ、確かにあの独特のしゃべり方はそうだ。
「やっと思い出したんだな。あれから僕はより強い最強のゴーレムを作りたくなり、そのためには君たちに圧勝しなければならないと思ってこの『アダン MK-2』を作り上げたんだな。この『黒魔石』を使って!」
「『黒魔石』?」
「そうなんだな。こいつは改良型で、狙った相手から魔力を奪えるようにしたやつなんだな。このアダンのエネルギー問題はこいつで解決したんだな」
「まさか!!最近の魔力が抜かれている事件の犯人はお前か!?」
「その通りなんだな!!と、言いたいけど少し違うんだな。ま、気にしなくていいんだな。とりあえず今は僕の子供ともいえる最高傑作の『アダン MK-2』にやられるんだな!!」
ハグエェが叫ぶと同時に、ゴーレムが殴り掛かってきた。さすがにさっきの威力を見る限り、また余波で街が破壊されかねないと感じ、今度はよけないでいた。
「アルテミス!!ドラゴンの姿に戻ってこいつの拳を受け止めろ!!」
「了解なのじゃ主殿!!『人化』解除!!」
アルテミスが元のドラゴンの姿に戻り、その拳を受け止め、
「ぬわぁぁぁぁぁ!!」
受け止めきれなかった。
ゴーレム自体の重量に負けたのだろう。そのまま拳を受け止めきれず、アルテミスは宙を舞った。
落下しかけていたが、何とか空中で飛んでとどまった。
「よくもやってくれたな!お返しじゃ!『ファイヤーブレス』!!」
手加減なしでアルテミスはゴーレムに向かって炎の息吹をはいた。温度がとてつもなく高く、青白い炎にゴーレムは包まれ、あっという間に溶けたのであった。
ちなみに王宮には当たらないようにしてくれと素早く言っておいたので、王宮は無事だった。
「そ、そんな馬鹿な!!僕の最高傑作が・・・」
よっぽど自身があったのだろう。ゴーレムが溶かされてしまったことにショックを受けたようであった。
「こうなったらこの『黒魔石』で魔力を集め・・・なんだな?この黒い霧は?」
黒魔石から黒い霧が出て、あっという間にハグエェが飲み込まれた。
「ぎ、ぎゃあああああっ!!痛い痛い痛い!!溶ける!この僕の体がどろどろになってゆくんだな!!助けてくれ助けてくれタスケテ・・・・」
黒い霧に包まれ、ハグエェの断末魔が聞こえた後、急激に黒い霧が膨らみ、はじけ飛んだ。
そして、そこから出てきたのはハグエェの面影もない、巨大なゴーレムの化け物だった・・・。
ある研究日誌2
「黒魔石魔力吸収用改良型」
前作のものから改良を重ね、魔力を狙った相手から吸収できるようになった。ただ、暴走のリスクは減ったものの、いまだに不安定なままである。
ハグエェと名乗る人物を利用し、改良を進めたが、そのあたりがいまだに不安だ。
実験台にでもして利用しよう。