『王宮での混乱』
またシリアスな展開になってきたな。一応ここで言いますけど戦闘の表現とかはまだ未熟なので許してください。今回は戦闘ないけどね。
ゼロ達が王宮へ向かって走る前から時間は少し巻き戻る。
その日、珍しく昼間から会議が行われていた。議題は、最近王都周辺で起きている魔力を抜き取られてしまう事件のことである。
「では、やはり未だに不明と」
「はぁ、なかなか犯人がみつからないとはなぁ」
「どこでどのようにして行われているのかもわからないし、魔力を貯めてるとしてもその魔力のある場所がわからん」
完全に行き詰まっていた。なんせどのようにして、いつ魔力をぬかれてしまうのかもわからない。抜いた魔力をどこにやっているかもわからない。そもそも犯人の意図もわからないのだ。
「人に限らず、モンスターからも抜いているようだが、それにしてはおかしい。魔力をぬかれてしまったモンスターは衰弱するのだから倒すことができやすくなるのにほったらかし。人間も衰弱するのに殺すことなくほったらかし。わけがわからん」
『ならば教えて差し上げましょうか?』
「だ、誰だ⁉︎」
突然聞こえた声に、その場にいたもの達全員に緊張がはしった。
『あなたたちには名乗る価値はありません。ですが、その事件を引き起こしている人物とでもおもってください』
「なっ、お前が犯人か⁉︎」
声はすれども姿は見えず、その声の主に返答するしかない状態だった。
『正確にはもうひとりいますけどね』
「それは僕なんだな」
そのもう1人の声がした方向を見ると、そこには禿げてはいるものの、すっきりとした体型の見慣れない男性がいた。
「誰なんだお前は⁉︎」
「僕のことがわからないのかなんだな?ハグエェ・テルゾなんだな」
「「「「はあぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁっ⁉︎」」」」
その場にいる全員が驚いた。彼は数日前まではでっぷりと肥えた体型だったはずだ。あまりの変わりように以前の彼を知る者達は、一瞬事件だのどうなどなんてことを忘れた。
「この姿になったのはさっきから話している協力者がくれたこの『黒魔石』のおかげなんだな」
「なっ!それは以前あの公爵家が入手して、結局その入手先がわからなかった魔道具ではないか‼︎」
「この『黒魔石』は魔力を吸い取り、所有者に与える効果になるように改良済みになったやつなんだな。以前とは違い、暴走して化け物になるリスクは減ったんだな」
「魔力を吸い取るということは、最近の事件は貴様が元凶か‼︎」
「少し違うんだな。ま、今は僕がやっているから別に変わらないんだな」
「貴様なんのつもりだ!冒険者達やモンスターから魔力を抜くとはいったい何をたくらんでいる!」
その質問が来たとき、ハグエェは笑った。
「あっはっはっはっ。分からないの?僕のゴーレム達のためなんだな。以前負けたあのリベンジマッチのために魔力を大量に集めていたんだな」
「貴様、その魔力をどこにやった‼︎」
「みせてやるんだな」
そういうと、ハグエェは外に向かって叫んだ。
「『アダン MKー2』発進なんだな‼︎」
その途端、王宮の中庭が爆発をおこし、その中からゆっくりと巨大なゴーレムが姿を現した。
「「なっ、なんじゃありゃぁぁぁぁぁぁ‼︎」」
全員が驚きのあまり叫んだ。
アダン MKー2は以前のゴーレムよりもはるかに巨大化しており、全長が60メートル越えをしていた。色は黒く光っており、その重量は確実にとんでもないことになっているのが目に見てとれた。
「これが、黒魔石の力でエネルギーに関して問題の無くなった『アダン MKー2』、その破壊力はそこ知らずなんだな」
「き、貴様、王宮でこのようなものを動かしていいと思っているのか!!」
「別にどうでもいいんだな。ただ、僕はあの魔物使いに圧倒的勝利を飾ってみたいと思ったからなんだな」
そう、ハグエェが抱いた野望。それは、ゼロたちに負けたあの時からずっと抱いていた、「圧倒的勝利を収めてみたい」という者だったのだ。彼はもう、」国だのなんでもどうでもいい。その野望しか見えていなかった。彼は狂ってしまった、いや、それこそが「黒魔石」の副作用だったかもしれない。
「お、来たようなんだな」
ハグエェの視線の先には、走ってきたゼロたちの姿があった。
ある研究日誌1
「黒魔石」
魔力の塊である魔石に、さまざまな加工を施して変化させたもの。まだ、この時点では暴走し、使用者を正体不明の化け物にさせる恐れあり。
先日渡した公爵家の息子が、変化後元の姿になった際に性格が180度変わったようである。このことから負の感情のようなものが黒魔石に影響を与えるらしいと可能性がある。引き続き研究を行う。




